issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 04 01
CHAPTER 4
遠くには、赤茶けた斑の岩肌をところどころ覗かせつつも、全体としては深い緑にほぼ呑まれたメサやビュートの山々が並び立っている。
その手前、パステルカラーをした緑の低草に覆われた丘の中腹で、赤い花が風に揺れていた。それはまるでひとひらの幻のように。シャカゾンビはその花弁に興味深そうに指をのばし、そっと撫でた。質感と色彩を、わずかに確かめる仕草だった。
彼のすぐ傍らには、白い円卓と椅子、日傘がしつらえられた、簡素ながらも洗練された一角があった。そこでテラリアキングは、まるでビーチチェアの傾斜に身をゆだねるかのように腰を大きくずらし、投げやりな姿勢で座っている。その姿には、紛れもない疲労感が漂っていた。
「フゥン、地下世界にこんな風光明媚な場所があるとはな。草もある、山もある、モンシロチョウも飛んでいる――それも桃色のだ。風さえ渡っている。
……そしてそもそもの話、この空間はどうしてこんなにも光り輝いている?太陽もないというのにな」
「最近発見されたばかりの領域だぁ……。調査を進めてわかったんだが、ここの真上が太平洋のど真ん中でな。空洞と海底のあいだの岩盤がそこそこ薄い。もしひとつでも穴が空けば、そっから『ドバ!』っていくわけだ。世界中の海が一気に――」
「――それで俺は、地上世界に脅しをかけてやろうと思ってたのさ。『言うこと聞かなきゃ、海の水全部抜くぞ』ってな。あの『イーター・オブ・ワールド』って名前のワームを使って、岩盤に穴を開けるつもりで……それが、全部オジャンだ!!あのガキどものせいでなあ!!」
テラリアキングは拳を握りしめ、怒声とともに椅子の肘掛けを打ち鳴らした。
その悔恨は、誰に向けたものでもない。
それはまるで、酒に酔った者が時折発作のように繰り返す――いわゆる「くだを巻く」行為。
勢いこそあれ、肝心の熱量はとうに抜け落ちたただの発作だった。
「……なるほど」
シャカゾンビは感情の起伏も見せず、ただ頷く。
「……参ったなぁ、どうしたもんか」
かつて蛇蝎山に轟かせた覇気と威圧感は、もう、テラリアキングの声からは欠片ほども感じ取れなかった。代わりに聞かれたのは、長年の悪友に打ち明ける愚痴のような、どこか他愛なさすら含んだ語調だった。
しばらく沈黙が訪れたのち、テラリアキングはふと思い出したように腕に目を落とし、巻いていたデジタルウォッチのボタンを押す。……小さく解除音がした。
直後、シャカゾンビは掌を眼窩に当て、頭蓋骨の裏に仕込まれていた爆弾をサイコキネシスで引き剥がすように吸い寄せ、まじまじとそれを見た。
「……お前、なんで加勢に来なかったあそこで。好機はあっただろう?」
そう問うテラリアキングに、
「……好機?ハッ、そんなものはなかったな。『4人に増えたオールラウンダー』を、あれっぽっちの戦力でどうにかしようという恥知らずと組むことなどない。
そんな無謀な考えの行く末など火を見るより明らかだからな」
シャカゾンビはしばし視線を漂わせたのち、ゆっくりと応じた。
「チッ、わかってたなら言えよ……ハメやがって……」
テラリアキングは軽く舌打ちしてから、
「……でもよ、できればよォ――こないだのケンカ、アレやっぱ……『酔ってやった』ってことになんねぇかな……?」
ふと項を垂れ、芝を一瞥してこぼす。
「酔っていようが、やったことはやったことだろう」
「……うぅん、それもそうか」
納得でもため息でもある声が、花の咲いた丘に、そよ風とともに吸い込まれていった。
「しかしだ――あの巨大なワーム、だいぶ改造を施してはいたようだったが、一応アレも生物の範疇に収まるものなのだろう?フン、ならばまた育てればいいはずではないのか?」
とシャカゾンビが聞く。
「その通りなんだが、育成が難しい。あのサイズとなると生半可な日数じゃそもそも育たねぇ」
( フゥム、ようやく願ったりかなったりの状況になってきたな……)
瞬間、シャカゾンビの石灰質の脳細胞が、活性の兆しをしめす。
「……なら、吾輩ならやってなれないこともない」
「なんだと?」
テラリアキングが、むっくりと椅子から身を起こす。
「ただし、成功報酬には地球のコアが直接作り出すというあの超稀少金属……ハート・オブ・アースを1トン要求する」
「それは……!」
テラリアキングはすぐさま息を呑んだ。
「……仕方ねえ、背に腹は代えられねぇ。マジで策があるってんならな。……聞かせろよ!」
しかし、結局おおきな戸惑いは見せずにそう答える。
応じるかのように、シャカゾンビはマントを翻して丘をゆるゆると歩きはじめる。
「……ヒヒィ、いいだろう。かつて吾輩は、高度に発達した星間文明と個人的な取引を交わしたことがある。
向こうにとって未知であった魔法や錬金術の知識を授けたところ、見返りとして得たのが――今でいう『マルチバース』を連結する技術だ。
あれは産業革命よりもはるか以前の話でな、当時は持て余すしかなかった代物だった。
だが、今や時代は21世紀も半ば。建造に不可欠な技術も、エキゾチック物質も、すでに必要量は揃っている。
そのゲートを通じて、ワームを、望むだけこの世界に引き寄せてやろう」
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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