issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 04 03
……地下の大空洞に、ひときわゆるやかな勾配を描く広大な丘が横たわっていた。他すべての地域と同様に草が一面を覆い、湿った呼気のように時おり淡く発光するこの地形は、空洞の中でも特に安定した地盤をもち、かつ周囲からの見通しにも優れていたことから、装置の建造地点として選定された。
建造された装置のうち、粒子加速器に相当する環状構造は、直径数100mにおよぶ巨大な機械回廊で構成されており、その外周の3分の2は地上に露出している。構造体の外装には、光を反射する金属板が等間隔に並べられ、天井パネルを支えるアーチ状の補強フレームが、丘の輪郭に沿って蛇の肋骨のように延々と連なっていた。
ただし、装置の要ともいえる“ゲート”の正面部分、すなわち転送対象を受け入れ、送り出すための部分と
相対する箇所だけは、物流の効率化のため、丘の内部に埋設されている。
卓上鏡の形をした装置の中枢部は、全体構造の中でもひときわ異様な存在感を放っていた。
丘の一角に、まるで何かの象徴であるかのようにそそり立つそれは、直径150mを優に超える巨大な円環であり、起動前は、細密に組まれた「枠組み」だけが、寡黙にそこへ存在しているにすぎない。
だが、ひとたびエネルギーが通電すると、そこには不可思議な変化が起こる。
無のはずの中央領域に、突如として異世界の光景が鏡面めいて立ち現れるのだ。
その外郭には、光学センサーや回転式の支持機構といった装置群が幾重にも折り重なり、
機能美と異様さが同居する、工学上の芸術性を見せつけていた。
この機械の全貌は、観る者にある種の奇怪な印象を与える。
粒子加速器を基盤としながらも、そこにはまさに聖堂の宗教的な威厳が宿っており、
しかも、子供が「近未来」なる観念に対し率直に思い描く類の、想像の産物そのものでもあった。
名もなき丘、その頂上、そこに息づくのは、まさしく、理知の果てに構築された境界技術の祭壇なのだ。
装置の基部に据えられたコンソール群には、4つの影――シャカゾンビ、プロディジー、ハヴォック、そしてカーディB――の姿があった。
それぞれが別個の端末に向かい、定められた手順を黙々と遂行している。
「電磁封鎖フィールド、スタンバイ……フランジリング照射、マイクロ秒単位で完了……チャンネル探索、開始」
シャカゾンビの低い声が、アルプスの山麓を思わせるほど清涼な大地に、抑揚なく淡々と響きわたる。
この時、ゲートの円環部にも、無数のチャンネルリストがまとめ上げられた姿が、立体映像として立ち上がっているのだが、既知宇宙の系統樹はあまりに複雑怪奇で、見るだけで眩暈をもよおすようなものだった。
「接続よし。開くぞ……まずは干渉圏における最寄のレイヤー、A-1を走査」
シャカゾンビがレバーを倒すと、円環内の空間がゆらりと歪む。
遠くまで響きわたる駆動音にあわせて、艶をまとった流動面が突如として浮かび上がり、
見る間に中心部を満たしてゆく。
「すげー、こんなふうに動くんだ!」
「何が見えるかな!?なっ!?」
プロディジーとハヴォックが、作業をする手を止めてその新鮮な光景にしばらく見入る。
――次の瞬間、事態は一変した。ゲート中央に生まれた流動面が、まるで生き物のように脈動し、膨れ上がったのだ。彼らが見たのは、その白く半透明な膜が、内からの圧力に耐えきれず一息に破裂する光景だった。
――バシャァンッ!
甲高い音とともに、異常な圧を帯びた水の塊がゲートの口から弾け出した。
奔流は、丘の斜面を獣のように駆け下った。みずからの勢いで純白のドレープを幾重にも刻みながら、
飛沫という無数の宝玉を惜しげもなく撒き散らしていく。
透明度が高く、そして暴力的な流れの中には、金銀の縞模様の魚や薄緑色に発光するイカ、さらに見たこともない甲殻生物が混ざり合って、回転しながら押し流されていく。
水と共に吐き出された生物たちは、岩肌にぶつかっては跳ね、坂を転がり落ちて外れ、やがて草むらの上で跳ね飛び続けた。その湿った轟きが、丘全体に低く反響し続ける。
この光景を目の当たりにしたシャカゾンビは、反射的にレバーを引き下げ、
「……ふむ」
息を漏らしながら宇宙間の接続を冷然と断ち切った。
その顔面にちょうど、アジによく似た魚の尾びれが音を立てて貼りつく。無表情のまま手でそれを払い落とすと、彼は淡々と問いを放った。
「向こうの地球の公転軌道、地磁気、座標……すべて正しくトレースできていたのか?」
「はっ、はいっ! 指示どおりの入力で!」
おなじく、ぬれねずみになって眉をひそめるハヴォックが、あわてて応じる。
「……そうか。ならば水圧の高さと生態分布から見て、これは海洋惑星として成立してしまった地球だな。
――いきなりこの有様では、先が思いやられる」
その時、地面を滑ってきたイカがプロディジーの足元で跳ね上がった。彼は無言のまま顔をしかめ、軽く蹴り払った。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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