issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 22
「へぇ、原始的な技術の肩をずいぶん持つんだな」
アシュリーは、からかうように鼻を鳴らした。その挑発に、マクロブランクは明らかに心外そうに触手をぴくりと震わせる。
「どんな技術だって、それなりのロマンと開発に奔走した技術者の崇高な理念が詰まっているのでちゅ!
重力タイヤの普及した世界の人間が、木の車輪を見下して笑う――それはとてもではないが文化的な態度とは言えまちぇん!」
「さっきと言ってることが違うような……」
マクロブランクの主張を鞍替えした熱弁に、おせちは、ひそかに呆れ顔を隠せないが、
「やっぱり機械が好きなんだよね」
さなだけは、ほんのり微笑みを浮かべて理解を示す。
「じゃあ、結論は出たな。お前のその”ロマンあふれる”頭をちぎって、呼び水にすればいい。それで、
ちょっとIQが下がる事さえ我慢すればお前は元の世界に帰れるんじゃないか?」
アシュリーは悪びれずに言い放った。
「そのやり方では、ワチキの世界の隔絶された時空間にはたどり着けないから、これから一緒に案を考えてほしいと言ってるんでちゅ!あと何回この説明をすれば理解できるんでちゅか!? アシュリー、お前は原始的な対話型AIでちゅか!?チューリングテストに合格できる自信はありまちゅか!?」
「こいつ……!」
ついにアシュリーの堪忍袋の緒が切れた。袖をまくるようにして、1歩踏み出す。
だが、その肩を、背後から伸びてきた大きな手が、ふわりと、しかし有無を言わせぬ力で掴んだ。
はちるだった。
「まあまあアシュリー、ネコのスマイルに免じて落ち着いてって!」
彼女は苦笑いを浮かべている。
「ちくしょう、都合のいい時だけネコとヒョウを行き来しやがって……」
渋々足を止めたアシュリーは、それでも割り切れない苛立ちを胸に残し、毛に埋もれた半身から、まるで子猫のように片目だけを恨めしそうに上に向けた。
その時、しばらく黙っていたおせちが、ぽつりと呟く。
「でも、君の体にゴミの粘液が付いたままなのは、事実だよね?後あれだよ、万能サバイブ装置ってやつ。それも異世界のものなんじゃ」
否定しようのないひと言は、場の空気を一変させた。
「……それは、そうでちゅな!」
マクロブランクは、さっきまでの勢いが嘘のように、膝をはたと打った。
「じゃあ、そのエキゾチック物質は君の体の表面とそのアイテムの2種類から採取させてもらおう。君が風呂キャン界隈の人で助かったよ」
おせちはさらりとした笑みで告げる。
「なんだか不本意な褒められ方をした気がしまちゅが……!でも、先に言っておくでちゅよ!」
マクロブランクは、ここぞとばかりに再び触手をもたげる。
「……トポコン式のゲートでは、先ほどの事情により物理法則があまりにもかけ離れた世界には干渉できまちぇん! 加えて、こちらの世界の天の川銀河と、向こうのアンドロメダ銀河を繋ぐような、超長距離の座標転移も不可能でちゅ!
つまり、とんでもないエネルギーを引き寄せて一気に敵をバーン、みたいな芸当はできないのでちゅ!
あと、望んだ世界を引き出すためにはそれなりの総当たり的な試行錯誤がいりまちゅ。波長のズレ幅が大きかった場合は特に……」
……しばらく沈黙が続いたのち、おせちはマクロブランクの懸念を、
「いや、それでも十分な賭けだね」
まるで肩の埃でも払うかのように軽く切り捨てた。
「ああ、無課金で引けるガチャなんて朝飯前だよ。地球人はみんな、そういう特殊な訓練を受けてるんでね」
おせちはアシュリーの軽口を無視すると、マクロブランクをまっすぐに見据え、場の空気を引き締めるように、本題を切り出した。
「私たちも、シャカゾンビと同じく安全策でいくことにするよ。ワームにはワームだけをぶつける。そこでひとつ、確かめたいことがあるんだ。並行世界の間で、時間の流れって全部同じなの?」
この問いを耳にした瞬間、マクロブランクの体表が、今度は感心したような明るい色合いでちかちかと明滅した。
(……わかりやすいな、こいつ)
そしてアシュリーはひとり眉をひそめる。
「……おっ、そこに気付くでちゅか!?おせち、お前、いい生徒の素質がありまちゅよ!――」
はたして彼は、講師めいた口調で、満足げに触手を揺らす。
「――まさに、その通りでちゅ!無限の可能性というのは、時間の進み方にも無数のバリエーションが存在するということ。その中には、世界そのものの様態はほとんど変わらずとも、ただそれだけが大きく異なる時空もあるでちゅ!」
その答えを受けて、おせちの口元に、勝利の確信を湛えた笑みが浮かぶ。
頭の中では、無数のピースが一気に組み上がり、勝利への設計図が完成していくのが見える。
「なら、ワームが群生してて、しかもこっちの世界よりできるかぎり“時間の進みが遅い”宇宙を選定してほしい。近いチャンネルなら、とりあえずワームは呼び寄せられるのは、シャカゾンビが実証してくれたことだし――」
いったん言葉を切り、瞳に悪魔的な輝きを宿しながら、続ける。
「――その上で、そっち側の世界にも、もうひとつゲートを設置しよう。で、その出口を『緑の空洞』に繋いだら、どうなるだろう?――」
ここで、3人も息を呑んだ。
「……すべてが思惑通りにいけば、こっちの世界の時間軸では、たった5分とか10分後に奇襲を仕掛けられるってことだよね」
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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