issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 17
……今回はあくまで敵国での出来事だが、「超人が、その能力でもって活動する時、
社会に与える影響はあまりにも大きい。それゆえ、特にまつりごとに対しては、
決して『1票を持つ市民』以上の存在としてそれに関わるべきではない」というオールラウ
ンダーの訓戒は、あるいは皮肉にも、この一連の顛末によって証明されたのかもしれない。
*
なんにせよ、マグコア・セントラルの制圧は、イムノとスヌープキャットの2人にとって取るに足らない作業だった。
王宮を守る兵士は、先日戦ったメタルスラッグ・ライダーと同等の装備から、
それなりの精鋭であることが窺えたが、それでもこの彼女たちの前では、障害にすらなり得ない。
(……テラリアキングの性格なら、本丸がここまで攻められて出張ってこないってことはないでしょ。つまり、この街にはいないんだ!)
イムノは心中で結論を下し、進路に立ちはだかる守備隊を、駆け抜けざま薙ぎ払っていく。
跳弾が火花を散らす廊下を一直線に突破し、エレベーターのぶあつい鋼鉄の扉を、圧倒的な勢いを乗せた飛び蹴りで、無造作に蹴り破った。
そして膝をかるく沈め、
――バンッ!
溜めた力を一気に解放する。
彼女の身体は、エレベーターシャフトの縁を蹴り、衝撃波を帯びた1発の弾丸となって垂直に射出された。
眼前に迫るは、兵士を満載にして降下してくる鉄の箱。
イムノはガンブレードを槍のように突き出したまま、その床を、下方から、何のためらいもなく貫いた。
――轟音。
鋼鉄を穿つ甲高い悲鳴。断線したケーブルが火花を散らし、エレベーターの床には、巨大な花が咲くように円形の穴が開く。
そこから、驚愕に顔を歪ませた兵士たちが、なすすべもなく重力に引かれ、暗い縦穴へと次々と吸い込まれていった。
*
白と黒の菱形――磨き上げられた黒曜石と大理石が、どこまでも続く謁見の間。その床を、イムノは疾駆する。巨大な白石の柱列の間には、王家の紋章――ただし2匹のデスワームが骸骨を取り巻く、きわめてギャングスタな意匠の――を金糸で織り込んだ深紅の絨毯が、最奥の玉座へと続く1本の道を成していた。
彼女の動きだけが、この荘厳な静寂を乱す唯一の異物だった。側廊の中空には、人工の太陽とおぼしき球体が白い光を放ち、その真下に設えられた水路を、清水が静かに流れていく。外部の喧騒が嘘のような静けさと、王権だけが放つ重圧が、この空間を支配していた。
視線の先には、玉座へと続く階段を守るように、メタルスラッグ・ライダーたちが威圧的に列をなしていた。空間を満たす緊張が、最高潮に達する。
舞台装置がこうして整う中で、それは思いがけぬ邂逅となった。
広間の奥、銃を構えて居並ぶ兵士たちの列が、明らかな動揺とともに、しずかに左右へと割れていくのだ。
中央から立ち現れたのは、ひとりの少女だった。豪奢な刺繍を施したドレスがか細い身体を包んでいるが、その佇まいには、すすけて暑苦しいこの地下の生まれとはにわかには信じがたい、凛とした冷ややかさが宿っている。
何よりも見る者の心を奪うのは、その白く長い髪だ。それ自体がウェディングベールのようにどこまでも続くこの髪は、毛先へと向かうにつれ火炎の狂気を帯びて、たえず波打つようになる。
そして毛先においては、ブルーハワイの鮮烈な夏の色彩がそれを占拠し、
白と青、ふたつの色はギザギザとしたメッシュとなって互いの国境を深くまで侵し合っていた。
そこで、あらためて観察者の胸に迫ってくるのは――
もしかするとこの娘は、地下世界に残された最後の“冷たさ”そのものを背負って生まれてきた、結晶のような存在なのではないかという、妙に詩的な直感である。
たしかにそれは情緒の過ぎる推論だが、同時にこれほど的確な形容もないと、誰もがひそかに確信させられるものでもあった。
その幼い顔立ち、物憂げな眉とくりくりした水色の瞳、そして華奢な身体つきに比して、ともすれば不釣り合いなほどの気品が彼女を支配していた。
しかしその気品は、彼女が現状の世界に対して抱く不満の裏返しであるようにも映る。その危うい矜持こそが、かえって少女の存在に愛くるしさを添え、奇跡的な均衡を保つ要となっているかのようだった。
イムノは片眉を上げる。
ドォン!
折よく、天井を打ち破ってスヌープキャットが彼女のななめ後ろに着地した。イムノは、その相棒に視線だけで合図を送る。この広間には、これまでの道中ではついぞ見なかったものがあった。青々とした葉を茂らせる観葉植物の鉢や、植え込みだ。地上の光を知らぬはずの植物や、それに沿った水の流れが、この部屋には当然のように息づいている。
「……重要人物。たぶん王族の人」
イムノは、姉妹にだけ聞こえる声でささやいた。
「待ってください……!」
その時、凛とした、しかし切迫した声が、広間の緊張を押し分けた。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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