issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 14
たちまち、人々の脳裏には、逮捕、実刑、拷問、極刑……そうした暗く重い単語が次々と浮かび、
遠くない未来の光景として予感されていった。
「……卑怯な脅しを!」
最前列の男が反抗する。だがイムノは、さらに冷徹な声を重ねた。
「これは脅しじゃない。論理的な帰結。――君たちに、もう選択肢はないんだよ」
その響きに、ぶり返しかけた怒号が一掃される。
押し黙った広場に、彼女の言葉だけが通る。
「ねえ、よく考えてよ。私たちと組めば絶対勝てるんだよ?」
「……」
「……まあ、気持ちはわかるよ。急にクーデターを一緒に起こそうなんて言われてもさ、そんなの怖いに決まってるよね?でもだよ?私はこうも考えてる。おなじ場所に集まったからっていってさ、みんなが同じ考えの持ち主ってわけでもない。
ただ派兵の失敗を問いたいだけで、王権の転覆までは考えてない人もいれば、単に冷やかしで来た人だっている。だったらさ、本気で王権の根っこを引き抜く気でここに来た人も、中には必ずいるはずだよね?」
イムノの視線が、探るように群衆を舐める。押し合っていた肩が、わずかに離れた。
「いるなら前に出てきて。今日、この瞬間、君たちには勝機が生まれた。だから――そういう覚悟のある人だけが、私たちと手を組むんだ。……あっ、言っとくけど、べつに私たちだけでもテラリアキングのことは倒せるよ?
でもさ、そんなこと言ったって信じてくれるわけないよね?つまり、これは普通の取引とは違う。私たちの強さを信頼できない人ほど私たちの提案には乗るべきなんだ」
そのにこやかで熱のない呼びかけが、広場全体を恐怖させた。
渦巻いていた怒りは、形を変え、新たな熱を帯びようとしていた。
「――俺らだよ――」
低く、押し殺した声が5列目のあたりから響く。
人の壁がモーゼの海のように割れ、現れたのは、肩幅の広い、いかつい面構えの男だった。
「――その”本気”の連中ってのは」
その目には迷いがなく、片手を高く振り上げると、周囲に潜んでいた仲間たちが、次々と歩み出てくる。
彼らは合図を受けた瞬間、腰や胸元に隠していた銃を、まるで舞台の幕を引くかのように、一斉に抜き放
った。鈍い鉄の質感が灯りを反射し、無数の銃口が、静かに地面へと向けられる。
「――!」
その光景に、広場の空気が一変した。
ざわめきが走り、息を呑む音、後ずさる足音、押し合う肩のきしみが混じり合う。誰かが短く叫び、誰かが口を覆う。緊張の波が、瞬く間に群衆を伝播した。
さらに別のグループも呼応するように現れ、武装蜂起に賛同する者の総数は、やがて数100を数えるに至った。
「……お前ら、このままでいいのかぁ!?」
最初に名乗りを上げた革命派の男が、壇の麓から、すっかりイムノの側近のように声を張り上げる。
「たしかに、この地上人に俺達の熱意がまんまと利用されたのは事実だ!だが、こいつの言う通りでもある! 今日、ここで腹を括れ! こいつらに乗って勝つ以外、俺達全員が生きて明日を迎える術はない!」
過激派とはいえ、おなじ地下で暮らす者の叫びだ。その言葉は、迷いを抱えた者たちの胸を直撃する。
立場の定まらなかった者たち――とりわけ青年層が、磁石に引かれるように最前列へと合流していく。横断幕を握っていた手は、昏倒した兵士が手放した銃へと置き換わり、その決意が、隊列の密度を増していく。
住宅の窓からも、おっかなびっくり顔を覗かせていた住民たちが、少しずつデモ隊へと合流し始めた。
「……俺も行く。やるしかないなら」
「俺もだ。圧政は、今日で終わりにする」
「家族を返してもらう。そのためなら、やるしかない」
別々の場所で発火した小さな決意が、燎原の火のように広がっていく。広場の群衆は、明確にふたつの層を成しはじめた。
しかし、時と共に厚みを増すのは前衛の層だ。後方でためらっていた者たちも、その背中に押されるように1歩ずつ間合いを詰めていく。もはや、そこに漂うのは単なる怒りではない。みずからの手で未来を掴むという、覚悟の光がその顔つきに宿っていた。
イムノは短くうなずいた。
「……頼もしいね。決まりだ。――よし行こう」
その合図と同時に、前列が低く身を沈め、突撃の姿勢をとる。
群衆全体が呼吸を合わせ、広場の空気が一段と重く、濃密になった。ひとたび動き出せば、もう止まることはないだろう力である。
「ひとつ、聞かせてくれ――」
最前列の男が、眉間に深い皺を寄せ、問うた。
「――捕虜の返還、そして、俺たちの国が地上を攻めた件だ。和平の段取りはどうなる」
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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