issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 24
一方その頃――。
ブルジュ・ハリファも、あたりの建物も丸ごと薙ぎ払われた、その跡地。
瓦礫と鉄骨が積み上がる焦土の歩道脇に、1台の古びたキッチンカーがかろうじて無傷で停まっていた。不意に、そのヘッドライトが灯る。
運転席にはひとつの人影。リクライニングシートを限界まで倒し、寝そべるような姿勢のまま、その影は突如として饒舌に語り始めた。
「テラリアキングよ、進捗はいかがかな?」
それは独白に見せかけた、明確な通信。がらんどうの頭蓋から発せられた声が、どこか遠くの敗者へと届けられる。
「貴様が吾輩の体に付けた爆弾――まさか爆発するだけが能ではあるまい。こちらの位置情報も、会話も、すべて筒抜けだと承知の上で、こうして独り言をくれてやっているのだ――」
「――つまり吾輩は――吾輩自身を模したロボットを交渉の場に赴かせた。その観測座標から完全に外れぬ範囲に、始終身を潜めていたというわけよ。それこそが、今なおこの身が無事である“手品”の全容だ」
シャカゾンビの飄々とした声音には、勝利を確信していた者の余裕が滲む。
「まったく、何日ものあいだ、筆談で本当の指示を飛ばしつつ、口先で即興の劇を演じ続けるのは、なかなかに骨の折れる仕事だったぞ。骸骨だけにな、ヒヒヒ!……そうだとも。たしかに吾輩は貴様を出し抜いた。だが、ここで感情に任せて爆弾のスイッチを押すなどという、浅はかな真似はするなよ――」
「――何しろ、貴様らテラリアンがガキどもを引きつけてくれたおかげで、吾輩の部下は朝の散歩のごとくCERNを襲撃し、1000億ドルなど軽く超える価値の物質を、易々と手に入れることができたのだからな」
*
時はややさかのぼる。
場所はスイス・ジュネーヴ。欧州最大の素粒子物理学研究所『CERN』の構内では、すでに、警報がひっきりなしに鳴り響いていた。
赤色灯のフラッシュがコンクリートの壁面を染めるなか、粒子加速器の長大な回廊に現れたのは、黒翼の外套のようにはためかせる1羽の鳥類――カーディBだった。
その背後には、テラースクワッドが誇る2人の戦士、プロディジーとハヴォックが控える。
足元には、足元には警備ドロイドの残骸が散乱し、焼け焦げた金属から白煙が立ちのぼっていた。
「いいか、何度も言うけどな、今日だけは――絶ッッッ対に間抜けはするなよ!エキゾチック物・質、なんだぞ!?シクったらこのスイスごと跡形もなく吹っ飛ぶかもしれないんだからな!」
裏返ったカラスの声が、コンクリートの厚壁を貫かんばかりに響く。
「わかってるって!」
「まったくよ、『今日だけは』ってな、そのセリフ今日だけで24時間分は聞いたぜ?」
ふたりの応答にもカーディBは疑いの目を光らせていたが――その目前で、隔壁に護られた保管庫が慎重に解錠される。ステンレス製のエアロックがスライドし、警戒区域へと接続されたシリンダー式の携行容器が、わずかに青白く冷たい光を帯びて姿を現す。
「……問題なし。確保完了だ」
容器の係止フックを外したプロディジーが、汗のにじむ額をぬぐいながら、淡々と報告する。
その頃には施設内の警備網は完全に沈黙し、通路の奥には、
非常灯に照らされて逃げ惑う研究員たちの背中がちらつくだけだった。
……シャカゾンビの独白は、なおも続く。
その口ぶりはまるで舞台俳優の朗読のように流麗で、過剰なまでの演出をまとっていた。
「これだけの損失が軍に出てしまった以上、そちらも今や1銭でも多くの金が欲しいはずだ。
単なる国庫の肥やしではなくてな。では――お互い紳士的な態度を保ったまま、次は地下で、ゆっくりと交渉のテーブルにつこうではないか」
ほんの1拍ののち、シャカゾンビの頭蓋内に、通信開始を知らせる低いノイズが響いた。
続いたのは、疲労と苦悶に満ちた、くぐもった声だった。
「……わかった、爆弾は解除してやる。話がしたいから、すぐ地下に来い。迎えをよこす」
テラリアキングの声音が、頭骨に直接届いた。その声には、敗北を噛みしめる者の苦悶がはっきりと浮かんでいた。
「ヒハハ――そうこなくては」
シャカゾンビは、あくまで意地悪く笑う。
やがて、スライドドアの開くキッチンカーから、ゆっくりとその影が姿を現す。
まるでリムジンからレッドカーペットへと、ハイヒールの鋭い踵に任せた高飛車な1歩目を踏み出す女優のように、
過剰なまでの間合いと気取りを込めて――甲冑に包まれた片足が、コンクリートにそっと下ろされた。
続くもう1歩は、すでに劇の主役として舞台に立つ者の足取りだ。
シャカゾンビは闇を背負い、みずからが世界の中心であるとでも言わんばかりに、ゆったりとケープを翻した。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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