issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 17
「うわあッ!」
戦術級の衝撃が彼女を襲い、引き裂かれた装甲の破片が旋風となって荒れ狂う。断熱板が空を舞う中、彼女は腕で顔をかばい、直撃を避けた。空間を震わせる破壊の流れに晒されながらも、イムノの足は、しかし確かに地を踏みしめている 。
その視線の先で、戦闘の余熱で赤く染まっていたテラリアキングの肉体が、さらにその色を禍々しく変えていた。裂けた衣服から覗く肌は赤黒く脈動し、やがて全身が火口のように明滅を始める。皮膚の下から、もはや隠しようもなく岩漿の光が漏れ出していた。肉も骨も、存在の構造そのものが変質していく。下半身は床ごと泡立ち、泥のような高熱の塊と化して崩れ落ちた。
「見せてやるよ……これが本物の“地底の王”の姿だ……!」
「……モルテンコアアアァァァァア!!!」
絶叫と共に、かろうじて原型を保つ上半身が軟質のまま天へと昇る。
対照的に、液状化した下半身はメタリック・モンゴリアンデスワームの頭部へと、煮えたぎる溶鉄の川となって流れ込んだ。
脳を直接焼かれる熱量に、ワームは1度身をよじる。
だがそれも束の間。テラリアキングの肉体はワームの構造と完全に融合し、その神経系統を塗り替えていく。主権は生体から「マグマの意思」へと完全に移譲された。
――フゥゥゥゥゥン!!
瞬間、ワームの眼孔に相当するスリットが深紅に染まり、
装甲の継ぎ目からは灼熱の光が滲み出す。
砲撃で穿たれた外殻も、逆に熱量を糧としてほのかな赤熱をはじめる。
「地上なんぞ……飽き飽きしてたところだ……」
ワームの項から生えた、もはや非人間的なテラリアキングがどこか郷愁的に呟くと、
全長1200mの巨体は街路へ顔から突っ込み、瓦礫の山へとその身を沈めていく。地盤が重たく軋み、土砂を際限なく噴出させながら、金属と光を纏った怪物は、圧倒的な運動量で地面を穿孔し、地下深くへと消え去った。
その衝突が巻き起こすエネルギーは、いかにイムノが超人といえど、正面から受け止めるにはあまりにも荷が勝ちすぎている。彼女はそれを発生のコンマ数秒前に察知し、すでにガンブレードの引き金を引いていた。
「くっ……ソイルッ!」
雷のソイルが炸裂し、背面から放たれる高圧の電磁パルスが彼女の身体を射出する。強引なまでの速さで、彼女は戦場の外縁まで跳躍した。
孤独な電光が、敗走の感をにじませてどこか弱々しく空を奔る。その軌道に、巨大な円弧を描いて炎の軌跡が交差した。
「……はい、お帰りはこちら!」
空中で待ち構えていたホットショットが、飛来したイムノの腕を片手で掴み、その勢いを完璧に受け止めたのだ。
「……まずいことになったよ!」
「ああ、あんな隠しダネがあったなんてな!」
2人は手を繋いだままの不安定な姿勢で、しかし一切速度を緩めることなく、特定の方角へと飛翔を続ける。やがて、スヌープキャットとミーティスが待機する高層ビルの屋上へと、ふたつの影は舞い降りた。
「おせち、ダイジョブだった!?」
心配げな表情でミーティスがイムノに駆け寄り、
「なんか、ドえらいことになってるけど?」
スヌープキャットも、不安そうな面持ちでふたりに近寄った。
「テラリアキング、あっ、あの選挙ポスターのおじさんね、やばい進化しちゃってる。ていうか……溶けた」
イムノは、まだ浅い呼吸を繰り返しながら、要点だけを伝える。
「え、溶けたの……?」
途端に、ミーティスの顔から血の気が引いた。
「溶けた上に、ミミズと合体したっぽい。たぶんあれ、夏映画の限定フォームだな」
ホットショットがやれやれと肩をすくめ、冗談めかしてそう付け加える。
「う~ん、どう動こうか……」
イムノが義務的な調子で呟いてみせたが、
全員が疲労を抱えていたこともあり、次の行動に向けた言葉は、互いの胸中で宙吊りとなったまま、ひとときの沈黙に取って代わられる。
遠くから、地中深くを何かが蠢く地鳴りと、消えぬ火の手が立てる爆ぜ音が混じり合い、破壊されたドバイの夜に不気味な脈動を刻んでいた。
だが、その束の間の安堵さえも無惨に踏み潰し、
「――!!」
ワームがふたたび姿を現した。
出現地点は、ブルジュ・ハリファ直下。
かつて世界一の高さを誇った摩天楼、その巨大な基礎の真横から泥と火花を撒き散らしながら這い出ると、その巨体は塔を背後から抱きしめるように絡みつく。装甲の裂け目から漏れる灼熱光がガ
ラスを焼き、執拗に構造体へと食い込んでいった。
鋼鉄の骨格が軋み、塔そのものが不協和音の悲鳴を上げる。
ワームはブルジュ・ハリファの外殻を巻き込みながら、くねる巨体を螺旋状に伸ばし、
ついに尖塔の最上部へみずからの頭部を並べた。
「なにか始める気だぞ!」
反射的に宙へ跳んだホットショットが、動くべきか否か決めかねたまま警告を発する。
カルテット・マジコの4人でさえ、無力な観衆へと一時的に追いやった怪物は、間もなく第2の変態を開始した。
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