issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 04 07
……大型昇降機の震えがゆっくりと収まり、重い扉が左右に開く。
扉の先には、思いも寄らぬ光景が広がっていた。見渡す限りの薄緑色の草原。
そよ風がその上を撫で、生命の息吹そのものが満ちる広大な空間。
そこは、地下帝国テラリアが発見した新領域、「緑の空洞」。高さ数10kmに及ぶ大空洞でありながら、その隅々までが柔らかな自然光に満たされ、湿気を帯びた空気が肌を優しく包み込む。招かれた各国の技術者や代表団は、足を踏み入れるなり息を呑み、その非現実的なスケールに圧倒されて言葉を失った。
「これが……地下……?」
誰かが、呆然と呟く。
案内役のテラリア兵は、その問いに応じるでもなく、一言も発することなく、ただ視線と手先のわずかな動きだけで一行を先導していく。
やがて一行は、黒いパネルの舗装地に辿り着いた。未来的な意匠のその場所は、さながら空母の甲板を思わせ、蛍光色の縁取りが幾筋も走っている。
広く開けた中央部には座席が整然と並び、その前方には、光子の霧で編まれたかのような球状のホログラム・スクリーンが鎮座していた。スクリーンはすでに起動しており、「緑の空洞」の空間構造と、太平洋プレートとの位置関係を、壮大な立体映像として描き出している。
そして、その中央に立つ影があった。
バイカースタイルの衣服に身を包んだ、ひどく小柄ながらも屈強な老人が、まっすぐに来訪者たちを見据えているのだ。
地下帝国の元首、テラリアキングである。
「ようこそお集まりいただきました、地上の諸国の皆さん――」
低くひびく声が、またたく間に広間の空気を支配する。
「――我が方の招待に快く応じてくださり感謝いたします。今回初めて顔を合わせる国も多いでしょうが……まずは、どうぞご着席を」
促されるまま、特使たちは列を成して腰を下ろす。テラリアキングはその1人1人を、サングラスの奥の
鷹のような視線で値踏みするように見つめていた。聞き取れぬほどの小声で側近に指示を与える。
やがて、列席者の中から1人の男性が静かに立ち上がった。
「陛下。まず、この度の歴史的な場へのお招きに、我が国を代表し、心より感謝を申し上げます――」
老練な外交官であるその大使は、テラリアキングに深く一礼した。その声は穏やかだが、
広間の隅々まで明瞭に響き渡る。
「――貴国より賜りました招待状には、『新たに発見されたこの領域について、南極条約と同様の国際的枠組みを想定し、その過程として各国の意見を伺いたい。ゆえに現地において協議を行いたい』との、極めて先進的なご提案が記されておりました。その崇高な理念に対し、我々は深甚なる敬意を表するものであります――」
大使はそこで言葉を切り、ゆっくりと視線を球状のホログラムへ移した。その瞳の奥には、老獪な探求心の色が潜んでいる。
「――しかしながら、今われわれの眼前に広がるこの空間の壮大さ、そしてその地政学的価値を鑑みますに、本会談の主旨が単なる環境調査や友好的な意見交換にとどまらぬことは、もはや明白かと――」
声の調子がわずかに沈む。それは、相手への圧力と敬意を絶妙に織り交ぜた、熟練の外交官ならではの響きだった。
「――つきましては僭越ながらお尋ねいたします。……貴国が真に提示されんとする議題は、
今なお、あの招待状に記された理念の延長線上にあると……そう解釈してよろしいのでございましょうか?」
問い詰めるとも探るともつかぬその声に、テラリアキングは口元をわずかに歪めた。返答はない。
だが、その笑みに籠もる何かが、広間の空気をさらに引き締める。
「地上人といえど、中にはずいぶん察しの良い方もいらっしゃるようだ。
――ならば、隠しておく理由もありますまい。
事前にお伝えした通り、計算上、この空洞の総容積は地球の全海洋を上回ります――」
地底帝国の君主は、自分の言い分のみを淡々と伝えていく。
「――そして頭上に広がる岩盤の厚みは、太平洋海底からわずか13.2kmしかない。もしここに亀裂が生じれば――上層の海は一気に流れ込み、地上へ回帰することなく、この空間に吸い尽くされるでしょう。その結果、地表からは海という存在そのものが消滅します。そして、我々の技術はこの岩盤を容易に掘削できるのです――」
場内の空気が、鉛を溶かして流し込んだかのように重く沈んだ。各国の地質学者や技術者たちは、互いの顔に驚愕と疑念を探りながら、声もなく相手の出方を窺っている。テラリアキングの言葉は、単なる虚勢と切り捨てるにはあまりに具体的で、その声音には揺るぎない確信が宿っていた。
「――疑わしければ、ご自身の眼で存分に確かめていただきたい。そのために諸君は機材を携えて来られたのであろう?よろしい、どうぞ心ゆくまで調査なさるがいい。我らは一切、妨げるつもりはない」
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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