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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
issue#02 UNDERTALE

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105/252

issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 02 07

それでもおせちは、最初あくまで冗談めかしてこう問い返してみせた。

「大丈夫?それ、アンリとジダンに負けない?」

ただその声音には、先ほどまでの警戒や冗談めかしさは薄れ、

むしろどこか乗り気ともとれる色が、無意識に浮かんでいた。


(……「何の話?」と思った人は、2006年ドイツW杯準々決勝、「フランス対ブラジル」を検索してみて!ロナウジーニョ、アドリアーノ、ロナウド、カカの4人組、“カルテット・マジコ”を擁する優勝候補ブラジルを、フランスのアンリとジダンが撃破した伝説の試合さ。ちなみにジダンが頭突きしたのはこの大会の決勝だよ!*PIKU)


「でも……いいかも。“魔法の4人組”って、そのまんまだし。ほかのより、ちょっとはピンときたって感じかな」

さなが微笑みながらそう言うと、陽の光を含んだ頬が甘い赤みを帯びる。


アシュリーは腕を組んだまま、ゆっくりと視線を空へと上げた。

「ああ、そうだな。この世界の大事な要素のうち半分からは採用されないなら、もう半分から持ってくればいい。私はそれ、好きだぞ」

(彼女にとっての“フィフティ・フィフティ”とは、音楽とサッカーのことだ)


風が校庭を抜け、制服の袖を揺らす。残る3人も、それぞれに迷いながらも、視線を交わした。


「……絶対いいって!これ、カルテット・マジコ!」

その瞬間を見逃さず、アシュリーはまるで勝利宣言のように声を張り上げる。


「……まだ、アイディア出しの途中でしょ?」

しかし、おせちは困惑したような苦笑を浮かべる。どうやら彼女は、最後まで場の“安全弁”として立ち回るつもりらしい。


「いや、もうこれしかないって。説明はできないけど、運命感じるんだよな~。

それに、今ここで決めないと、また誰かに聞かれて答えに困るぞ?――たぶん、次の休み時間に。さなも気に入ってんだろ?」


「う~ん……。もっとすごい案が出なければ、これでいいと思う」

「ウチも~……うん、もうちょっと粘ってもいいかなって」

さなとはちるは、素直にそう答えるが、その語尾にはどこか踏み切れぬ余白が残る。


その様子を「弱気」と受け取ったアシュリーは、やれやれと肩をすくめた。

「……わかってるか?こういうの、“アイディア出し”って言ってるあいだは、永遠に終わらないんだよ。

どっかで線引きしないと」

そして、そう言いながらスマホのトップ画面、その時刻表示を一瞥し、

ゆるやかに覚悟を固めるような足取りで、フェンス際へと歩いてゆく。


白い柵に手をかけ、熱のこもったまなざしで空の彼方を仰ぐ――“空を見上げる”という行為は、

アシュリーにとって、ときに鳥の本能にも似た衝動を伴うものだった。


……その朝、世界はまさに「秋うらら」の名にふさわしく、やわらかな陽光と、神の全能すら連想させるほどの欠け目なき温もりに包まれていた。

ポニーテールに縛った長い赤毛の少女が、猫のようになめらかに背を伸ばしてフェンスにもたれかかる、その姿を中心として、校舎の屋上には、“世はおしなべてこともなし”の風景が、淡く澄んだ色調のまま、どこまでも広がっている。


だがその完成された絵図は、3人の胸の奥に、むしろ名状しがたい落ち着かなさとして滞っていく。

それは、経験がそう告げていたからだ。

何も起きぬときこそ、アシュリーの落ち着きは、かえって不穏の兆しとなる。


だからこそ、3人は誰ひとり言葉を交わさず、

まるで水面下で手を取り合う共犯者のように、そっと意思をひとつにした。


「……なんだよその目?――」

訝しんだアシュリーがふと目線を返すと、フェンスの内側の広い空間に、妙な、一触即発の雰囲気が生まれる。

「――もしかしてお前ら、こういうときの私が独断専行するっていう、偏見に基づいて動こうとしたりしてないか?」

彼女は、やけに朗々とした、どのような後ろめたさもない口ぶりで、やさしく問いかけた。


「いやそんなこと……」

おせちは、咄嗟に目線を伏せて言葉を濁す。


「そうか、なら安心だな。…………ちなみに答えは当たりだッ!!」


そのひと言がすべての引き金となった。

アシュリーはフェンスにかけていた腕を引き戻すや否や、重力を振り払うような身ごなしで、屋上の柵を跳び越えた。


「!!」


その動作のさなか、細くしなった両脚――スニーカーのつま先が水平を向き、チェックスカートの裾が空気の流れで複雑に乱れる。

そして次の瞬間、制服の縁が赤い焰へと姿を変え、足元から巻き上がる熱流にあおられながら、炎が一気に彼女の全身を駆け巡った。


屋上付近の空気を全身ごとしたたかに打ちつける――その反動で跳ね上がったかのよう見えた炎の体は、校内に存在する棟々の屋根を、ひと通り舐め取っていく鮮やかな軌跡を打ち出し、まるでジェットの推進音のような轟きを撒き散らして、高度をまたたく間に引き上げていった。


炎の尾は澄みきった青空にいさましい軌跡を描きながら、雲を越え、そのはるか先へと爆進していく。


教室の窓辺にいた友人たち、グラウンドを歩いていた生徒たち、あるいは遠く小学部、中学部、

大学部のキャンパスを行き交う者までもが、その誇大的な音に気づき、一斉に顔を上げる。

おどろきや歓声、指さし、スマホを掲げての撮影、手を振って送り出す仕草が敷地内に連鎖し、誰もが天頂を縦断するたったひとつの点――ホットショットの姿を目で追った。


……まさに青天の霹靂と呼ぶべき離陸劇である。それから間もない1年生の学棟では、アシュリーの早退を報告しに行ったおせちが、

逆に彼女のクラス担任から「アシュリーが遅刻の連絡を寄越してきた」と告げられ、思わず立ち止まる――そんな一幕もあった。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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