issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 20
憂いを帯びた顔でマクロブランクを見つめると、さなはそのぬめりを帯びた触手の先に、自分の人差し指をそっと触れさせた。「ピクッ」と反応するその感触は、ナマコのようでもあり、それでいてどこか温かい。映画『E.T.』のポスターをなぞるように指先を重ねたまま、
「ねえ、マルチバースの使者さん。何かいい手はなぁい?」
彼女は期待と不安をないまぜにした声で問いかけた。
その問いに、まず応じたのはアシュリーだった。
「ここから私たちは、テラリアキングとできるだけさっさと決着を付けたいんだ。ぶっちゃけ、ガッコあんまり休みたくないからな」
そして彼女はふと、この空間の喧騒とは無関係な、ごく個人的な憂鬱を口にしていく。
「……重いんだよ正直。『そっちの活動があるんでしょ?気にせず頑張って』っていう、友達とか学校の、あの変な気遣いの雰囲気」
重々しいこの場の空気を切り裂く刃としては、あまりにもあけすけで軽薄すぎたが、その論旨自体は、カルテット・マジコの仲間たちがそれぞれの実感を胸に、思わず同調せざるを得ないものだった。
しかしマクロブランクは、まるで他人事のように軽く鼻を鳴らした。
「ふむ、ならば交換条件でちゅ。わちきは、古いデパートに売ってる電池仕掛けの玩具じゃありまちぇんからね。厳然たるマルチバーサルな市民権の保持者なのでちゅ。わちきの願いもちゃんと叶えてくれるというのなら、この天才的な頭脳を貸してあげなくもありませんよ?」
「なんだよ、条件って?」
腕を組み、アシュリーが訝しげに口を挟んだ。
「わちきを、あるべき場所――すなわち、元の世界に返してほしいのでちゅ」
マクロブランクは、ことさらに尊大な態度で触手を1本、天に突き上げた。
「そりゃ自分でなんとかした方が早いんじゃないか?来た奴にさえわかんない道がなんで他の奴にわかると思ったんだよ」
アシュリーが、小馬鹿にするように鼻で笑うと、
マクロブランクの体表がカッと赤みを帯びる。
「望んで来たなどと、そんなことありえまちぇん!
これは、本来万が一にも起こり得ないはずの偶発的事故!
これまでの話を統合するに、かのシャカゾンビなる不届き者がワーム補充の目的でマルチバーサル・ゲートを建造し、その次元干渉の余波に、わちきが運悪く巻き込まれた……。そう結論付けるのが、最も論理的かつ妥当な推測でちゅ!」
「何ぃ?今“宇宙と宇宙”をあの理科室の標本にもならないようなガラクタが繋げたって言ったか?
どこでだよ?肋骨か?そんな技術があるなら、あたしならもっとマシなものを引き寄せるけどな。最低限、ミミズと喋る脳みそ以外にする」
アシュリーは、マクロブランクと、彼が語る敵の両方をまとめて侮蔑するように言い放った。
その言葉に、マクロブランクの体表が怒りで赤く発光する。
「アホでちゅか!やはりアシュリーは、リアリティ・インデックスも理解できない“野生種”! お前のような個体が知性の平均である文明が、マルチバース技術を扱うのがどれほど危険か、まるで分かっていまちぇん!それは、赤子に核のボタンを渡すのと同じことでちゅ!」
彼は、憤慨に触手を震わせながら、アシュリーを指し示す。
「ゲートを作ったシャカゾンビというヤツは、原始人なりに、その辺の理解と節度をわきまえている、ということなのでちゅよ!」
思わず、アシュリーはこめかみを不快に痙攣させかけたが、
「……へえ」
それ以上の応酬は控え、別の観点に意識を向ける。
「――じゃあ、そのゲートはどこにあるんだ?」
そう問い詰めた瞬間、今度はマクロブランクが言葉を詰まらせた。
「それが、緑の空洞ってとこなんだろうね」
はちるが、確信をもって答え、
「その通りです」
ヨルシカが静かに相槌を打つ。
おせちは、近くで得意げに胸を張る(ように見える)脳の怪物を冷静に観察していた。
そして、一連の情報を頭の中で整理し終えると、ゆっくりと口を開く。
「まとめると、マクロブランク。君は元の世界に戻りたいから、私たちに協力してほしい。……そういうことでいいかな?そのマルチバーサル・ゲートとやらは、自分では作れないの?」
その核心を突く問い。それは、マクロブランクのプライドをいたく傷つけたらしい。
「もちろん作れまちゅが!」
彼は、触手を逆立てるようにして、ムキになって反論した。
「――そもそも、この次元からわちきの次元へは、ゲートを使ったところで本来なら到達できないはずなのでちゅ!
なぜなら、わちき自身が外からのあらゆるエネルギー的干渉を断つように設定していまちゅから!
今回わちきがここへ来たのは、ようするに偶然の産物なのでちゅ。
個人的に行おうとしたマルチバース間の移動と、ゲートによる引き寄せのタイミングがまさに重なり、その上で次元間を漂う波長の波形が、超天文学的な確率で一致してしまった――これは、そういう不幸な事故なのでちゅ!」
その早口な弁明は、ほとんど悲鳴に近かった。必死にみずからの技術力と、この事態の不可抗弁性を訴えるその姿には、先ほどまでの尊大さは見る影もなかった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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