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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
issue#02 UNDERTALE

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issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 21

牙の内側――そこは、海王星の表層すらかるく凌駕する暴風が渦巻く、むき出しの圧力領域。上昇と下降の気流が絶えず衝突し、空気そのものが質量となって荒れ狂う、まさしく気圧の墓場だ。唯一の風防だった牙をみずから捨てた今、環境が放つすべての暴力が、何の緩衝もなく彼女の全身を打ち据える。


「……毛が剥がれるぅぅぅぅぅぅ!!!」


長い髪も雪色の体毛も、すべてが後方へ激しくなびき、身体ごと引き剥がされそうだ。彼女は両手両足の指を牙に深く食い込ませ、必死にその身を繋ぎ止める。


「裏に逃げたっていつまで耐えられるってハナシだぜ、んなもん!!……オラオラァー!!」


さらに、テラリアキングの手からは大仰な肉体の上下にあわせて断続的に溶岩弾が繰り出されており、

爆炎の光が牙の向こう側から差し込み、その影が裏側にまでちらつくたびに、

彼女の身体を灼いた。


歯を食いしばり、爪を喰い込ませたまま、

この強風と熱波の交錯する「死の通路」を、ただひたすらに進み続ける。今の彼女には、それ以外の選択肢は残されていないよう思われた。


「……おい、うちの末っ子いじめんな!」

しかしその怒声が響いた途端、はるか天空から飛来したホットショットのドロップキックが、ほとんど隕石の勢いでテラリアキングの脇腹を穿った。


「ごっっ……!!」

鈍い衝突音とともに炎とマグマがぶつかり合い、男の身体が大きくたわむ。口から灼熱の吐瀉物を撒き散らし、苦悶の声を上げる間もなく、その巨体はぐらりと軸を傾けた。


「――!」


その“上空の変事”を、スヌープキャットは全身の毛先で感じ取っていた。好機――ネコ科の双眸がするどく光る。即座に腰を落として力を溜め、牙の柱を爪先で蹴ると、まるで木を駆け上るネコのように、尋常ならざる速度で牙を裏から表へと螺旋状に駆け上がっていく。


頂点に達すると同時に、全脚力を込めて白い断崖を蹴り飛ばし、その反発力で天を衝く跳躍を敢行した。空間を斜めに切り裂き、未曽有の巨体を持つ環形の怪物の、さらにその上へ――。


「なにっ!?」


「……とりゃあああああああ!」


降り注ぐ拳が、マグマの胸に炸裂した。それは単なる打撃ではない。全身をバネのようにしならせ、回転の力をすべて乗せた会心の一撃だ。すさまじい衝撃波とともに、テラリアキングの流体ボディが溶けたガラスのように歪み、ワームとの連結部が悲鳴を上げて引き伸ばされる。張力の限界まで突き飛ばされ、彼の意識が、わずかながらも確実に揺らいだ。


大いなるバク宙の後、ブラックウィドウさながらのポーズで着地を決めたユキヒョウの少女。その隣に、燃え盛る炎の少女が音もなく滑り込んでくる。スヌープキャットは彼女を見やり、食ってかかった。


「……ちょっとアシュリー!いつウチが末っ子になったの!?」


「知らなかったのか?さなとお前の、その時々で情けない方が末っ子になるシステムだぞ」

ホットショットは、悪びれもせず肩をすくめてみせる。


「……ふ~ん!」


スヌープキャットはわずかに口を尖らせてそっぽを向くが、数秒後には振り返る。その瞳には、すでに次なる戦いへの決意が宿っていた。


「……でも、とにかくやる!ウチがアイツを抑えるから、アシュリーは排気口を壊して!」


語気を強めた声は、風を裂いて進むようにまっすぐだ。


「いい答えだ。それなら長女を任せてやる」

ホットショットが片眉をはね上げると、そのひと言にスヌープキャットの顔がぱあっと輝いた。


「――ああ、でもひとつだけ思ったこと言っとくな?」

だが、ホットショットはどこか遠い目をして続けた。


「なに?」

「私わかるんだけどさ。今日は“風”だったからよかったけど、お前多分この先、中性子星かブラックホールでも同じことやらされるぞ」


その言葉は、何の比喩でも冗談でもない、純粋な確信に満ちていた。


「……」


スヌープキャットは、一瞬、懸命に言葉の意味を咀嚼しようと試みる。すると脳内には、中性子星の表面に爪を立て――あるいは、ブラックホールの事象の地平面に張り付き、無限の重力に抗う自分の姿が、嫌でも鮮明に再生された。


ぷつり、と思考が途切れ、感情が抜け落ちた。

すぐに晒されたその顔は、死人すら真似し得ぬほど、無垢で空虚なものになっていた。


「…‥小癪なァ!」

そこへ意識を取り戻したテラリアキングが、怒声とともに殴りかかってきた。

だが、ホットショットは振り返りもせず、それより一瞬早く跳躍している。離陸ざまに背後へ放ったレーザーが、男の顔面で炸裂した。


「がアァッ……!」

爆炎に顔を覆われ、テラリアキングは身もだえる。加速のつけ際に、ホットショットはありったけの萌え声を置き土産にする。


「……じゃ、頑張ってねっ!お姉ちゃんっ♡」

赤い飛行軌道を描き、彼女はワームの背後へと巡航を開始した。


「……”お姉ちゃん”……悪くないカモおおおおお!!!!」

新たな境地に目覚めたスヌープキャットは、無防備なキングへ、ときめきを乗せた連撃を叩き込む。

その拳は、先ほどよりも明らかに鋭く、そして重かった。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

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