issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 29
懸命にかき集めた黄金のすべてが、指の隙間から砂となってこぼれ落ちていくような――
そんな結末を前に、愕然とするマクロブランクの態度は、刹那の沈黙を挟んで激変した。
「……もういいでちゅ! お前たちのような野生種のことを信じたわちきが、愚かだったでちゅ!」
体に巻き付いた札を心底忌々しげ食い破り、ミーティスの抱擁を強引に押しのけると、体表を怒りの明滅で染めながら地面へと飛び降りる。
「お前たちなんて、もう知らないでちゅ!嫌いでちゅ!」
彼はそのまま、波打つように草原を駆け、どこへともなく姿を消していく。
「待って、マクちゃん!」
はっとして手を伸ばすミーティス。しかし――
「追うな、さな!約束を破ったんだ。どんな事情があっても、私たちにあいつを追う権利はない」
ホットショットは、口惜しさに声を震わせながら、やるせない声音で彼女を制した。
その場に残されたのは、自分たちが今何を“得て”、そして何を“手放して”しまったのかを、痛切に噛みしめる4人の少女だけだった。
「……とにかく、こっちはこっちでやるしかない!」
重苦しい沈黙を、イムノの決意が引き裂いた。彼女はスヌープキャットと共に、何かに憑かれたようにコンソールへと駆け寄る。もはや緻密な作戦を練る時間も、道義という名の贅沢に浸る余裕もない。眼前に迫る破局を前に、彼女たちに残された選択肢は、最も原始的で、最も無謀な「賭け」だけだった。
「シャカゾンビの実験記録!どれかひとつチャンネルをこじ開けて、この空洞ごとワームを埋める!
1番ヤバそうなやつがいいね!マグマでも、超重力でも、とにかくこの状況をひっくり返すような、破滅的なやつを!」
イムノの指先が、タッチパネルの上を火花のように駆け巡る。モニターには、シャカゾンビが遺した無数の実験ログが、呪いのように明滅していた。
地球が生成されなかった世界線の宇宙、腐臭だけが満ちる有機物の惑星、そして――
「……あった、海洋惑星!それだけの水圧なら、あのワームだって窒息するはず――」
「ダメだよ、全然足りない!」
希望を見出したイムノの声を、スヌープキャットが悲鳴に近い鋭さで遮る。
「なにが!?」
「このゲートから出る水じゃ、海より広い空洞を埋めるのは無理だってば!」
焦燥が肌を焼く。
「じゃあ、どうすれば――!?」
イムノが唇を噛む間にも、スヌープキャットの指は祈るように記録をめくり続け、やがて、明らかに
異質な光を放つひとつのログにたどり着いた。
「あッッッ、これっっっっっ!!!これにするしかないかもッッ!」
『
実験記録: レイヤー X-12-α
事象:
稼働中のマルチバーサル・ゲートが、同型ゲートを自己準拠的に召喚する、予期せぬ挙動を観測。召喚されたゲートは、親ゲートを起点に無限級数的な連鎖増殖を開始した。
分析:
当現象の制御は事実上不可能と判断。放置した場合、ゲートの指数関数的増殖が既知宇宙の恒常性さえ崩壊させると
予測される。これは、並行宇宙が内包する無限の可能性の中でも、最も悪性かつ奇形的な発露の一例と結論付ける。
措置:
本事象の発生直後、実験は即時中断。緊急破壊プロトコルを実行し、拡散を未然に阻止した。
想定被害:
もし拡散を許した場合、被害規模は計測不能。
総合評価:
* 危険度: カテゴリーΩ (実験史上最高位)
* 勧告: 今後、当事象および類似現象への関与を絶対的に禁止する。
※追記:
予防的措置として、当該近傍次元への一切の探査を無期限凍結とする。
』
「見るからにヤバいこと書いてる……でも、もう、これに賭けるしかないっ……!暴走した機械が、この空洞の岩盤圧で自壊してくれることを祈ろう!」
彼女は、禁断のレバーに指をかける。その瞬間、4人の視線が、言葉もなく交わされた。
互いの瞳に映るのは、恐怖と、諦めと、そして、世界を救うための最後の覚悟。
押し黙るしかない。他に道など、どこにも残されていなかった。
“ガチン!”
重い金属音と共に、イムノの手が、希望と破滅のレバーを渾身の力で叩きつけた。
――一瞬、世界から音が消えた。
次の瞬間、ゲートは凝縮された宇宙のエネルギーを純白の光として解き放ち、その奔流は少女たちの網膜を焼き切った。
金属の円環構造が瞬時に白熱し、ガラスが割れるような高周波が空間そのものを引き裂き、骨を、魂の芯から震わせる。
現れたのは、異次元の窓などという生易しいものではない。それは、大宇宙の設計図に潜んでいた、たった1行の論理的欠陥。みずからを無限に参照し続けることで時空の安定性を根底から破壊する、致命的なバグだった。
今、その禁断のコードが実行され、現実が、定義を失って崩壊していく。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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