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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
issue#02 UNDERTALE

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issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 18

塔を締め上げる胴体、特に頭部付近の菱形装甲が一斉にせり上がり、なかばまで剥離していく。そこから露出したのは、大小無数の鉄製シリンダー群。数え切れぬほどの円筒が、まるで意思を持ったように脈動し始めた。


例えるならばそれは傘の開いた松ぼっくり――もしくは、鱗を逆立てる古代の爬虫類のように急激な戦闘反応だった。だがその内部に蓄えられているのは、毒でも火でもない。

あらゆる構造物を無に帰す、異常なまでの吸引力だった。


ワームの喉元が、無数のパネルとパイプを震わせながら全開になる。

それは、都市そのものに対する猛然とした捕食が開始された合図だ。


鼓膜を圧する重低音のなか、最も近場の摩天楼が、外壁から瞬く間に崩壊していく。コンクリートは繊維状に解きほぐされ、鉄骨は飴細工のように歪み、その全てが塵芥と化してワームの喉奥へと吸い込まれていく。建築物が完全に消滅するまで、時計の針は僅か10数秒しか進まない。

直後より、背面のシリンダー群から吸引の反動として吐き出された煤煙が、ドバイの空に横長く棚引く不吉な暗雲の天蓋を形成しはじめた。


もはやそれは、F5クラスの竜巻などという陳腐な比喩では表現できない。

天の気まぐれではない。地上の1点へ、持ちうる全エネルギーを叩きつける「意志ある天災」そのものが、そこに顕現していた。

その一方的すぎる力の行使は、掃除機が部屋の埃を吸い上げる、冷徹で無慈悲な物理法則の働きと何ら変わらない。


法外な破壊が、世界有数の大都市を、今まさに蹂躙していた。


そうして混迷を極める砂漠の空を突如、白銀の矢が馳せていく。

UAE空軍所属、ラファールF7多用途戦闘機の1隊が、暗夜を切り裂いてスクランブル発進したのだ。巡航速度はマッハ1.6。その超音速で緻密な幾何学陣形を組み、都市の心臓を貫く塔、ブルジュ・ハリファへと急行する。


パイロットの声が無線を叩く。次の瞬間、コックピットの前方――視界の果てに、摩天楼の頂に頭を預ける、あまりにも冒涜的な“何か”が姿を現した。


「ファルコン1、AWACS。ブルジュ・ハリファ上空、目標視認。タイプ・ワーム、サイズ1000オーバー。建造物に固着、周辺を吸引中」


その報告を、後続機のパイロットが即座に引き取る。

「サーベル2、コピー。レーダースキャン、コンタクト。熱源多数……ターゲット静止」


電子戦を担うAWACSは後方を旋回しつつ、連続的なセンサー照射で敵影をトレースしている。

ブルジュ・ハリファに絡みつく鋼鉄の怪物――それがF7のHUD上に、冷徹な座標データとして浮かび上がる。


「AWACS、ファルコン1。ターゲットは未確認敵性存在。交戦許可を要求する」

「ファルコン1、AWACS。交戦許可。ウェポンズ・フリー。ドローンリンク確立」

「ファルコン1、コピー。AIターゲット・ロック。ライフル!ライフル!」


その声とともに、編隊はビル群の縁を掠めるような超低空から一斉にバンク角を取り、右旋回での急上昇へと機首を切る。

翼下から、対地ミサイルが次々と脱落するように切り離され、白い航跡の槍となって魔性の顎――都市の核心を喰らう“それ”の口腔めがけて殺到した。


しかし、ビルの核心を締め付けるワームは、まるで嗤うかのように、

その大口を開け放ったまま、微動だにしない。


ミサイル群が標的へ到達する直前、周囲の気流が意思を持ったかのように渦を巻き、弾体を絡め取る。飛翔体は抗いがたく進路を捻じ曲げられ、まるで巨大な生物の呼吸に吸い込まれるように、顎の奥へと消えた。


そして、炸裂。


……口腔の底から吹き上がる火球はたしかにあった。だが、それはワームが絶え間なく吐き出す排熱の濁流に掻き消される、一瞬の赤い染みに過ぎなかった。この怪物にとって、ミサイルの爆発など、燃え盛る炉に投げ込まれたマッチのようなもの。その堅牢な肉体に、傷ひとつつけることすらできない。


その絶望的な光景を目の当たりにした時、パイロットたちは悟った。自分たちもまた、とうに“レッドライン”を越えていたのだと。


「回避!風圧が――ぐっ、機体が持っていかれる!」

「これは……吸引されている!?ジェットの推力が効かない!」

「脱出!イジェクト、イジェクトォ!!」


旋回し、背を見せた機体が、次々と風の奔流に捕獲される。抗う翼はへし折られ、コックピットは軋み、機体ごと巨大な捕食者の喉元へと引きずり込まれていく。


数条の脱出シートが空に射出された。だが、

「……駄目だ!」

「うわああああああ!!」

それらもまた風に弄ばれ、渦巻く気流の檻の中へと無慈悲に引き戻されていく。


その光景を、ひと筋の赤い閃光が切り裂いた。

風を突き破り、線のようなスピードで割り込んできた影が、


「――パイロットのバーゲンセールかな?全部いただくよ」


落下するパイロットたちの身体を次々と腕の中に掻き抱く。

ホットショットだった。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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