issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 13
それでも、学生服の剣士は踏みとどまった。
「くぅっ……!」
咄嗟に突き出されたガンブレードの刃が、ワームの硬質な装甲に深く食い込む。
その1点に全体重を預け、風に翻る旗のように体を揺らしながらの過酷な数秒を耐え抜くと、
全身の軸を一息に整え、ひとひねりの宙返りを――しなやかに、されど力強く――描いてみせた。
空中にいる間、無駄に伸びた手足を回転力で巻き取りきった彼女が、
ワームの背へとスーパーヒーロー着地したときには、すでに構えにも、意志にも、一片の揺らぎはなかった。
「おいおい!地底のかたぁ~い岩盤を100mは抜けるくらいチャージした1発だぜ!!?」
テラリアキングは、「地上人」と侮っていた相手の、思いがけぬ根性に目を見張った。
「そんなにヤワなら、攻めずに逃げてたってば!」
焦げた制服の裂け目からところどころ素肌を覗かせながら、イムノはにっこりと笑った。
「なるほど、しっかり、あの女のガキってワケか――気に入ったぜ!ウチの族のレディースにしてやる!」
豪語すると同時に、テラリアキングは猛然と駆け、ハンマーを大きく振りかぶった。
だがイムノはその気勢に怯むことなく、ひとこと吐いて銃を構え直す。
「……いらないよ! どうせトップク(特攻服)、ダサいんでしょ?」
その瞬間、彼女は翻りながら華麗に膝射の構えを作り、レモン味のソイル弾をガンブレードから発射する。稲妻の閃光がワームの背を吹き抜け、
「ごっ……!」
テラリアキングの胸部へと一直線に突き刺さった。
たった1発の弾丸が、この瞬間においてどれほどの重みを伴ったことだろう。
地底人の指導者は、戦いが始まって以来はじめて、意に沿わぬ吐息を漏らしたのだ。
ズゴオオォオオオ……!
男の体を先頭に衝撃が駆けていくにつれて、鞭うつような雷鳴が夜空を揺るがしていった。
それは単なる音ではない。打ち込まれた一撃の凄絶さを、打大気ごと宣言する一声だった。
だが、落下の淵を目前にしてなお、彼は己の武装を忘れない。
「くっ!」
咄嗟に放たれたフックが装甲の継ぎ目に噛みつき、転落を寸前で回避、
身体を強引に引き戻したその勢いを利用して、テラリアキングはすでに次の構えへと移っていた。
銃とハンマーを両手に、獣のような呼吸を整えながら――
その瞳は、ますます獰猛な光を宿す。
超音速の踏み込みが生むマッハコーンをみずから突き破りながら――彼は再び、イムノのもとへと襲いかかった。
――しかしその時だった。星々を擁する天穹を貫いて、1点の紅が轟音混じりに落ちてくる。
ドドドォオオオン!!!
次の瞬間、ワームの横腹に沿って、立て続けに3発の大爆発が走った。
深紅の閃光が宙に飛び出し、炸裂の熱が大気の層を湾曲させながら押し広げていく。
その理外の衝撃に、全長1200mの怪物はあきらかな苦痛を覚え、躯体をひときわ大きくうねらせながら、軌道を著しく元の進路から外していく。
それは、ワームが声なき悲鳴を上げた瞬間に違いなかった。衝撃波も攻撃の全容も視認できぬ位置にいた乗り手の2人でさえ、肌や内臓にじかに響く何かとして、その異変を即座に察知せざるを得なかった。
イムノは、光景の意味を理解するよりも先に、胸の奥が不思議な温もりに包まれていくのを感じていた。爆炎の色、熱、その余韻に漂う赤――それは種々の理屈や初動の仮説を超えて、彼女にひとつの確信をもたらす。
まるで戦場のただ中に焚き火が灯されたかのような、あたたかい気配。
それはまぎれもなく、「味方」がそこにいるという実感だった。
爆発の余煙のまわりを、光の奔流はいちど見渡すように旋回し、
速度と傾斜が秒ごとに変化し続けるワームの背――まるで大地が絶えず崩れ落ちるかのような足場に、
驚異的な精度で相対速度を合わせ、ついにはイムノのすぐ隣へと滑り込んだ。
轟々とうねる風のなかで、縦に長い炎の塊が、ふと人の声を発する。
「なに他の奴らが真面目にやってる時に、1人だけジェットコースターで遊んでんだよ!」
炎髪灼眼のヒロイン――ホットショットは、
胸の奥に薪をくべるような明るさで、そう叫んだ。
高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。
https://x.com/piku2dgod
本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256




