issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 12
地下帝国テラリアの首都ラバシティ、その心臓部「噴気孔広場」には、
この日10数万の民衆が、側溝を流れる溶岩と同じ色の思いを胸に集まっていた。
広場を貫く巨大な通気塔は、すでに彼らに占領されている。
冷却ガスの白い噴流が間欠的に天を衝くたび、その金属的な轟音は、人々の無数の叫びを溶かし合わせ、ひとつの巨大な怨嗟のうねりへと鍛え上げていく。
「……派兵は失策だった!」
「我らの子を息子たちを地上の虜囚にするために連れ出したのか!」
「王政府は口のいいことばかりをいって民の声を無視するな!俺たちの生活は何も変わっていない!」
「我々はテラリア王の私闘まがいの暴挙を糾弾する!」
人で埋め尽くされた広場では、手製の横断幕が波打ち、罵声が鉄の棟々に反響して飽和する。熱気と汗、そして息苦しいまでの怒気が渦を巻き、閉ざされた空間の空気は、あたかも煮えた鉛のように重く、不気味に滾っていた。
「……陛下は、おいでくださるのかねぇ?」
群衆の後方で、顔に古傷を刻んだ老婆が、震える声でそう呟いた。
その時だった。広場の脇道に、複数のエンジン音が不協和音を奏でながら膨れ上がる。蒸気を盛大に吹き上げ、機動鎮圧部隊の装甲車列が、ついにその重々しい姿を現したのだ。ぶあつい鋼板に覆われた車列の周囲を、完全武装の兵士たちが影のように随伴する。彼らは、段差など存在しないはずの場所から、群衆を冷徹に見下ろしていた。
広場が、一瞬にして凍りつく。
車列が広場の縁を封鎖するように陣取ると、盾を構えた兵士らが機械的な精度で列を組み、押し寄せる民衆の激情と正面から対峙した。
「警告する!事前申請のない集会は法に反する!速やかに解散せよ!」
装甲車のキューポラから身を乗り出した指揮官が、拡声器を通して警告する。
しかしその声は、広場を埋める怒りの大合唱によって即座にかき消された。
「退くものか!」
「ここは我らの街だ!」
「王を呼べ! 王をここに連れてこい!」
群衆の中から上がったその声は、またたく間に広場全体の総意となる。
「陛下は国政の最中にある!無駄だ、解散しろ!」
指揮官は、冷ややかに一蹴した。
「その国政の失敗で、我らの同胞が地上へ連れ去られたのだ!」
「これは明確な犯罪行為である!感情論を排し、正規の手続きを踏め!」
「その手続きを何度踏んだと思ってる?お前たちが応えないから、こうして集ったんだろうが!」
「……最終警告だ」
指揮官の声から、わずかに温度が消える。
「これ以上は治安妨害とみなし、実力で排除する!」
「やれるもんならやってみろ!俺たちは退かないからな!」
それは、決裂を告げる最後の咆哮だった。
そして、2つの巨大な意志が衝突した。前のめりになる人の波。それを押し返す、
無機質な盾の壁。プラカードの柄が盾を叩き、言葉と肉体が激しくぶつかり合う。
怒号と命令が混じり合った濁流が、広場を満たしていく。
「……かまわん、放水開始!」
砲塔が低く唸り、次の瞬間、凍結ガスを帯びた高圧水流が白い絶叫となって群衆へ襲いかかった。氷霧をまとった水塊が顔や胸を打ち、数人がなぎ倒される。
「くそっ、やりやがった!」
非武装の民に何をするか!」
踏みとどまる者は怒声を張り上げ、弾かれた者は仲間に引き起こされながら、再び怒りの最前線へと復帰する。憎悪に燃えた手が足元の石を掴み、火炎瓶が赤い軌跡を描いて宙を割った。
「前進!」
無慈悲な号令一下、鎮圧兵が盾を打ち鳴らし、重い足取りで距離を詰める。
「退くな! 押し返せ!」
群衆もまた、巨大な獣のように一体となって応酬した。
地下広場は、金属質な反響をともなう怒号と爆ぜる音に満たされ、通気塔から噴き上がる冷却音すら、今やこの衝突の轟きに掻き消されていった。
そんな広場に、突如として横殴りの轟音が走った。
鉄骨ごと集合住宅の壁面が炸裂し、鋼材と破片が火花をまとって四方へ飛散する。開いた大穴から、カルテット・マジコの4人が矢のように射出され、その軌跡は白光を帯びて広場を一気に横断した。
「……デモ?穏やかじゃないね!」
疾走の最中、イムノが振り向く。
圧縮された体感時間の中、彼女の眼には、驚きと動揺に固まる無数の顔が、スローモーションのように映っていた。
一方で、常の視力しか持たぬ者にとって、4人の動きは速すぎる。煙と怒号が充満する広場に、光の線と残像だけが刹那的に刻まれては消えていく。
「地下の王政って、案外……クチコミ1.8ぐらいか?」
2番手を飛ぶホットショットが、きりもみ回転で眼下の暴動を一瞥し、優雅に、そして嘲笑的に言った。
「なら、そろそろ星1レビューのお返し入れとこっか!はちる、ついてきて!」
イムノが即座に反転して地を蹴る。片手で軽々と振り回されたガンブレードが、後方から迫りくるビーム弾の数々を弾き返した。
その刹那、スヌープキャットは人間大の弾丸と化して真横へ跳ぶ。
「う~っ、にゃァッッ!!」
停車中の装甲車に拳を叩き込み、衝撃でブリキ缶のように押し潰す。間近で炸裂した衝撃波に巻き込まれた警備隊は、立ち上がるなり蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「じゃ、先行くわ!」
「任せた!」
混乱の渦を脇目に、ホットショットとミーティスはマクロブランク救出の任務を継続する。アイコンタクトでで意思を交わし、本来の進路の先へと猛然と消えていった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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