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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
issue#02 UNDERTALE

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106/219

issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 02 08

1時間目の授業が終わるころには、ホームルーム前の出来事は、もうどこか遠い夢のようだった。

続く休み時間、教室のざわめきは、もはや、アシュリーの出奔とはまるで別の理由によって生まれていた。


それでも、彼女の大胆な「飛び立ち」に心を引きずられるように、3人の姉妹だけは胸の奥に、いまだ消え残る揺らぎを抱えていた。


休み時間が、いつもより長く感じられる。

おせちは机に肘をつき、窓の外の光をぼんやり眺めていたが、ふとポケットの中でスマホが小さく震える。家族共有のグループSMSに届いていたのは、ただひとつのURL。


「……なんだろ?」

と小声で呟きながら、彼女はそっと画面をタップする。


表示されたのは、ラジオ配信の待機ページ。

友人たちが窓際でふざけ合い、笑い声が教室に弾ける中で、おせちだけが静かにイヤホンを取り出し、耳に差し込む。耳奥を占めていた外の喧騒が、すこしずつ遠ざかっていく。


ひと呼吸の間を挟んで、陽気なジングルが教室の空気を塗り替える。


「今日は~ですねぇ、特別回になりました!なんとなんと、今テレビでもSNSでも話題沸騰中!

全日本、いや全世界が注目のあの方が飛び入りのゲストでいらっしゃってます!

ではさっそくご登場いただきましょう――“カルテット・マジコ”のホットショット……こと吉濱アシュリーさんです!」


「は~い、どうもどうも!おとといの会見から今日の校舎の屋上を経て、不眠不休でここまで飛んできました、アシュリーでーす!」


「屋上から……?ええと、いろんな意味で噂通りですね(笑)」


「ええ、聞いてて凄いなーカッコイイなーって思う話はだいたい本当だと思ってくれて結構です!……と私は思ってるけど、実態が追いつくかは今日次第ってことで!

いやー、しかしこのスタジオ、いいですね!ロックンロールのスピリットが壁にまで染みついてるっていうか。あっ、その50年代のレスポール?まさにその象徴って感じ!」


「えっ、わかるんですか!?」


「もちろぉん!たとえば50年代モノってペグがクルーソンタイプでしょ?そういう細かいとこ見逃しませんよ~。……ま、母が母なもんで、古いものにはつい目が肥えちゃいましてね!クラスメイトからは音楽の趣味がタバコ臭いなんて言われちゃいますが」


「そうなんですか!」


「ほんと急にお邪魔しちゃって、お弁当まで出していただいちゃって……VIP待遇で、つい手が震え――いや、やっぱり私なら動じないかな!」


「はは、堂々としてらっしゃいますねぇ。では改めて、4人のチーム名、“カルテット・マジコ”でよろしいんでしょうか?これまでのインタビューでは、まだ名前は聞いたことなかったような……?」


「……そう!それが今朝決まりたてのブランド名!だからこれからは、“カルテット・マジコ”のホットショットって呼んでください。いずれは、宛名にそう書くだけでウチに何でも届くようになる予定なんで、皆さんどしどしプレゼントを!」


「あぁ~頼もしい!でも、皆さん学生さんなんですよね?たしかご姉妹で活動されてると……」


「ええ、そうなんです!とはいえ、全員クセがすごくて、私が唯一の“まとも枠”……

いや、むしろ“火消し役”として呼ばれてる気もしますけど!」


「はは、それは大変ですね。ちなみに“マジコ”って“魔法”の意味で?」


「はいその通り!いや~、こっちが聞いてほしいなって思うことを丁寧にひとぉ~つずつ聞いてくれる!まさにプロの仕事って感じ。魔法、使えるもんはぜんぶ使いますよ!モットーは『世界をちょっとだけ面白く』です!」


「おお~、かっこいいですね!それでは最後に、リスナーの皆さんへ何かメッセージがあれば!」


「“カルテット・マジコ”、まだまだ序章ですから!これからド派手な花火ガンガン打ち上げていくんで、

みんな、今のうちに“推し”決めといてね!あとで“出遅れ勢”って言われても知らないから!」


「……はい、ありがとうございます! 本日の特別ゲスト、“カルテット・マジコ”のホットショット、吉濱アシュリーさんでした!」


「いやいや、まだエンディングには早いですよ?今日ここ、すっかり気に入っちゃったんで――このまま居残りで朝まで語り倒してもいいですか?」


「ええ、実はですね――今日はこのままアシュリーさんにも番組に残っていただいて、リスナーの皆さんからのメッセージ紹介にもご参加いただきます!」


「マジで!?じゃあついでにリクエスト!ギターミュージックもいいけど、実は私、90年代ヒップホップが1番好きなんで、合間合間にちょこっと流してくれたら、今後も専属でゲスト出演しちゃうかも?ほら、番組的にもそういうのって“ウィンウィン”でしょ!?」


「もちろんですとも!アシュリーさんと一緒に、引き続き番組を盛り上げていきますので、どうぞお楽しみに――!」


(ジングルが流れつつフェードアウト)


「これはひどい……」

教室の片隅で放送を聞いていたおせちは、遠いスタジオで人生の絶頂にあるアシュリーとは裏腹に、

ただただ頭を抱えて嘆くしかないのだった。


*


インターネットで同時配信されているとはいえ、所詮は空縁州のローカル放送に過ぎないはずのラジオ番組。

その電波から転がり出た「カルテット・マジコ」の名は、それにもかかわらず瞬く間に拡散され、

その日のうちに全国ニュースや各種SNSのトレンドを賑わせることとなった。


そしてこの既成事実の波が――まさしくアシュリーの目論見どおり――残る3人の迷いを、否応なく外堀から

きっぱりと埋めてしまうのである。


同じ頃、吉濱家の縁側では、おせちの落胆とまるで呼応するように、尊が独りごちていた。

「これは、あいつ、ついにやりおったな……。やれやれ、あとで叱ってやらんとのう……」


しかし、口元はすぐに緩み、ラジオのスイッチを切る手は慣れた調子で滑らかだった。カセットデッキから抜き取ったテープに、

「アシュリー:ラジオ出演」と静かに記し、それを桐箱へと大事そうに納め、さらに古箪笥の奥深くへとそっとしまい込む――。



高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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