issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 13
後に残ったのは、2条の光跡。
兵士たちの間を縫うように駆け、ほとんど瞬間移動とみまごう速さで、追跡の部隊や、治安維持隊の前だけに現れては消え、的確に、そして一方的に彼らを打ち倒していくふたつの影は、一瞬たりとも同じ場所には留まらなかった。
完全武装の兵士200人余りを、3秒と経たずに昏倒させた、その直後――
イムノは20mを跳躍し、後方への宙返りを交えながら指揮台へと着地する。その姿を、広場にいるすべての者へ誇示するように見せつけた。
「……何が起きた?」
「おい、今のは……!」
「ガキ2人が、警邏隊を全滅させやがった!」
「……貴様ら、何者だ!」
雑多な怒声と驚嘆の渦。その中から放たれた問いを、イムノは待っていた。
彼女は振り返り、群衆の魂を射抜くように、冷静に、しかしはっきりと告げる。
「私はカルテット・マジコのイムノ。――地上から来た」
そして隣に並んだスヌープキャットが、弾けるように声を張る。
「そしてウチはスヌープキャット、レペゼンは吉濱キャティ・スタイル!担当カラーは白と黒ッ♪」
ゴキゲンな名乗りを終えるや、2本の腕を軸にV字開脚し、その脚を体軸の周りに巡らせていく。
ブレイキンの「トーマスフレア」から「ウィンドミル」へ、さらに「エアートラックス」へ――流れるようなパワームーブの連鎖。最後は「ハローバック」に茶目っ気ある表情を添え、そのまま腕の力だけで弾むように跳ね上がった。
だが、群衆の反応は薄い。声色には警戒、好奇、そして露骨な拒絶が入り混じっていた。
「……まだそういう雰囲気じゃなかったみたい」
イムノが苦笑を浮かべ、視線を前へ戻す。
「……うん」
スヌープキャットは肩を落とし、小さく反省の色を見せた。
「……侵入者だ!」
「何が目的なんだよ!?」
彼らの敵意を断ち切るように、イムノはかるく咳払いをして1歩前へ出る。
そして、指揮台の床へと刀身を突き立てた。その無遠慮な迫力に、最前列の者たちが息を呑む。
「テラリアキングが10日前、何をしたか知ってるかい?
見たこともないくらいおっきなワームを引き連れて、私たちの世界に攻めてきたんだ――」
その言葉に、場の騒ぎが一瞬、水を打ったように静まり返る。
「――それをけちょんけちょんにして追い返したのが、私たち。なんならそのワームだって倒しちゃった!」
今度は低いどよめきが、波紋のように広がった。民衆は互いの顔を見交わし、眉を寄せ、彼女の言葉の真意を計りかねて困惑している。
「すこしの間だけど、デモの様子を見させてもらったよ。君たちはテラリアキングの暴政に抗うため、ここに集まってるんでしょ?」
みじかく息を継ぎ、イムノは広場全体を睥睨する。
「私たちは、彼を追い詰めにきた。もう2度と地上にちょっかいを出せなくするためにね。
今の体制に不満がある人は――動機は違っても私たちとは利害が一致するよね?
どうだろう、よかったらこのまま私たちと手を組まない?」
そして、この申し出である。しかし、これは意図とは真逆の火を点けた。
ざわめきは敵意という鋭い棘を帯び、怒声の津波となって彼女に押し寄せる。
「……地上人だと?」
「ふざけるな! 俺たちの街で何を企む!」
「地上人はいつもそうだ! 石油も、レアメタルも、欲しいものを根こそぎ奪いに来たんだろう!」
最前列の男が、拳を天に突き上げた。
その動きに呼応し、群衆の奥からも石やボトルが投げつけられる。無数の視線が憎悪の熱を帯び、たった2人の少女へと突き刺さった。
「あの王とやり合った?んな話信じられるか!」
「結局はおんなじ穴のムジナだろ!」
「俺たちを盾にして戦う気か!」
怒声が重なり、金属の壁に反響して鼓膜を打つ。誰かが足元の石を拾い、別の誰かがそれを押しとどめる。そんな小競り合いがいたる所で連鎖し、広場は巨大な渦のようにざわめき続けた。
「今年のフジロックはずいぶん熱いね……」
「そうかもね。でもここからがヘッドライナーの腕の見せ所だよ」
物の飛ぶ中で、スヌープキャットとイムノは苦笑し合う。
「帰れ!ここは俺たちの土地だ!」
反感は熱を増し、押し合う肩の間から、敵意の唸りが絶えずふたりに打ち寄せる。
「……協力しないならそれでもいいよ!私たちは、私たちだけでキングを倒す。でもその前に、ひとつだけいいことを教えてあげる!――」
飄々としたままのイムノは、群衆を見渡して声を張る。
「――さっきの鎮圧部隊。君たちの警察かなぁ?見ての通り、私たちが全員、叩きのめした――」
察しの早かった者もいるようで、これだけの言葉で、広場のあちこちで人々が息を呑む。
「――もし、この場所から私たちだけが逃げたら――残された君たちはどうなると思う?
……そうだね。みんな、今の体制を暴力で覆そうとした危険思想者で、政治犯さ」
そのひと言は号令の属性をあきらかに帯びていた。広場の隅々にまでいつの間にか広げられていたイムノの話術という見え猿袋が、一気に締め上げられ、満ちていた喧騒を完全に閉じ込めたのだ。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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