issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 03 04
満天の星と、砂漠の都市から立ち上る無数の灯火。そのふたつが交錯する大空の汽水域を、まるで剪定する大鋏のように強烈な光跡の群れが切り裂いていった。
ミサイルの波状攻撃である。
それらはまたたく間にブルジュ・ハリファを包囲すると、紅
蓮の飛沫をまき散らして世界有数の高層建築を根元から揺るがす。続く衝撃波が内部に到達し、ガラスと鉄骨を深々と軋ませた。
即応の防空システムが都市の要所で駆動し、展開と同時に白々とした煙を引く対空砲火を放つ。ミサイルが残す水平の飛行雲と砲火の軌跡が交錯し、上空に白光と爆風が吹き荒れる。その一撃ごとに、調和に満ちた夜景は空間ごと明滅しながら引き裂かれ、静寂と秩序を刻一刻と失っていく。
ミサイルの着弾と同時にビル全館の警報灯が点滅し、130階の空間を血のように赤く染め上げる。壁のアラートが鳴りひびき、光が走るたびに、天井パネルは痙攣するように小刻みにふるえ続けた。
「これ、カルテット・マジコランドのアトラクションにしてもいいな」
この極限的な状況下にあるというのに、吉濱家の問題児は肩の力を抜いたまま、あっけらかんと声を放った。
「何言ってるの……!?」
あまりにも独特な感想に、イムノでさえこの場ばかりは素の調子で突っ込まずにはいられなかった。
束の間のやり取りをよそに、天井パネルは内部の配線をだらしなく垂らしながら剥がれ落ち、遠くのガラス壁は苦鳴を上げて絶えず震えている。
「わぅうううぅっ……!」
スヌープキャットは縄張りを脅かされた猫のように四つん這いになり、腰を引いて外界を睨みつける。その顔立ちはぬいぐるみの如く愛嬌があるが、今は印象にそぐわぬ幼い牙をこれでもかと剥き出しにしていた。周囲の衝撃と轟音に過敏に反応し、ユキヒョウのような尾は、毛を逆立てて垂直に跳ね上がっている。
フロアの隅で、ミーティスが身構える。スケートのようになめらかな動きで腰を落として半回転すると、ひるがえった袖の内側から札が束となって飛び出しかける。彼女は即座に両腕を交差させ、いつでも動ける体勢を整えた。
「……来ると思う!」
普段の幼さが鳴りをひそめた声は、予知による切迫した感覚にふさわしく張り詰め、敵意に満ちた光と音の渦中へと鋭く突き刺さった。
薄く繊細な呪符の1枚1枚がふるえ、墨で描かれた文様が光を帯びて脈動を始める。
「――トゥラベコフさん、動かないで!!」
道士の号令一下、腕から放たれた数10枚の呪符が魔弾のごとく空を裂き、
カリムの足元から全身へとまたたく間に絡みつく。符は何重にも連なって彼の身体を覆い、
金色の経文が光の帯となってその身を封じていった。
「えっ……」
カリムが戸惑う間もなく、
――バリィンッ!
130階の窓ガラスが一斉に爆ぜた。
室内に突風と無数のガラス片が吹き込み、次の瞬間、札に包まれた彼の身体は繭と化して、渦巻く風のなかへと吸い込まれていく。
「――うわああああああ!!!!」
悲鳴を置き去りに、札の繭は宙を舞う。ビルの外壁をなぞるようにして凄まじい速度で滑り落ちていくが、無数の呪符は絶えずきらめき、その身を確かに守り続けていた。
――そして、建物の内部から余計な人影が消えた瞬間、戦いの幕が華々しく切って落とされた。
高熱を帯びたまま飛翔する噴石が、ビルの外壁やガラスを相次いで粉砕し、その衝撃を伴うがまま内部へとなだれ込む。破片と火花が舞い散るなか、砕けた床には鮮烈な火の轍が刻まれていった。
その灼けた岩塊に、見る間に分割線がはしり、外殻が裂けて開く。
「――」
内側からあらわれたのは鉱石質の四肢と、サソリの全身像にも似た異形の頭部だ。太く発達した脚で床を踏み鳴らし、クマを彷彿とさせる重々しい足取りで、崩れた室内をゆっくりと旋回し始める。
やがて同じ性質の怪物が次々と現れ、その巨体が床へ叩きつけられるたびに岩屑を四散させた。
地底産の捕食者たちは、荒く息づく音とともに肩を広げて威圧し、徐々に間合いを詰めてくる。
その一触即発の状況へ、推進装置を背負った兵士たちが、幾筋もの光の軌条を描いて突入する。バイザーに反射光を走らせ、降下の反動で姿勢を整えると、間髪入れずに武器を構え、光条を乱雑に浴びせてきた。
だが、カルテット・マジコの面々にとって、この程度の事態は条件反射で処理すべきものでしかない。
ホットショットは足裏に力を込め、床をひときわ強く踏み抜く。砕けたタイル片が跳ね上がり、
腰元には鮮やかな熱の奔流が巻き上がる。その脚が横へ円を描くように振り抜かれると、四足の怪物の胴へ深く突き刺さり、頑丈な外殻が潰れながら大きく裁断された。
「……はんっ!!」
みじかくも挑発的な気合が響く。
飛び散る鉱石の破片が床に届くより早く、彼女はすでに次の動作に移っていた。
回転の余勢から流れるように身体を前傾させ、飛行のための推進力を得ながら、視界を走らせて周囲の敵勢を捉える。
風をまとってきりもみしながら舞い上がったイムノの刃が、沈黙のうちに閃く。下から上への優雅な旋回のもと放たれた一撃は、飛びかかる獣の鉱質な頸部を、微細な手応えだけを残して断ち割った。装飾のような目玉が床に打ち付けられた頭から落下する。
断面からこぼれた細粒の粒子が空中で曇り、崩れた身体は遅れて床に沈んだ。
「はちるっ!」
間髪入れず、彼女は連携の次手を担う者へ声を放った。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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