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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
issue#02 UNDERTALE

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issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 26

だが、それはあまりにも無謀な単騎駆けだった。

カルテット・マジコによってけしかけられたワームたちは、一斉に方向を変え、ただ1体の異邦の同族へと襲いかかる。それは、無数のシャチが1頭のマッコウクジラに群がる光景にも似ていた。


金属の鱗が激突し合う不協和音が鳴り響き、地響きと共に装甲片が火花の滝となって迸る。イーター・オブ・ワールドは巨体をくねらせ、必死に抵抗を試みる。その巨大な顎は数体の敵をまとめて噛み砕き、長い尾は薙ぎ払うだけで敵の胴をたやすく引き裂いた。


しかし、数の大小はあまりにも絶対的だった。1体を倒せば5体が、5体を倒せば10体が、間隙なくその身に食らいつく。イーター・オブ・ワールドの装甲は、無数の牙によってチーズのように削り取られ、引き剥がされ、その巨体は抵抗らしい抵抗も次第に封じられ、おびただしいワームの渦の中へと沈み込んでいく。


断末魔の咆哮が虚空にこだまし、やがて途切れる。帝国の守護神は、ついには力尽き、その骸さえ無数の同族に食い破られ、あえなく命を絶たれた。


「ば、馬鹿な……」


シャカゾンビはがくりと膝に手をつき、目の前の悪夢に言葉を失う。キングもまた、握りしめた拳から力が抜け落ち、サングラスの奥の瞳を絶望に見開いたまま、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


かくして、地底帝国の絶対的な切り札は、あまりにも無惨な骸を晒した。その光景は、現場にいたすべての兵士たちの戦意を、根こそぎ粉砕する決定的な一撃となった。


残された軍勢は、もはや上官の命令も耳に入らない。


「逃げろ!無理だ、勝てるわけがない!」

「やめろ、来るなぁ!」


恐怖に歪んだ叫びがそこかしこで上がり、彼らは武器を投げ捨て、蜘蛛の子を散らすように四方八方へと敗走を始めた。統率を失った軍勢は、もう、ただの烏合の衆でしかなかった。


シャカゾンビは、テラリアキングの胸ぐらを掴み上げた。ガントレットの指が、分厚いレザーベストに深く食い込む。「ワームがやられたぞ! どうするつもりだ!」


だが、キングはその手を荒々しく振り払い、苛立ちを剥き出しにして一喝した。

「構わねぇ!それより、赤い蝋燭を倉庫からありったけ出して、急いで炊け!」


「それが……何になる?」

シャカゾンビの問いには、凍てつくような直感がにじむ。


「紫の蝋燭とは正反対よ。奴らの狂暴性を極限まで引きずり出すフェロモンだ!――もうヤケだ、何もかも巻き込んで地球ごと終わらせてやる!」


狂気に染まったその言葉を聞き終えた瞬間、シャカゾンビの身じろぎがぴたりと止まり、眼窩の光から一切の感情が消え失せた。


「ふん、くだらん――」


「なにぃ!?」


「カタストロフだけは吾輩の本意ではないと、かねて言っておいたはずだ。その覚悟ならば、ここで袂を分かつまで!


――では、さらばだ!」


言い放つや否や、シャカゾンビはヤギ頭の杖を天に突き上げ、空いた片手を弓を引き絞るように構える。

その刹那の動作から放たれたのは、雷以上の何か。マンションの1棟さえ容易に消し飛ばすだろう禍々しい矢印状の閃光がキングの全身を呑み込んだ。


「……ぐっ!」


衝撃の瞬間、すべてを白く焼き尽くす閃光が炸裂し、キングの矮躯は悲鳴すら上げる間もなく、黒い煙を纏って地を転がる石ころのように吹き飛ばされた。


その姿を一瞥すらせず、シャカゾンビはマントを翻し、混乱の只中へと姿を消していった。


「クソッタレぇ……構わねぇ、お前ら、やっちまえ!」

呻くテラリアキングは、虫師の腕に支えられながらも、最後の命令を吐き捨てた。


その号令が、地獄の釜を開く合図だった。

見渡す限りの丘陵地帯に突き立てられた無数の蝋燭へ、一斉に禍々しい火が灯る。赤黒い煙が粘性を帯びて立ちのぼり、地を這う赤い海のごとく、またたく間に荒野を覆い尽くしていく。


「なんだ、この煙――ッ!?」

蟲を手綱で操る身である以上、抗いようもなく煙幕へと突入したホットショットが叫ぶ。

やがて、赤い煙のカーテンを突き破って現れたワームの群れは、その姿を清浄な大気に晒した瞬間、豹変した。装甲の節々が憎悪に満ちた赤光を灯し、統制の取れていた動きは痙攣的な暴威へと変わる。


その凶暴な意志は、手綱を通じて衝撃波のように少女たちを襲った。


「っうぇ!すごい匂いだよ、これ……!」

煙の中から身を出したスヌープキャットは鼻を押さえ、目に涙を浮かべて呻く。

彼女の獣の五感には、煙の強烈な刺激がより強烈に襲いかかっていた。


「はちる、大丈夫?」

隣のワームの背で、ミーティスが心配そうに叫ぶ。

「だいじょうぶ、だけど……これ、虫を狂わせるフェロモンかも!」

スヌープキャットは鼻をこすりながら答えた。


「ああ、なんかヤバくないか?ワームが――」

ホットショットが疑念を口にしかけたところで、

「言うことを聞いてない感じがするっ……!」

イムノが短く補う。


「ダメだ!全然こっちの操縦が通じなくなった!……おい、直れ、テレビッ!45度の角度だ!」


飛翔して距離を取ったホットショットが、ワームの巨大な頬へ怒りの飛び蹴りを叩き込む。だが、金属の巨体は意にも介さず、甲高い咆哮と共に岩盤を砕き、ただ破壊の衝動のままに暴れ狂った。


「ワームが、完全におかしくなっちゃった!」

ミーティスの悲鳴が、荒れ狂う金属の海に呑まれる。彼女たちのコントロールを完全に振り切った怪物の群れは、ただ破壊の衝動に身を任せ、一帯を極限のカオスへと変えていた。


「ダメだ、いったんゲートまで撤退しよう!このままじゃ、ワームたちが空洞の天井ごと食い破る!」

イムノが雷のソイルを蹴って跳躍し、空気を切り裂くように叫んだ。


「ゲートまで逃げてどうするんだ?ここで踏みとどまるしかないんじゃないのか!」

火の玉となったホットショットが、すぐそばを飛び抜け様に、手を真上に伸ばしたミーティスの体を吊り上げ、ドッキング飛行の体勢に入る。


「ゲートの暴走を利用するんだよ! テストの失敗を思い出して!あれを意図的に起こして、この空洞をワームもろとも質量で埋め尽くすんだ!」

イムノが、思考よりも早く指示を返す。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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