issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 21
「……なるほどね」
おせちは、ただ短く相槌を打つ。その落ち着き払った態度が、かえってマクロブランクの焦りを助長していることには、彼女自身、気づいていなかったのかもしれない。
「……じゃあ、それでもいいからゲートを作ってくれる?」
「なんででちゅ?」
「それでテラリアキングとシャカゾンビを倒せるかもしれないからだよ。このラバシティは今、テラリアキングの軍勢によってすべてのトンネルが封鎖されていて、
どこからも外に出られない状況になっている。緑の空洞にだって、当然監視の目を掻い潜りながらでは辿り着けない。
でも、だからといって向こうもこっちを簡単には攻めてこられない。
もし下手な動きを見せれば、王女の命もろとも、この街を爆破するっていう脅しをかけてあるから。
つまり、地上とテラリアン、そしてテラリアンと私たち――地球は今、二重の膠着状態にある。
みんな、次にどう動くかばかり考えて、今すぐ直接戦うなんて誰も思ってもみない。そういう探り合いの段階。
でもそれはせいぜい1週間の話でしょ。どこかの陣営がシビレを切らしたらそれで地球人はみんな連鎖的に絶滅する。だからこそ、動くなら“今”なんだ!」
おせちは、自信に満ちた様子で言い放った。その提案に、マクロブランクは一種の感銘を受けたように触手を震わせる。
だが、
「……でもなぁ、それは無茶でちゅよ!この星の機械じゃ加工精度が低すぎるし、パーツの大半が代用品になる!これじゃゲートを安定して動かすなんて到底無理でちゅ!」
次の瞬間にはすぐさま現実的な問題を指摘し、露骨に渋い顔を見せる。
「……でも、シャカゾンビには造れたんだよね?」
おせちは、言いたいことの羅列の中から、単なる事実だけを、切って口から落としてみせた。
それが、この手合いのプライドを何よりも効果的に抉ることを知って。
「……ふーん」
その、値踏みするような響きが、マクロブランクの理性に火をつける。
「むっ……!たしかに『∮ᚦ≠⟁∴⧫₪⌰ↃЖ』式ならば、この星の原始的な工業事情でも、まあ、できなくはないでちゅ!シャカゾンビとやらの造ったのも、どうせその方式に違いないでちゅ。わちきにとっては、あまりに旧式すぎて、考慮に値しなかっただけでちゅ!」
「……なんて?」
アシュリーが怪訝そうに首を傾げて聞き返す。
「だから、『∮ᚦ≠⟁∴⧫₪⌰ↃЖ』式でちゅ!」
マクロブランクは、いらいらと触手を頭上でふりまわす。
「……ああ、はいはい、そういうことね。わかるよ。私もさ、よくわかんない漢字は適当にそれっぽく走り書きするから」
アシュリーは意地悪そうににやりと笑い、からかうようにわざと相槌を打った。
「違いまちゅ、お前みたいなトンチキのモノグサと一緒にするなでちゅ!これでも、この宇宙の共通語に誠心誠意翻訳してやったのでちゅよ!?
……あっ、なるほど、
この星は情報的に隔絶されているので、さらにローカルな言語に落とし込む必要があるでちゅか。
それならば、『トポロジカル・コンコード』という言葉が妥当かもしれまちぇん」
マクロブランクは必死に説明を続け、ついにはわかりやすい名称を探し当てる。
「それならわかる。で、君は、その形式のゲートなら今の地球の台所事情でも造れちゃうんだ?」
おせちは、冷静に確認した。
「はい、その通りでちゅ!ただし問題は――わちきが作れるかどうかというより、宇宙の“チャンネル”を合わせるためのエキゾチック物質を用意できるかどうかということでちゅ。
ここでいうエキゾチック物質とは、異世界から来た、“原理的にこの宇宙に存在しない物質”のこと。マルチバース技術のない宇宙で、それを用意すること自体が、本来矛盾した要求なのでちゅが……」
マクロブランクは、得意げに胸を張る。だが、おせちは顔色ひとつ変えない。
この時、彼女の脳裏には、少し前の“状況”が想起されていた。この生き物が、
ついさっきまで何の上に置かれていたか。つまり――
「……アシュリー!生ゴミ!」
おせちは、即座に叫んだ。
「誰がトマトの薄皮だって?」
しかし、その叫びはあまりに要約されすぎていたようだ。
「……いいから、ゴミ捨て場まで戻って拾ってきてよ!その生ゴミが、たぶんマクロブランクと一緒に吸い込まれてきたエキゾチック物質の山だったはずだよ。――そういうことでしょ?」
おせちの問いに、
「それは……その通りでちゅ!」
マクロブランクは得意満面で触手を高く振り上げる。
「でもさ、それってもう焼却炉で燃やされてるんじゃない?何時間も前の話だし。
それに、そもそも“エキゾチック物質”って、どうして必要なの?」
ここに素朴すぎる疑問をはちるが投げると、マクロブランクは一瞬言葉を失い、処理落ちするように沈黙した。やがて、わずかに体表を侮蔑の色で明滅させると、なかば呆れた口調で子供に説明するように言い始める。
「はちる、お前も頭の回転がイマイチ勢でちゅなあ! いいでちゅか?
例えば、ラジオのダイヤルをめちゃくちゃに回して、ピンポイントで目的の放送局に繋がると思うでちゅか? 無理でちゅ!それと同じで、やみくもにゲートを開けば、出てくるのは予測不能なカオスだけでちゅ!」
そして、アシュリーの額を触角でちょいと示し――
「エキゾチック物質っていうのは、それぞれの宇宙が持ってる固有の“周波数”そのものなんでちゅ!
その物質がもつ振動数――これをゲートにインプットすることで、わちきたちは、その物質が生まれた宇宙、あるいは近傍の宇宙――つまり特定の座標に、”比較的”安定してアンカーを降ろすことができるようになるのでちゅ!
そしてここで重要なのは、ゲートを建造する宇宙と同じ世界の物質を、振動数の記録に使っても意味がない、ということなのでちゅ。それじゃ“ズレ”が起きず、ただの同じ時空内のワープにしかなりまちぇん。
ようするに、AとZの宇宙があった場合、その“周波数のズレ幅”の中にある『BからZ』の宇宙が優先してピックアップされやすくなる――それがこのトポコン式の基本的な発想でちゅ。
……これぞ、知的生命体によるエレガントで高精度な次元航海術の第1段階、でありまちゅよ!」
と、誇らしげに締めくくった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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