Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 01 12
「つぎ主砲ねー!」
先の結果を顧みないなら、さなの宣言はあまりに無情に響いた。道袍の袖にすっぽり隠れたリモコン型のスイッチが、彼女の指でかるく押されると、
山門側の風景に壮大な変化が巻き起こる。砲身が最終的な照準を終えると、砲の奥が青く輝き、1条の電撃が先行してほとばしり、直後、直径90mmの実弾が空へと解き放たれた。
クルーザーのキャビンを思わせる流線型の、未来的な砲塔から放たれるレールガンの1発は、水平に疾る落雷そのものだ。極超音速で因果を冷徹に繋ぎ、発射と着弾が同時と見紛うほどの速さで展開した。
「――!」
結果はこうだ。戦車砲弾は、雷鳴と迫力でスヌープキャットの私設応援団であるネコの群れを四散させ、
物的には彼女の腹部に椀を押し当てたほどの凹みを残した。
だが、そこまでだった。先の小粒な弾丸と同じく、呆気なく退けられたのだ。
運動エネルギーが蒸発してしまえば、それ以上の出来事だって何も起こりはすまい。
このレールガンの貫徹力は、M1A2エイブラムスが採用する主砲「ラインメタル120mm L44」の約3倍に引き上げられているが、
超人の中でも肉体派の連中を倒すには、まだ改良の余地が大いにあると言えそうだった。
……だが、もし君が「吉濱はちる学」の門を、いまようやく叩いたばかりの初学者だというのなら――
今のうちに、私からどうしても伝えておかなければならないことがある。
この獣人の少女が、真に唯一無二の力を振るいはじめるのは、まさにここからだと。
それは単なる超常の技ではない。ある種の特異な体質を資本にした、一種の“身体芸”とも呼ぶべきもので、その類のものには必ず、予想を覆す出来事がついてまわる。
もしも前提知識が一切ないまま話をこのまま読み進めてしまえば、
事の“始まり”――まさにその決定的な瞬間を、君は驚くほどたやすく見逃すことになるだろう。
……ご覧なさい、技の兆しはもうそこに現れている。
スヌープキャットの、全身に頭髪の密度で生え揃った被毛たちの土台の役目を果たす筋肉群――じつはこれが、あの戦車砲弾を受け止めた直後から、異常な方向に柔軟しはじめていたのだ。
「ムククッ……」
「モニュッ……」
白く繊維質な雪原を思わせる体毛に、半ばまで没していた砲弾たちが、
ゆっくりと、まるで磁力にでも導かれるかのように、次々と体内へと呑み込まれていく。
かつて、スヌープキャットの慈悲によって一時は沙汰を保留されていたそれらの「侵略的な異物」は、
結局のところ赦されることなく、粛々と刑の執行を迎えることとなった――この奇異な光景については、
そう例えるのが、的を射ているかもしれない。
そして事実、すべての弾丸がその弾底まで呑み尽くされたとき、
彼女の前半身の毛並みは、ただの逆立ちでは済まされないほどの爆発的な反応を見せた。
「まさかここまで伸びるとは」と思わせるほどに、それは一瞬にして総毛立ち、
ついには、体内に取り込まれていた弾丸の群れが、侵入時と遜色ない猛威をもって、
四方へと、怒涛のごとく撃ち出されたのである。
……これぞ猫の妙術!寺を囲う土塀のあちらこちらに、超高速の質量が叩きつけられた痕跡として、鋭角に尖った土煙が一斉に舞い立った。
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