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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
issue#02 UNDERTALE

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issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 20

……最小限、だが最適解に近い突貫作戦が、その、雨にも風にも弱い会議場でひととおり

組み上がると、ホットショットは迷いなく脚に力を込め、風を割って高く跳ね上がった。

その身体は夜空の漆黒を突き破り、やがて1つの光点となって遠ざかっていく。


「おせちの計算、いつも狂ってるよぉ……!」

スヌープキャットは額を押さえ、しゃくり上げるように嘆いた。


「でもはちうにしかできないことからさ。がんばって!」

ミーティスが、励ましの気持ちを込めて精一杯の声を送る。


「ユキヒョウってさ、千尋の谷に子を突き落として育てるって言うじゃん? あれと同じだよ。愛と信頼の証ってやつ!」

イムノもまた、悪びれずに言葉を継いだ。


「それほぼ殺意だよ!!――」

尾毛は逆立ち、顔はくしゃくしゃ。唸るように呻きながら、獣人の少女は肩を震わせる。


「――ううぅ……絶対トラウマになるやつぅ……」

それでも、彼女は諦念と共に1歩を踏み出した。


「……でもしかたない、行ってくる!!――骨だけは拾ってね!!」

その絶叫を決意に変え、スヌープキャットは屋上の縁を力強く蹴り、自らの身を空へと投じた。暴風に逆らいながら、

その跳躍は一直線に、巨大な顎へと向かっていく。


「じゃ、こっちもいくよ、さな!」

「御意!」

それを見届け、残されたイムノとミーティスもまた、ビルの縁を蹴って夜空へと飛び出した。


スヌープキャットの跳び出しは、本来まっすぐなはずだった。


「……あぁん?」


だが、その飛来をワームの頭上から見下ろすテラリアキングが、ただ首を巡らせる。それだけで風向きは激変した。


「あっやばっ…………うわああああああああああ!!!!!」

悲鳴が渦を巻く。抗いがたい吸引力に軌道をねじ曲げられ、彼女の身体は制御を完全に失った。風に弄ばれる紙片のようにきりもみ回転しながら、巨大な顎の奥へと、一直線に吸い込まれていく。


外向きに並ぶ牙の列が、ギチギチと不吉な音を立てて迫る。


「なんとかなれーッ!」


そのただ中で、スヌープキャットはかろうじて下顎の牙の1本に指を食い込ませた。だが、掴んだそばから象牙質の表面がやすりのように削れ、白い粉となって喉の奥へと吸い込まれていく。


「……さすがにこれはムリィィィィ!!」

悲鳴を上げながらも、彼女は歯を食いしばった。ここは象牙色の絶壁。凹凸のほとんどない滑らかな曲面を、1手1手、命綱なしのクライマーのように慎重に登っていく。


さしものスヌープキャットでさえ、この極限状況下では、常人と何ら変わらぬ、遅々とした歩み

しか許されなかった。


だがその時、対岸の牙の稜線の先、歪んだ空の向こう側にテラリアキングがぬらりと姿を現した。溶解した鉱石の下半身を蠢かせ、はるか上方から、蟻のように牙を登る彼女を嘲笑うかのように見下ろしている。


「面白いやり方を思いついたもんだな!?ガキどもよ!」


地盤の突き上がる感覚が、スヌープキャットの足裏から体の芯へと駆け上がった。支えとしていた牙が――今、ゆっくりと、しかし確実に閉じ始めている。


「わっ、わっ……!」


彼女は即座に状況を理解した。このままでは丸呑みにされる。そうでなくとも、 │

続いて形成される牙の檻から逃れる術がなくなる。


だから彼女は、イチかバチかの賭けに出た。


全身の筋肉を、一瞬、極限まで収縮させる。


――解放。


次の瞬間、彼女は滑るのではなく、疾走していた。体の軸を牙の曲面と平行に保ったまま、横へ。

爪が象牙の壁を掻き、四肢が虫のように細かく駆動し、閉じていく顎の隙間という、ただ1点の光へ向かって。そして、弾き出されるように、彼女は口の外側へと飛び出した。


体の左右で、巨大な歯列が完全に噛み合う音がした。視界から口腔内の闇は消え、間一髪で死地を脱した彼女は、暴風の吹き荒れる牙の外壁に、逆さまのまま張り付いていた。

伝わってくる振動に耐え、荒い息をつきながらも、その瞳だけは、次なる1手を求め、みずからの股越しに上を見据えていた。


「はっはっは!」


その間抜けな逃走劇を、テラリアキングは高らかに嘲笑う。厚く盛り上がった両肩を引き、月を仰ぐほどに体を反らすと、両腕にすべての力を集約させ、深く、静かに力を溜めた。


「――はアぁッッ!!」


次の瞬間、交差させた掌から、溶岩と隕石の合いの子のような灼熱の塊が唸りを上げて連射される。白熱した外殻が空中で砕け、剥き出しのコアが尾を引きながら、流星群を遥かに凌ぐ苛烈な速度で、牙に張り付くスヌープキャットへと降り注いだ。


「し・ぬ・っっっ!」


首を絞められたニワトリのような悲鳴を上げ、彼女は再び同じ決断を迫られる。先ほどの機転を逆再生するかのように、牙の外壁を蹴って口腔内部へと飛び込んだ。


その直後、赤熱した噴石群が、ほんの今まで彼女がいた空間を轟音と共に舐め尽くした。


だが、その避難先が安息の地であるはずもなかった。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

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