issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 22
「……よし、ミスター“ボブ・マーリー”!今日は最高の対バンにしような?」
きざな宣戦布告と共に、ホットショットは一気に加速。ワームの背に林立する、ドレッドヘアーめいた無数のシリンダー群へ、雨あられと爆撃を叩き込んでいく。連鎖する炸裂が鋼鉄の鱗を弾き飛ばし、内部構造へ熱と衝撃の楔を打ち込 んだ。その振動はワームの全身を駆け巡り、頭頂部で繰り広げられる格闘戦の舞台までもを激しく揺るがす。
「くそうっ!」
足元から突き上げる衝撃に、キングの体勢がわずかに泳ぐ。スヌープキャットはその隙を逃さない。
「がううっ!」
男の拳を潜り抜け、懐へ飛び込むと、腹部へ獣のような連打を叩き込む。マグマの身体が粘液のようにたわみ、熱い飛沫を散らした。
だがキングも即座に反撃し、頭上から溶岩の拳をハンマーのように振り下ろす。スヌープキャットはバックステップで回避するが、その動きすら、ホットショットの爆撃が生むワームの身じろぎに操られているかのようだ。
2人の格闘は、いまや爆発という名のビートに無理やり踊らされていた。
狼狽を隠せないキングは、背中の“痛み”を振り払おうと空へ首を振り、そのたびに頭上の2人の戦闘はさらに苛烈さを増していく。
「……ああっ!」
突如、テラリアキングが眼前の戦闘とは無関係に声を上げた。その視線は、下方のブルジュ・ハリファに向けられている。
「まさか、あとの2人まで登ってくる気か!!」
裏拳でスヌープキャットの突進を乱暴に払い除け、彼は敵の真の狙いに気づいた。
「ようやく気付いたか!」
その声に応じるように、ホットショットが支援に飛び込んできた。溶岩の魔人は即座に目標を切り替え、彼女へ向けて拳を振るう。ホットショットはそれを紙一重で回避し、ゼロ距離からエネルギー弾を2発、男の上半身に叩き込んだ。
爆発に悶えるその隙を突き、スヌープキャットが背後から鋭い蹴りを放つが、キングは振り返りもせず、その足首を正確に掴み取る。
だが、2人は怯まない。掴まれた足を軸にスヌープキャットは身を翻して回し蹴りを放ち、
ホットショットは休む間もなく追撃の弾を浴びせかける。あたかも男兄弟のように荒削りだが、息の合った連携。圧倒的なチームワークで仕掛ける2対1の激しい肉弾戦が、巨大なワームの背で繰り広げられた。
戦闘の激しさに比例し、キングの内なる動揺は、ワームの狂乱となって現れる。高層ビル群に巻き付いた巨体は、獲物を探す大蛇のように、絶えず上空へ旋回を繰り返す。
前後の敵に対応しようとする焦りが、支配下にある巨躯までも連動して右往左往させ、
制御の軸を乱していく。その不安定な挙動こそ、
まさしくイムノが描いた設計図の、完璧な実現に他ならなかった。
*
地上の大通りを時速数100kmで疾走しながら、イムノは口元に不敵な笑みを浮かべていた。
ふたりは比較的損壊のすくない都市区画を駆け抜ける。道中、ビル壁に張り付く機械化された巨大なナメクジや、散発的に現れる歩兵群を掃討しながら。
イムノが先陣を切り、両手のガンブレードを構えて疾走する。ビルの中腹から、空気を灼く高出力レーザーが放たれた。
彼女の姿が掻き消え、踏み抜かれたアスファルトの破片だけが宙に残る。次の瞬間、イムノはすでにレーザーの眼前にいた。果断な跳躍とともに、真っ向からそれを迎え撃つ。
高貴な銀の輝きを放つ刃が光の奔流と衝突し、裂かれた光そのものから無数の火花が延々とほとばしった。レーザーを両断した勢いのまま、イムノは空中で身を翻す。そして、反応できずにいた生ける戦車を、そのまま斬り捨てた。
そのかたわらでは、ミーティスが霊符の奔流を街路に解き放ち、あらわれる敵すべてを爆炎で撹乱する。ふたりはその間隙を縫って、高速で突き進んだ。
ブルジュ・ハリファの根元に到達すると、2人は合図を交わし、勢いよく進路を分けた。ミーティスは、ワームの頭部が突き出す側とは反対の壁面へと迂回する。
彼女たちが向かうブルジュ・ハリファという建物は、単なる尖塔ではない。Y字状に広がる3つの翼棟が、中央の主塔を支えるように収束し、セットバックを繰り返しながら天へと伸びる、巨大な鍾乳石にも似た異形の建造物だ。
「せー、のっ!」
静かなかけ声に決意を乗せたミーティスは、人影のない、風の轟音だけが響く異様な道路へと、ドリフトを決めながらしゃがみ込みんでいき、その勢いを爆発的な跳躍へと転化する。
ビルの段差部に着地し、さらに後方へおおきく跳ね上がると、手にした霊符の大半を夜空へ解き放った。
散り散りになった呪符は、しかし広範囲のガラス面に吸い寄せられるように張り付き、不思議なほど整然とした陣形を成す。そして、すべての呪符が呼吸するように、淡い光を明滅させ始めた。
直後――連鎖的な自爆が始まる。出来物のような光がビルの低層部から次々と膨れ上がり、支柱の幾本かが轟音とともに弾け飛ぶ。構造体全体が、断末魔の如き軋みを上げながら、ゆっくりと傾いていった。
時を同じくして、ビルの反対側。アスファルトが常に砕かれるほどの速度で、ひとつの影が疾走していた。イムノだ。莫大な風圧にカーディガンを激しく波打たせながら、彼女は手首のスナップひとつでガンブレードのシリンダーをこともなげに弾き出す。
空薬莢が排出される小気味よい金属音。ポケットから取り出したレモン味のソイル弾を、寸分の狂いもなく3発、空いた薬室へと送り込んだ。
「いつもこればっかり品切れになるレモン味……美味しいからね、仕方ないよね!」
頬を緩ませて独りごちると、彼女は装填数と同じ数だけ引き金を引く。そして、巨大な交差点の中央で、その疾走をぴたりと止めた。
いや、止まったのではない。来るべき一撃のため、全運動エネルギーを内側へと極限まで圧縮したのだ。
宙に身を躍らせれば、アスファルトに落ちる影だけがその軌跡を追跡する。
頂点に達すると同時に、彼女は抜刀の構えへと移行した。それは居合の始動に似て、しかし殺意の密度は比較にすらならない。
印を結ぶような指の形が柄に添えられ、足は深く、蹲踞のごとく開かれる。上体はわずかに左へ捻られ、鞘尻は荒々しく内側を向く。
彼女の周囲に生まれた風が、カーディガンの裾を、異様なほど静かに翻した。
「ソイルッッッッ!!」
その絶叫は声からしてひとつの爆発であり、風の轟く都市の空気を一瞬だけ上書きする。そこからの急加速は、もはや通常の物理法則による記述を拒否した。彼女の速度は瞬間的に数1000倍にまで跳ね上がり、その姿はほとんど紫電の化身と化していたのだ。
帯電した刃が白熱の稲妻となって描線を引き、高さ800m超を誇るブルジュ・ハリファの巨大な土台を、バターのように、しかしそれよりもはるかに冒涜的な滑らかさで切り伏せていく。
刀を振り抜き、うつ伏せのまま片膝で着地した銃剣士の姿は、この宇宙の時系列の、
ずば抜けた途絶のつじつま合わせのようにして突然そこに姿を現しており、
その背後では、現代建築の奇跡が、焼き切られた断面を基点に、重力に抗うように、わずかに、しかし確かに浮きあがっていた。やがて訪れる崩壊の序曲として、巨塔は軋み、呻き、その身を震わせるのだった。
「当社の銃付き包丁、これ1本で調理から高層ビルの切断まで完璧対応!まさに現代人の味方です――ってね!」
イムノが即興のテレビショッピング風に締めくくった直後、ビルの反対側でミーティスの霊符が一斉に起爆した。遅れて届く轟音と爆炎が、彼女の前後の通りを高々とした波の姿で塞ぐ。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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