issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 05
「に゛ゃ゛っ!」
標的を切れ目なく見定めたスヌープキャットの4足の姿が、風を孕んだかのように自然と背筋を膨らませる――次の瞬間、その姿は元の位置からかき消える。壁を、柱を、天井を蹴って跳ね回る軌跡は、人の形をした弾丸そのものだ。
誰の視線もそれを追うことあたわず、一方で放たれた拳は敵兵の胸を狙い澄ました角度で貫く。
ガン!
ガン!
ガンッ!!
反動で壁に叩きつけられ、金属と肉が潰れる音が連続する。ひと呼吸の後、室内のジェットパック兵はすべて地に伏していた。
3人の動きと同時、部屋の他方ではすぐさまミーティスが前傾姿勢をとり、手元から札を扇状に放っている。それらは跳びかかろうとする獣の脚部へ正確に滑り込み、絡みついた直後に淡く発光し、鋭利に炸裂した。爆発の衝撃で脚を砕かれた怪物は、着地の余地もなく床へ打ち倒され、そのまま沈黙する。
そう、周囲を包囲していた敵勢は、4人の少女が前進の流れを止めることすらなく、
“踏み出す”という自然な運動の中で、ことごとく無力化されてしまったのである。
声を交わす必要もなく、4人は足並みを揃えて荒廃した130階の窓辺へ向かって駆け出す。
ひび割れた床を踏むたび、砕けたガラスの欠片が音を立てて跳ね、
疾走に巻き上げられて光のなかへと舞い散った。
――跳躍。
まよいなく130階の窓枠を蹴り、カルテット・マジコの面々は夜のドバイへと身を躍らせた。重力の束縛を断ち切り、光と爆炎の渦巻く空間へ。
くだけ散ったガラス片のきらめきを背に、遠ざかる残響を置き去りにして、彼女たちは夜気を翼とし、その飛翔の軌道をどこまでも引き伸ばしていく。
眼下に広がるのは、人工の光でできた海。金銀の光跡が縦横に走り、車列の帯は流れ、
高層ビルの灯火は宝石のようだ。そして、その海の中心では――サーチライトを浴びて鎮座する巨大なデスワームが、この都市の象徴を己が身へと塗り替えるかのように、圧倒的な存在感を示していた。
すべての感覚が異様に研ぎ澄まされる、壮麗な数秒間。上昇気流が頬をなで、遠いクラクションや、ガラスの砕ける音が、鼓膜にかすかな残響をこすり付ける。時間の流れが凍てついたかのような浮遊感のなか、4人は互いの瞳に、眼下に広がる世界の反射が映り込むのをあますことなく見た。
だが、その優雅な幻惑は轟音によって破られた。機首を揃えた戦闘機の群体が、超音速の軌道を編んで夜空を裂く。エンジンの絶叫が宙の静寂を塗り替え、機銃の連射が蜘蛛の巣じみた火線を織りなし、追尾型ミサイルの列が、煙を残して複雑な航跡を描きながら飛び交った。
「……よっし!!今日も安心安全、魔法少女の『ゆめかわ暴力』で行くぞッッ!」
言葉とは裏腹に、その身を包む神聖なきらめきは白熱の臨界点に達し、濃縮されたプラズマが殻のように剥がれ落ちる。その変容の中心から、ホットショットの姿が一気に隊列を抜け出した。
目前の死闘に向け、みずからを研ぎ澄ます衝動の具現――それはまさしく“孵化”であった。
異能の身でなければ断熱圧縮に消し飛ぶほどの超加速。成層圏を衝く流星のごとく、光の尾を引いて空を奔るホットショットは、視界を埋め尽くす敵の軍勢を前に、1歩たりとも退く気配を見せない。
突如、彼女の背や肩口から、無数の炎が千切れ飛ぶ。
……パラララララ!
遠い花火にも似た、乾いた破裂音が連続する。分離した炎は、一瞬で魔力を帯びたマイクロミサイルへと姿を変え、それぞれが意志を持つかのように不規則な軌道を描いて宙へと弾け上がっていく。
同時に、空の対岸では戦闘機の銃口が一斉に光り、弾丸が滑らかに発射される。
光と光――異なる図形を描く輝線たちが、今まさに先端を触れ合おうとしたその刹那、
彼女は、一瞬前の自分の姿をまるで跳躍板のように蹴り、次元の壁を突き破るほどの速度で、敵陣のただ中へと突入した。
「――!!」
ジグザグに連鎖する爆発が、風のように一方へ吹き抜ける。その外縁を橙の軌跡で旋回したホットショットが、編隊のただ中へと突入した。両掌から放たれるレーザーは極限まで絞られた穂先となって突貫の道を切り拓き、その勢いのままに編隊を別角度から貫く。それはまるで、たった1人で十字砲火を実行するかのような光景だった。
――交戦の火蓋が切られたそばから、両者の航空戦力には、ある1点において決定的な性能差があることが明らかになった。
……速度である。
機体性能の開きは歴然。彼我の差は、じつに3倍以上。
もはや、それは「静物」と「動物」の戦いに等しかった。
敵も即座にそれを悟ったのだろう。なおも無尽蔵に湧き出る航空機群は、
「クラッシャー1より全機!あのケバいアマ、ちょこまかとウゼェんだよ!卍陣で囲んでとっちめてやれ!」
行動パターンの練り直しを余儀なくされ、四方八方へと散っていく。
……ホットショットが都市の天蓋を疾駆する。風圧とジェットの轟きを引き連れる
縦横無尽の彗星はわずかな軸移動だけで体を大きく傾け、軌道を切り返すたびに、プラズマの尾が夜空にきらびやかな残光を描いた。
散開した敵機のうち数機が、即座に彼女を再捕捉し、追いすがる動きのさなか、
翼下のパイロンから一斉に追尾ミサイルを放つ。白煙の尾を引く、
10数発の洗練された凶器が、獲物を狩る猛禽のように彼女の背後へと殺到した。
そのミサイルの群れを、彼女はまるで予知するように突然披露した鋭角の軌道でいなし、同士討ちを誘って無為に爆発させる。体をひと捻りして衝撃波から逃れると、すぐさま前方の敵編隊へ激しく肉薄した。
「クソッ、パイルドライバー4だ!ケツに張り付かれた!あの火の玉女、誰かさっさとタマ取りやがれ!援護だ、援護ォ!」
「ユンボ隊、了解!パイルのダチは俺らが助ける!回り込んで排ガスで燻製にしてやらぁ!」
そうした通信がテラリアンの空軍に錯綜する中、ホットショットは、側面から接近してくる別編隊と正対する。
3機横並びの陣形と、互いの兵装をポーカーの手札のごとく切り合えば、迎撃の応酬がそこに爆風の花道を華やかに織り成す。そして、その上でついに真正面からの激突が起きた。
ふたたびび爆発が連鎖し、そのただ中を勝者として胸を張って突き抜けるのは、数の劣るホットショットだ。バレルロールの軌跡が、漆黒の夜空に鮮烈な炎のアートを残した。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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