Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 01 14
いまや紙くずと呼ぶ方が実態に近い鉄の飛翔体は、寺院の敷地をはるかに逸れ、とおく杉山の中腹へと吸い込まれていく。
「下ごしらえはしといたからー! おせち、あとの調理は任せたよ!」
はちるの目の先、”殴り飛ばしたモノ”の落下予定地点――崖肌がむき出しとなり、風化した岩盤に横縞の模様が走るその一角に、
ひとつの孤影が、まるで風に紛れるように佇んでいた。
「う~ん。なんか“あり合わせ”な気がするなぁ、私のテスト」
その声音に、際立った抑揚はない。ただ、ほんのわずか、機嫌を損ねた少女の気まぐれが含まれていた。
吉濱おせちは、象徴的に裾を引くカーディガンの袖から両手を抜き、懐手のまま、畳んだ指先を口元に当てている。
その左腰に吊られているのは、銃とも剣ともつかぬ奇妙な兵器だ。現代風のレザーシースに納められたその1振りは、まるで武者絵に描かれていても違和感のない風体で、風雅に閂差しにされている。
湾曲した黒樹脂の柄、無骨なリボルバーシリンダー、そしてトリガーやトリガーガードといった各所の機構は、陽の光にあまねく照らされることで、特に輪郭の上辺において線がやや白みを帯び、
まるで実像から浮かび上がっているかのように見えた。
しかしこの、「ガンブレード」という武器の核心はなお鞘の奥に秘められたままである。
少女は、迫りくる試練にまっすぐ目を向けながら、静かにその刻を待ち受けていた。
「……お前の出番じゃ!!”イムノ”!」
母の檄が届けば、この乗り気でない少女の瞳を、光の弧が端から端まで鮮やかに駆け抜けていった。
眼差しの奥で戦士の意志が燃え上がり、烈しく輝きだしたのだ。
刹那、呼ばれた名に応じるようにイムノは、
佩いたダンビラの刃物を、銀の残像を残すのみの速さで抜き放った。
その動作は筆の舞のごとく。下から上へと空を斬り上げる一閃は、「∞」の軌跡を空中に刻み、風を殺伐と唸らせた。
信じがたいことに、まるでヌンチャクや片手剣を操るかの如く、学生服の剣士は巨大な刃を肘から先だけで自在に振るう。
「ソイルっ……」
小さく、だが心の奥からにじむように、少女は聞き慣れぬ言葉を呟いた。それは祈りか、呪文か、あるいは彼女だけの誓いだろうか。
空いたもう一方の手が腰のポケットを滑れば、指の間には細長いガラス瓶が1本、忽然と現れる。
瓶の中では、淡く発光するような黄色の粉末が揺らめいていた。
親指の軽いはじきで瓶を宙に放つと、次の瞬間、イムノは迷いなくガンブレードに両手を添えた。
関節じかけの巨大なヒンジが開き、重厚な機構音とともに、刃はふたつ折りに畳まれていく。
宙を舞うガラス瓶は、まるで導かれるように、剥き出しになったリボルバーシリンダーへと吸い込まれ、正確に装填位置に収まった。
指の腹が瓶の底をかるく撫でるのは、最小限の仕上げにすぎない。豪快に銃身を引き戻し、流れの中で撃鉄を起こすと、制服の剣士は粛然と身を丸め、まるで餌をついばむ鳥が高く尾をかかげるように、刃筋を極端な角度で構えた。
誇張された居合の姿勢から、剣先のわずかの揺らぎさえもついに取り払われる。
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