issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 23
格好をつけたのも束の間のことである、眼前に急速に広がっていく巨大な影。
50万tの鉄とコンクリートの塊が、よりにもよって自分の真上へ倒れてくるという、単純かつ致命的な事実に、彼女はようやく思い至った。
「……あっ、やばいっ!」
先ほどの勇姿はどこへやら、逃げるカエルのような跳躍で、イムノは命からがらその場を離脱した。
……だが、その効果は覿面だった。イムノの一閃に切り裂かれ、ミーティスの霊符に爆破され、骨組みも心臓部も断たれたブルジュ・ハリファはついに、その巨体に絡みつくワームごと、ゆっくりと、しかし確約された終焉へと向かって、傾き始めたのだった。
この異変にもっとも衝撃を受けたのは、
「……なにぃッ!」
他ならぬテラリアキングだった。わけも分からぬまま、世界の全てが急速に横倒しになっていく。
「……じゃあねっ!」
一方、スヌープキャットはすべてを知る者であり、戦場を離脱する好機を逃さない。
ワームの装甲から軽やかに身をひるがえすと、夜空へ鋭く跳躍し、元はビル街だった都市の闇へと姿を消した。
「まさかっ、謀られたのか!?」
その一瞬の叫びも、かたむく景色と共に虚空へ滑り落ちていく。直後からテラリアキングはたったひとつの感覚とだけ戦うことになる。それは抵抗しがたい重力感だ――。
……倒壊というには、それはあまりにも堂々たる運動だった。
1km弱にもなる長さの鉄骨とガラス、そして広大な空間を内包した構造体が、地球の引力に身を委ね、長大な時間をかけてその姿勢を崩していく。
下敷きとなるワームの頭部は、抵抗するように空中でよじれる。だが、みずからの巨体がビルに作り上げた戒めを解くには、時間があまりにも足りない。地底産の怪物は、自壊しだす膨大な質量の壁に押し潰され、噴火のように吹き上がる砂煙の中で、のたうち、崩れ、そして完全に飲み込まれていった。
スォオオオオオオオン!
――大地が震撼した。
都市全体が膝をついたかのような衝撃が大気を震わせ、
倒壊の中心から巻き起こる熱風と瓦礫、鉄の嵐がすべてを呑み込んだ。
砂塵の漂うなか、砕け散った鋼鉄の残響が、いつまでも耳の奥にこだましていた。
空中を旋回しながら急降下してきたホットショットは、吸引力を失い、無力に開かれたままになった
ワームの口を正面から捉える。その身に纏う炎を風になびかせ、一気に突入を図った。
「ギィッ――!」
だが――間一髪、ワームは最後の抵抗とばかりに巨大な顎門を閉ざす。牙はまるで岩盤の断層が噛み合うような勢いで重なり、激しい衝突音と共に火花を散らした。
「ゲッッッ、まだ息があったのかっっ!?」
空中で強引に進路を変えようとしたホットショットの背後から、別の影が躍り出る。その瞬間、ワームの牙が生み出すクレーターに亀裂が走り、隅から隅までが陥没した。スヌープキャットの渾身の一撃が、天からの判決のように下されたのだ。
「……お代はラヴで結構!」
得意げに鼻をこすってみせたスヌープキャットとホットショットが、走者を替えながら空中でハイタッチを決める――その鮮烈な一瞬。
直後、ユキヒョウの少女は、極超音速で真横をすり抜ける炎の塊を見送るように振り返り、親指を立てた。
「これからこのグロい穴に飛び込んでいくアシュリー先生に、応援のお便りを送ろう!」
粉砕された歯の破片が舞い散る中、ホットショットは明朗な叫びを残して洞内へと突入する。その身体は、単調な傾斜を帯びたワームの体内をなぞるように、深淵へと吸い込まれていった。
ワームの体内は、生ける金属のトンネルだった。管腔の壁に無数のシリンダーが密生し、管路が網の目のように交錯する。その中心に、異様な存在感を放つ機械の炉心が鎮座していた。白熱する炉心の高鳴りに合わせ、空間そのものが緩やかに拍動しているのだ。
「おまえ、核融合仲間だったのか……!」
ホットショットは溜め息まじりに呟いた。
直後、霊的な核融合炉たる焔の少女は、目前の炉心へ呆れたように掌を差し伸べ、
火花の渦巻くチャージ弾を矢継ぎ早に叩き込む。衝撃に炉心は断裂し、内部から臓腑めいた電磁部品と光粒子が激しく噴出した。
その爆発は、単なる破壊を超越していた。急速に膨張するエネルギーが体腔のすべてを押し広げ、飽和させていく。そして――世界を喰らう魔性の環形生物の体躯から立ち昇ったのは、圧倒的なキノコ雲。それは、かつてのブルジュ・ハリファをかるく凌駕し、天を衝く威容を誇った。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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