issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 24
イムノは、静かにガンブレードを構えたまま、わずかに顎を引く。
「うまく誘導に乗ってくれたね。あの規模の群れを従わせるなら、フェロモンより、
ケンカでボスの座を奪っちゃう方がよっぽど手っ取り早い……」
その眼前――群れを束ねる王たるワームは、彼女たちの闘志に応じて身をくねらせ、大地ごと地鳴りを響かせていた。
無人の地球を取り巻く大気が彼女たちのくるぶしの高さを吹き抜ける中、ホットショットはひときわ余裕の笑みを浮かべ、ポケットに両手を突っ込んだまま、あえて視線だけで怪物を値踏みした。
「……BGMだな、なんかボス戦用のBGMがあってもいい。聖歌がアーアーアーってやつ」
ゆるやかに1歩を踏み出すと、靴底から淡い火花が浮かび上がり、全身をじりじりと紅蓮のオーラで包み始める。
「まずは一発、ガツンとやらないとね!」
表向きは自然体に構えたミーティス。しかし、その心中ではひっきりなしに指揮棒が振られており、その都度札の列は放射線状に宙へと散ったり、軌跡を描きながら幾何学的な陣形へと収束していく。
このせわしない配置換えは、彼女自身の思考回路と密接に連動しており、
“最初の1手”に最適なフォーメーションを、試行錯誤の末に編み出さんという営みそのものであった。
まるで空間全体を用いた作図――その緻密な動きが戦場に独特の静謐を与えていた。
そしてスヌープキャットは深く拳を握りしめ、関節を鳴らしながら頼もしく笑う。
「みんな、加減はナシだよ!」
その一声に、4人は互いにみじかく頷き合い、荒野にゆっくりと前進する。
その背中には、誰ひとり臆することのない覇気がみなぎり、異界の闘気と真正面から火花を散らし合う。
瞬間、ワームの王はその全身を波のように蠢かせながら、長大な体軸を天へと持ち上げる。
ヤツメウナギに酷似した放射状の牙が円を描いて大きく開き、口腔の奥からは鉄と硫黄の熱を孕んだ蒸気が立ちのぼる。そして、圧倒的な咆哮が盆地全体を震わせる。岩壁が共鳴し、膝下には微細な砂粒が音に応じて踊った。
戦いの火蓋が切って落とされる。
……シャカゾンビが建造したマルチバーサル・ゲート。その管理を任されたテラリアンの兵士たちが、
丘陵地帯で退屈そうに警備にあたっていた、まさにその時だった。
予兆もなく、ゲートの円環が青白い光を放ち、空間が電子的な悲鳴を上げてゆがみ始める。
「なっ……急に装置が起動したぞ!」
「どうした!? 誤作動か!」
制御コンソールは応答せず、インジケータだけが虚しく瞬く。
だが、円環の中心――ゲートの鏡面は、すでに一方的に“向こう側”の世界をうつし出し始めていた。
その向こうで、夜の海を思わせる漆黒の空間が波打ち、きらめく無数の光点が奔流となって迫る。
やがて、その潮流のただ中から――
「うわああああああああ!」
兵士の絶叫は、最初の咆哮にかき消された。
ゲートの円環を、巨大な金属質の環形生物が火の輪くぐりのサーカスのように跳び越え、
着地の衝撃だけで大地が爆ぜる。1匹、また1匹……その出現は連続し、とどまる気配もない。
並行世界のメタリック・モンゴリアンデスワームが、解き放たれた災厄となって、この世界へと雪崩れ込んだのである。
ホットショットが、ワームの背をサーフボードのように乗りこなしながら、風を切って叫ぶ。
「マルチバースとの特別コラボ実施中!今ならでっかいゴカイが貰えるぞ!」
「いつもと、全然風の感じ方がちがーう!」
続けて別のワームの上――手綱を握ったスヌープキャットが、耳をピンと立て、疾走の快感に身を震わせた。
「これ、病みつきになりそう!」
ミーティスも、その巨体が生み出す重力加速度に興奮を隠せない。
暴れるワームの背で仁王立ちするホットショットは、平然と髪をなびかせ、
「ブレーキの方法さえ考えれば、乗り物として実用化できるな。……ま、私は飛ぶけど」
その隣でイムノが綱を手に、かるく身を沈めて応じる。
「わたしも、こっちの方が好きかも!」
4人の少女たちは、規格外の暴走を、むしろ全身で楽しんでいるかのようだった。
……その頃、テラリアンの仮設本陣、巨大なホロスクリーンが並ぶ一角では、
側近の1人が足早に駆け寄り、テラリアキングへと声をかける。
「総長、諜報部隊から、ラバシティの最新のスキャン映像が上がったみたいっす!」
部屋の空気が、ひときわ引き締められる。
モニターのひとつには、ラバシティの郊外に新たに築かれつつあるドーム状の建造物が、立体映像として投影されていた。側近が画面を切り替えるたび、その内部構造の解析映像が次々と浮かび上がる。
「連中が急に造りだしたドームみたいな建物、複合構造で中の様子がサッパリだったんですが、やっぱり、どうやら別の構造があったらしいっす。
それが……これです」
映し出されたのは、堅牢な土台の上に据えられた二重の円環構造だった。水平に広がる輪と垂直に聳える輪とが交差するその組み合わせは、内部を走る配線の文様や選び抜かれた素材に至るまで、どこか見覚えを呼び起こすものがある。テラリアキングはすべてを直感で悟った。
「……おい……こりゃあ!」
椅子を軋ませて立ち上がり、モニターの方へと詰め寄る。
「……ああ、マルチバーサルゲートだ!我らと同型の……間違いない!」
傍らでシャカゾンビが、めずらしく狼狽した口調で唸った。
「まさか……技術を解析されたか?」
「この短期間で?……ありえぬ……!そもそもどうやって奴らがゲートの存在を!?」
「ヨルシカが、俺の娘が尋問を受けたのかもしれねぇ!いやしかし……あいつが技術まで知ってるわけがない」
テラリアキングが、やるせなく叫ぶと、
本陣の幕僚たちは、顔を見合わせ、緊急対応の指示が飛び交いはじめる。
「すぐに追加偵察を!ゲートが起動する兆候があれば即座に報告しろ!」
「敵がそれを使って何か仕掛けてくる意図なら……こっちの防衛線を今すぐ再構築すべきかと!」
その場には、一瞬にして嵐の前の空気が満ちる。
……だが、すでに手遅れだった!そのころ緑の空洞の向こう側では――無数のメタリック・モンゴリアンデスワームどもが地平を蹂躙していたのだ!
永遠のごとく連なる丘陵を、あたかも大海原に見立てて、怒涛のごとき疾走劇を繰り広げながら!
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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