issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 05 10
……読者諸君はまず、この、果てさえ定かではない広大な天地が、地下に存在するという事実を信じなければならない。
天を仰げば、そこにあるのは青空でもなければ山々の稜線でもない。視界の上半分を占めるのは、色調の変化に乏しい一枚岩の天蓋――ときおり、雲ともスモッグともつかないものに全体像をけぶらせる、
信じがたいほど巨大なダクトの口を挟みながら、延々と続いていく岩盤の天井だ。
そしてそれこそが、この世界の在り処を告げる最大の証拠にほかならない。ここは地殻の深層、地表から数10km地点に築かれた、完全に閉じたドーム構造の隔絶領域だった。
テラリアの首都「ラバシティ」は、そうした極限環境の只中にある。
その全景は、8等分された巨大なピザを連想させる。
この都市では大地そのものが建材であり、人為的に穿たれた深い断層が、円盤状の地形を扇形に分割していた。
そして、この断層こそが都市の生命線――灼熱の溶岩を8方向へ等しく分配するために設計された、炎の動脈でありその上層には、6000万の人口の滞りなき交通を保証するべく、排熱管と一体化した鋼鉄のアーチ橋が、可能なかぎり張り巡らされている。
すべての溶岩の源泉たる中心部には、テラリアキングの居城にして熔融炉塔が鎮座する。軍艦の艦橋を彷彿とさせる、この全高2kmを超す炉塔の各層には、都市の全方位から集結した無数のパイプラインが、急な角度で天へとつまみ上げられ、捻りを加えられながら接続されていく。その全体像は、産業技術の暴走が生んだ前衛彫刻とも呼ぶべき、異様な機構美に満ちていた。
断層で区切られた扇形の各セクターは、「第1溶鉱区」から「第8製錬区」までの名を持ち、そこには全鉄製の施設や住居、鋼骨の高層建築群が、強迫的なまでの密度で林立している。それは、造形へのこだわりが行き過ぎた、機械仕掛けのミニチュア都市の悪夢的な拡大投影だった。
都市の防御と隔絶を担う外周防壁は、高さ100mを超え、その表面には戦車装甲を思わせる継ぎ目やリベットが、途切れなく、呼吸しているかのように並ぶ。このピザ状の都市基盤とダム状の壁面は、同様の形式で拡張を重ね、いまや第3次段階にまで至っていた。
そして、この防壁の弧と人造断層の交点――全24箇所に設置された超高炉群が、常時、マグマの呼気を含んだ高温のガスを天蓋へ向けて圧送している。
鋳鉄を積層した重層のタワーは、都市の生体機能のごと
く息を吐き、熱を放ち、塵を空に撒き散らす。その激しい脈動が、空間を常に煤でよごし、陽炎で視界を歪ませて、炉塔の壁面に浮かぶ発光文字は、作業の現在活発な区域や都市の気温を刻々と更新し続けていた。
この都市は、もはやひとつの超構造的な内燃機関そのものだ。
そこに暮らす住民もまた、その歯車に組み込まれた、血流の1滴にすぎないのかもしれない。
……地下帝国の首都を覆う茶色の空、壺中の天地を形成していた岩盤――その一角が、不自然なほど急激に膨れ上がり、瞬時にして裂けた。
粉じんと砕石が淡く混じり合いながら弾け飛ぶ裂け目から、スヌープキャットが拳を前に突き出したまま現れる。
「――ええっ!?」
その顔には、次に用意していた一撃が不発に終わったことへの、純粋な驚きが浮かんでいた。飛び出した勢いのまま、彼女は不本意に身体をしなやかに1回転させる。
その直後、後続の3人も一斉に坑道の闇から、まるで栓を抜かれたように吸い出されてくる。
閉塞した坑道の暑苦しい圧迫感が、一瞬で霧散する。
4人の身体は、想像を絶する輝度と熱気に満ちた地下都市の空へ、爆発的に放出された。
「備えろ!」
ホットショットが全身に炎をまとい、姉妹たちとは別の軌道を描いて即座に離脱する。
その飛び立ちは急ぎだったこともあってはじめは不安定だったが、近くを巡回していた無人
フライングプラットフォーム群の真正面へと狙い通り収束していく。
彼女の放つ火弾が礫となって敵の進路に浴びせられれば、
都市の遠景に、花火のような破裂音がいくつも響き渡り、
小さな爆発の痕が点々と刻まれていった。
風を裂く衣服の音。落下する3人の身体。加速度的に移り変わる視界。
――そして、その自由落下の航跡めがけて、各方面から敵機の編隊が次々と合流し、突入してくる。
「……おせちぃ!」
先に落下していたミーティスが、かき乱れる髪の合間から赤い瞳を輝かせ、上に向かって叫んだ。
「はいはい、当番ね!」
風に煽られるカーディガンを巻き込みつつ、イムノはのっそりと身を反転させる。直後から斉射されるビーム弾を、眼球の凄まじい反復運動に合わせ、信じがたい速さの剣捌きでことごとく弾き返していった。時には敵の装甲へ、定規ほどの太さの光線を直接跳ね返しながら、3人をまとめて強引に地面へと着地させる。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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