issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 11
テラリアキングは、悠々と物見遊山を決め込んでいたその顔に、徐々に焦りの色をにじませていた。
「おかしいじゃねえか、何を見せられてるんだ俺は!?……仮にも艦艇師団だぜ?こっちが“念のため”と思って投入したのはよ!」
巨大な従者を背に従え、薄く笑みを浮かべていたその余裕はもはやなりを潜め、代わりに苛立ちが前面に出はじめる。
「あ〜ったくよぉ!!結局なァ、俺が直接カチコミに行くのが1番なんだなぁ、はいはい!……いつの時代だって、どんなケンカだってよぉ!」
矮躯の肩を怒らせ、腰に巻いたツールベルトから、右手にスクラップ製のソードオフ・ショットガンを、左手には無骨なハンマーを引き抜く。
次の瞬間、影も残さぬほどの跳躍で真上へと飛翔し、それに呼応するかのように、巨大なワームの頭部が頭を垂れて流れ込んできた。
テラリアキングは、その頭頂部へと異様な安定感で着地する。
直後、ワームは都市上空をらせん状に旋回しながら、進撃を開始した。
無数の触手をフックのように建造物へと投げかけつづけ、ビルの谷間を蛇のごとく這い回る。
本体がそこを通過する頃には、壁面はためらいなく貫かれ、跳ね散る石屑と共に突き破られていく。
ガラス片とコンクリートの断片が都市の光源を散乱させ、そのたびに闇は異なる色で染め上げられる。
列車を凌駕する速さで、ビル群の間をその巨影が奔り抜ける。
上空を覆う全長1200mの影は、地上に取り残された人々にとって、永遠に尽きぬ恐怖そのものとなった。
メートル単位の岩片が容赦なく降り注ぎ、悲鳴が四方から交錯する。
人々はただ本能に突き動かされるまま、地面を蹴り、身を投げ、直撃を免れようと奔走した。
触手がまたひとつ、ビルの角をねじ取るように掴み取り、そのまま躯体を横なぐりに振るって強引に突進した。
直後、巨大な顎が閉じられ、ひと噛みでビルの中腹がまるごと吹き飛される。
その破壊はまさに、これまで地下世界の奥深くでのみ行われていた大規模な掘削作業が、
空気という透明なケースの中で露わに展開されている光景に他ならなかった。
ドバイの街全体を、無軌道な環状線と化した暴走列車――
それがこの状況下における、テラリアキングとその騎獣、メタリック・モンゴリアンデスワームの姿だった。
鋼もコンクリートも意に介さず突進を続けるその体の上、彼の双眸は、はるか前方で編隊機を蹴散らすイムノの姿をたしかに見据えていた。
「……さっきからこの俺にイットーメンチ切ってくるガキ!――どれ、どの程度のモンか見せてもらおうじゃねェか!」
その全身を打ち付け、ジャケットや髭をことさらなびかせる風圧の中、不敵な笑みを浮かべたテラリアキングは、右手のスクラップガンを軽く傾け、仮初めの照準を彼女に合わせる。
「ばーん!」
その手振りは、反動を表すかのようにわざとらしく大げさで、口から滑り出た銃声は、状況の深刻さに反するほど飄々としていた。
……しかしその瞬間、彼の戯れにはたしかな実体が伴った。
ワームの胴体が、いななく馬のように大きな弧を描いてしなり、下方のビルに対し、その全身を預けるようにのしかかる。
――ドシャァアアアアンッッ!!!!
鉄骨と建材が一斉に歪みながら砕け散り、構造全体が押し潰され、
その反動――建物の崩壊が生んだ歪みの力を、そのまままっすぐな突進力へと変換し、ワームは都市の空へ弾かれるように跳ね上がった。
不可視の手綱に操られるかのごとく、ワームは一気にイムノへと殺到する。
その巨体が、林立する高層ビルの世界を食い千切るために首を振るたび、彼の周りの景色は激しく流れ、巻き上がる粉塵と破片が渦を巻き、
その灰褐色の濁流のなかからワームの頭部がひときわ突き出て、都市の景観を破壊の矢となって突き破っていく。
ちょうどその頃、イムノは航空機を足場にした八艘飛びの最終段階に入っていた。
また1機、装甲が砕け散って爆炎が夜空を彩る。彼女はその瞬間、正面から開かれたワームの咢を視認し、みずからの位置を、それに正対するように微調整しながら跳躍した。
「――こいよ!」
身をひねるがままに放たれたイムノの斬撃は、銀光をまとう一閃。
それを、テラリアキングの右手に握られた鈍重なハンマーが凶悪な音とともに真っ向から受け止める。
「――ッッ!!!!」
激突の余波が、砕かれたビルの余燼や火花を巻き込みながら、淀んだ大気を同心円状に押し払う。
イムノはその反動を利用し、後方への宙返りでワームの背へと舞い降ると、その場ですばやく体勢を立て直し、自然体になった。
そして次の瞬間、ワームの体躯が一気に俯角を取る。
鋼鉄の装甲をまとった史上最大の蠕動体は、降下軌道へと滑り出し、かたむいた景色のすべてがその道連れとなる。
高層の街並みが斜めに崩れていくように視界を流れ、街路の高さから放たれる光がふたりの身体を、まるでワームが、火口にでも突き進んでいくかのような体で一気に染め上げていった。
その束の間、2人の間に交わされたのは、不思議なほどとぼけていて、それでいて火花のように鋭い応酬だった。
「どうも!巨大生物との戦いは今日が初めてなんで、いろいろ勉強させてもらいます」
イムノは軽快な口ぶりを意識的に保ち、挑発の意図を笑みに変えてぶつける。火の粉を孕んだ
熱い風がカーディガンの裾を荒々しく巻き上げる中、彼女の眼差しは、対面する怪物の主をまっすぐ捉えたまま、一瞬たりとも逸れることはなかった。
「オールラウンダーの娘の、4人のうちの……えーと、たしか……」
テラリアキングは、極太の銃口をしたショットガンでこめかみをくすぐりながら、すこし困ったように眉根を寄せてみせた。
「……イムノ!」
見かねた彼女が、語気強く名乗り返す。
「ああそうだ、ありがとよ。俺は地下帝国テラリア――そこのアタマを張ってる、テラリアキングだ!」
武器を握った手、ナットのような八角形の、異様に太いリングを嵌めた手、
規格外の野菜のように粗雑で、油にまみれた小汚い手――
その両手を大きく広げた彼は、まるで獣の咆哮のように、可能なかぎり野蛮に、無遠慮に、
イムノに向かって己の名を叩きつけた。
その言葉は、語尾へ向かうごとにエンジンの鼓動が高鳴るようにして熱を帯び、
やがてその響きは、すさまじい圧力と存在感を孕みながら、空気を激しく震わせていった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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