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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
issue#02 UNDERTALE

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issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 15

溶岩の巨人が、野面積みの石垣によく似た豪腕で鎖を引くたび、陸上の軍艦は大地を削って軋ませながら、巨大な砲身を強引に目標へと向け直す。艦上の砲門が一斉に咆哮し、凄まじい衝撃波が地を揺るがす。続くのは、1万の地底兵が放つブラスターの奔流。

赤、青、緑の毒々しい光線が横殴りの驟雨となって空間を縫い、広大な公園を瞬く間に蹂躙した。


やがて無数の火線は1点に集束し、摩天楼のシルエットすら飲み込んで、都市の一角に巨大な火球を穿つ。その爆炎は天を衝き、大気の流れを捻じ曲げるほどの質量と熱を孕んでいた。


だが、この光景を遥か上空から観測する者には、その狂乱の意味が理解できない。

何に対する恐怖が彼らをそうも駆り立てるのか、肝心の“対象”が炎と煙と閃光の混濁に遮られ、まったく見えないのだ。まるで虚空へ向けて、無意味に火力を注ぎ込んでいるかのようだった。


だが実際には、地底人たちの射線は刻々として――秒ごとに、わずかずつ窮屈さを増していた。

あらゆる砲火が、逃げるでもなく、止まるでもなく、ただ加速し続ける“たったひとつの点”へと収束していたからだ。


そこに存在していたのは、この広大な戦場における、ひとつきりの特異点。

すべての重火器の照準がそこへ引き寄せられ、地の軍も背後の艦も、知らず知らず、その座標に取り憑かれてゆく。その異様な収束こそが、戦場にただよう静かなる異変――戦況の趨勢が一方に傾き始めていることの、決定的な兆候に他ならなかった。


……特異点の正体とは、もちろんスヌープキャットだ。

ふたたび艦砲の斉射が地を走り、その爆炎は隊列の後背から、順に火の波となって押し寄せた。

しかし、それらの大半は“賑やかし”にすぎなかった。

石畳の地面を大々的に覆し、原初の土の色をむき出しにする程度の、視覚的な混乱以上の力はない。


だが、数発の弾頭は確かに彼女を捉えていた。

極超音速で飛来する数tもの鉄塊を、スヌープキャットは、白銀の体毛に無際限の弾性を与えることにより、

「……胸トラ!」

その胸で、真正面から受け止めてみせる。


その肉体は、着弾の瞬間、まるで職人の手で回されるピザ生地のように膨張し、すさまじい圧力を巧みに受け流す。直後、白銀の毛並みが逆巻くようにうごめき、繊維1本1本の構造が変質。表層は絹のしなやかさを保ったまま、その内側は神話の金属にも匹敵する絶対的な硬度を獲得する。それは柔らかな毛皮の擬態をした、最新鋭の複合装甲だった。


「ギ……!」


艦砲弾は、金属のこすれた音をひとつ立てるなり彼女の胸で完全に静止し、その運動エネルギーと熱量を根こそぎ奪われると、まるで磁力で弾かれたかのように真逆の方向へと撃ち返された。


その意図された跳弾の軌道上に、運悪く、猛進するマグマビーストの群れがいた。

生ける溶岩の波濤の先頭が、凶弾の直撃を受け、閃光と共に爆砕される。


爆心地の炎が晴れるより早く、雪色の影――スヌープキャットが、輪郭すら曖昧になるほどの速度でそこに突貫した。彼女が地を踏みしめると、足元の岩盤そのものが巨大な壁となって隆起し、その超常的な突進力を殺す。


そして、跳躍。


それは先の突進とは打って変わって、まるで舞い上がる羽根のような、やわらかく抑制された動きだった。


そして、空の頂点で、彼女は大きく背中を反らし、まるで世界を抱きしめるかのように両腕をいっぱいに広げた。次の瞬間、振り上げた両足の勢いをそのまま利用して、身体を限りなくしならせ、正面で力強く掌を打ち合わせる……!


――瞬間、世界が絶叫した。


彼女の掌中から迸ったのは、万物を白く焼き尽くす光と、あらゆる音を塗り潰す轟音を伴った、純粋な衝撃の波。それは宇宙創生の最初の脈動を思わせる、絶対的な破滅。時空の制約すら振り切った無形の力が、球状に膨張していく。


衝撃の境界面では大気が異常屈折を起こし、内と外で世界の景色が異なる段のように見えた。

同じ景色を映した光景だというのに、明らかに内側の方が盛り上がり、


衝撃の境界面で大気は異常屈折を起こし、内側の景色が外側よりも明らかに1段高くせり上がる。

空間そのものを断層として刻む透明な津波が、戦場すべてを洗い清めるべく、全方位へと広がっていった。


爆風は、大広場に存在するすべて――兵、砲、獣、装甲車――を、順にひとつの方向へと傾け、なぎ倒していった。


この領域においては、もはや人も弾丸も、車両すら無傷ではいられない。

爆発の波が通過した地点には、倒されたものではなく、通過の痕跡――その圧だけが刻まれていた。


……疾走の勢いに乗じて放たれる拳打のひとつひとつが、敵をまとめて吹き飛ばしていく。

スヌープキャットの攻撃は、単なる1点への打撃ではない。

それは、広域をまとめて削る“面”の破壊であり、純然たる質量のうねりが、敵軍という名の土層を

前方へ向かってひたすら掘り進んでいた。


そんな彼女の両腕に、左右からマグマビーストが飛来する猛禽のごとく襲いかかり、荒々しく喰らいついた。

「ギャウゥル……グシャァ!」

灼熱の牙が深々と肌に食い込み、獣たちは咆哮とともに噛み締めを強める。

だが、なお余裕の面持ちを崩さぬ彼女は、力任せに腕を振り抜いた。

岩皮がきしむ音が走り、


次の瞬間――


「ガギャウッ……!!」


噛みついたままの顎ごと、マグマビーストの頭部は鈍い音とともに裂け、砕け散った。


そして、ユキヒョウの戦士は返す動きでその首筋を抱え込むように腕を絡め、自らの体を大きく回転させた。連動して、2つの大きな質量が螺旋を描いて振り回される――ジャイアントスイングだ。


その一撃は、敵陣に新たな混乱をもたらす。

包囲の陣形は大きく崩れ、敵兵は散開を余儀なくされた。


スヌープキャットはその隙を見逃さず、獲物を掴んだまま横へと跳躍し、

そのまま力任せに、マグマビーストの体を最寄りの艦船の舷側へと叩きつける。


潰れたのは猛獣の骨格か、それとも艦の鋼板か――

判然としないほどの衝撃が、あたりの構造物すべてを深く震わせた。


すぐに、無事だった兵士たちが浮足立ちつつも半包囲の陣を敷き直し、ブラスターの集中砲火を浴びせかけていく。無数の砲口から放たれる色とりどりの閃光は、万雷の拍手にも似た熱烈さで、スヌープキャットの肢体を戦場の只中に鮮烈に浮かび上がらせた。


しかし、物理攻撃に対して無尽蔵の耐性を誇る彼女は、微動だにしない。

咄嗟に己をかばうことすらせず、全身でその衝撃をあるがまま受け止めながら、

瞳の焦点はただひとつ――その眼前にそびえる巨大な艦体だけを、執拗に見据えていた。


そして次の瞬間、彼女は両足を地に沈ませ、全身の筋肉を連鎖的に駆動させる。

突き出された両腕が艦体に深く食い込み、金属が歪む音が空気を裂いた。


「……うにゃああっっ――」


膂力のすべてを腕へと送り、艦体の一角をえぐり上げると、それはみしみしと軋みながら傾斜をはじめた。続く一挙動、彼女はそのまま重心を強引に傾けさせ、地面を軸に回すようにして、


「――にゃおおゥッッッ!!!!」


さらに声をねじり込んで、全長200mはある巨躯を、大気を押し退ける音とともに、地上へと転倒させた。


鉄塊が潰れる衝突音と、舞い上がる土煙。

無数の視線が、ただ呆然とその破砕の瞬間を見守っていた。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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