issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 25
――圧巻の光景である。
腕も足も持たぬ異形の長大なる躯体が、旺盛なバタフライのごとく大地を泳ぎ抜けるたび、地盤は砂ごと、あるいは岩ごと盛大にかき分けられていくのだ。
それはまるで、惑星そのものを耕す“巨神の鋤”であり、草原も岸壁も、すべては同じように、狂暴性を前面に凝縮した巨体の前に打ち砕かれ、粉砕されていった。
異変を察知した前線の地底兵たちは次々と布陣を始めるが、その軍勢のひとつひとつは、たったひと噛みで飲み込まれそうなほど、あまりにも取るに足らぬ存在でしかなかった。
ワームの背に跨る4人は、腰を低く落とし、どこか愉しげな面持ちで、彼らの長大な装甲に結った手綱をたくみに操る。その絶妙な舵取りによって、ワームたちの進路は意のままに誘導されていく。
地上戦艦の艦砲斉射や、弧を描いたビーム弾が次々と蟲の列に炸裂するが、それらはワームの腹を起点に発生する莫大な砂嵐に、あえなく呑み込まれ、音も煙もその中に溶けて消えた。
「このまま突っ込めー!!」
スヌープキャットが、無邪気な歓声を上げる。
やがて、キロメートル級の巨体を先頭とした“蟲の津波”が、地底人の軍勢めがけて、無垢なる平原をことごとく粉砕しながら襲いかかった――。
最前列に並ぶ陸上軍艦は、逃げ惑う兵士たちを虫のように振りまきながら、正面から突っ込んできたワームの顎に突き破られる、内部で連鎖する圧壊と爆発が装甲のあちこちから火花を吹き上げ、金属の外殻が四散していく。
地底人の兵士たちは、なすすべもなく散り散りに逃走し、ある者は裂け目に呑まれそうになり、ある者はただ圧倒的な砂嵐の中に押し流されていった。
その絶大なる暴力の前に、抗うという意志さえ彼らの意識からは一瞬で掻き消されてしまったようだ。友軍は、危機に陥った友軍の手をただ取ることばかりに必死で――それほどのあわただしい逃げ様だった。
「……総長、ゲート方面で異常発生ッス!ゲートが制御不能なって、勝手に起動――中から出てきたワームの大群がこの本部の方めがけて突進してきやす!」
報告が終わるか終わらないかのうちに、本部のモニターもけたたましい警告音を発し始める。
ドローンの映像には、青白い閃光に包まれたゲートの円環を、次々とメタリックなワームの巨体が突破してくる様子が克明に映し出されていた。
「なにィ!?どのくらいの規模だ!」
テラリアキングの声が低く響き渡る。
「最初は数匹でしたが、今や後ろから後ろから途切れなく……とても正確には数えられませんが、何10匹もの隊列で押し寄せてきやす!
イーター・オブ・ワールド級が複数!」
兵士の声は明らかに上ずり、背後では本陣の参謀たちが色めき立つ。
「防衛線は!?門前の警備隊はどうした!?」
「すでに突破され、壊滅状態との報告です!」
「何やってやがる、ゲートを閉じろ!――制御系は生きているのか!?」
「いえ、応答がまったくありません! すべてロックされています!」
映像の向こうでは、地鳴りと共に土煙が舞い、巨体のワームが地面をのたうち回りながら、大地を飲み込んでいく。
それは大震災がもたらした思いがけぬ津波――そのどこか淡々して現実味の薄い大破壊の映像の、初報を目の当たりにした時のような言葉を奪う衝撃を彼らに与えていた。
テラリアキングとシャカゾンビは、本部を飛び出して丘陵の頂へと駆け上がる。
眼前に広がっていたのは、事前の予習による多少の心構えなど、あまりにもあっさりと意識の隅にまで遠のけさせる光景だった。
群れを成したワームたちが大地をうねらせ、巻き上がる砂塵の大渦と競うように前へ突き進み、互いに追い越し追い越されながら、戦慄すべき勢いで迫り来るその姿は、もはや個々の蟲体が纏う金属質の外殻に刻まれた襞や突起にいたるまで、肉眼で克明に識別し得るほどの距離へと達していた。
「あれが、全部か……」
シャカゾンビの声は、乾いた骸骨の顎から絞り出されるようにその末尾をかすれさせた。眼窩の奥の光が、信じがたい光景を前に激しく揺らめく。
「冗談じゃねえ、数が違いすぎらぁ!」
テラリアキングは苦々しく唇を噛み締め、思考が追いつくよりも早く、咄嗟の判断で照明弾を地中の空へと撃ち上げた。
炸裂したマグネシウムの白い光が、絶望的な物量で押し寄せるメタリック・ワームの群れ――そのおぞましい全貌を束の間鮮やかに照らす。
直後、背後から轟くけたたましい咆哮が、地底世界そのものを揺るがした。前面の脅威に拮抗するほどの地鳴りに
合わせ、足元の地面が巨大な鯨の浮上がごとく盛大に噴出する。土と岩盤の奔流の中から、
テラリアンが誇る唯一にし て絶対の巨獣――帝国の守護神たる《イーター・オブ・ワールド》が、怒りに満ちた巨体を震わせてその姿を現したのだ。
「行け、イーター!全部ひっくり返してやれ!」
キングは、みずからの切り札に最後の望みを託し、前方の空間を殴りつけるように腕を振る。
その声に応え、イーター・オブ・ワールドは大地を削る轟音とともに、まっすぐ敵の群れへと突進していった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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