issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 07
「おっけー!アシュリーはそのまま上ね!はちるは強そうなヤツから順に倒してボスまで行く!……さなは全部!」
「やったー!わかりやすい仕事!」
スヌープキャットが子どものように快哉を叫ぶ。
「……いいよ!」
ぶかぶかな袖を持つ黒とオレンジのパーカーを風に膨らませながら、ミーティスもまた勇敢に応えた。
イムノが彼女に下した指示は「全部」――それは空の援護、陸の防衛、人々の救命、そして巨大ワームへの対処まで含む、あまりに無茶な一言。だが、万枚単位の呪符を霊気仕掛けの戦術ドローンとして操るミーティスにとって、その無茶はなお、許容範囲の任務に過ぎなかった。
フリーフォールで落下するミーティスの身体で、ひときわ目を引く動きを見せたのは、背に掛けた白いショルダーバッグだった。キルティング生地に覆われた、どこか素朴で滑稽なほどに膨らんだその鞄は、さながら現代に蘇った風神の袋。その紐口がわずかに緩むと、内側の呪符が風圧に押し出され、上昇気流を捉えて一斉に宙を舞った。
……このバッグにぎっしりと収められた札は、サイズだけを見れば1万円札と同じ程度のものでしかない。もしそれが隙間なく詰め込まれていたとすれば、バックパックの中には、10万枚以上の札が収められているということになる。仕切りもポケットも一切存在せず、ただ“入れる”と“出す”に徹した、投げやりなほど実用一点張りの構造である。
あふれ出た呪符の群れは、一見ただ風に流されただけに見えたが、次の瞬間には覚醒する。
1枚1枚が独特の気配を宿し、空中で身をきつくよじって主の動きを追い始めたのだ。ミーティスの落下に寄り添うもの、彼女を追い越し、前方の空域へ雄々しく羽ばたいていくもの。やがて無数の呪符は、主の無言の合図に従い、飛び交う戦闘機や空挺兵の隊列めがけて
急激な角度で舵を切る。
おびただしい呪符は、紙片とは思えぬ速度で敵機の肌に張り付く。次の瞬間、鋼板を柔肌のように穿つ光の熱が迸り、戦場に無数の爆炎が咲き乱れた。
なにしろ、その1発1発が、TNT火薬3kgの炸裂に相当するのだ。もし、衣服に仕込んだものと合わせて15
万枚近くの呪符すべてが自爆攻撃に用いられたなら――彼女がその身ひとつで操る総火力は、
2020年代のアメリカ合衆国陸軍を編成例に取った1個機甲師団が、いちどに投入できる量の、実に3、4倍にもなる。
これほどの圧倒的な弾幕を前に、敵機が算を乱して逃げ惑うのも無理はなかった。だが、さらなる空域へと逃げ道を求めたその軌道を、とんぼ返りしてきたホットショットが見逃すはずもなかった。
今や彼女は、戦場の掃除屋だ。都市の夜景を縫い、時には、ビル群の中腹まで高度を落としていく敵機の群れを追う。幾筋ものビームを収束させ 、3倍以上の速度差でその背後から追い抜きざま、一瞬のうちに標的を火の玉へと変えていく。
一方、地上の大広場では突如砂塵が激しく巻き上がり、その渦中からテラリアンの別動隊が出現する。
鯨が潮を吹くがごとき跳躍で地表を破り、陸生艦艇と1万の装甲歩兵が着地の衝撃をまき散らした。ひしゃげる石畳、立ちこめる煙。
その中を、兵士たちは四方へと列を成していく。異様な出現を前に、周囲の群衆は恐慌に駆られて四散した。
テラリアンの重砲部隊、それは鎖で牽引される陸上艦そのものだ。その鎖を曳くのは、身の丈40メートルに及ぶ溶岩の巨人。2体1組の彼らは、まさしく俥を曳く奴隷のような重々しい足取りで、指のない足跡と艦の曳痕を石畳に深く刻みつけ、艦隊を所定の位置へと押し進める。
やがて砲門が1列に整い、遠方に角度を定めると、地震をも凌ぐ轟音と
ともに砲弾と大型ミサイルが発射され、都市の中枢部へと無慈悲に降り注いだ。
整然と舗装された交差点、芝の整った公園、アウトレットモールの広場。そうした市民生活の象徴が、次の瞬間には破片と炎の渦と化し、爆風が地面を打ち上げるように吹き荒れた。
衝撃波は高層ビルのガラスを片端から粉砕し、鋼鉄の梁を歪ませる。
炎とコンクリート片が宙を舞い、都市の谷間を形づくっていた構造物が、次々とえぐられ、押し流されていく。 破壊の連鎖は、都市機能を根こそぎ崩落させるべく、 抗いがたい速度で広がっていった。
そこへ、ひとつの流星が天より舞い来たる。
ブルジュ・ハリファの高みから降り注いだそれは、
すさまじい衝撃波をまとい、白い風の尾を引いて落下してきた。
スヌープキャットだ。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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