issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 02 05
「はいクイズ――!こちら、話半ばで万事を”ご推察あそばした”我らが母上様は、一体いつこのお役人殿を門前払いしたのでしょうか?」
アシュリーが場の空気をかきまぜるように、明るく声を張って片手を挙げてみせた。
「護衛任務って言われたあたりじゃない?きっと、勝手にパレードの参加とか大統領演説の警備とか想像したんでしょ」
おせちは、ひとりの人間を完全に見限る時の口ぶりでそう応じる。
尊は気まずそうに湯呑を口元に運び、顔の半分を湯気の向こうへと隠しながら、苦笑まじりに答える。
「いやまあ……その……色々あるじゃろ?なんとかバイアスとか、人間というものには……」
「おい、神!」
アシュリーがついに声を張り、語気を強めて母を叱責する。
「ねえ、母さん?」
おせちは声を低め、ことさらに「母」という語を意識的に引き絞って、問い詰めるように呼びかけた。
「お母さん、いつも人の話は最後まで聞けって自分で言ってるぢゃん……」
さなも、ここにあどけない声での追撃を入れ、
「まあ誰にでも間違いはあるよ、ねえママ?」
親孝行のはちるは、穏便な落としどころを用意してやる。
すると、尊は観念したように小さく頭を垂れ、
「……すまぬ」
ついに、謝罪の言葉を口にした。
――ひととき、室内にはなんとも言いがたい空気が蔓延する。
「……まあ、それならば話は別じゃ。シャカゾンビが絡んでいるとなれば、背に腹は代えられぬ。
カリム氏のもとへ赴き、連中の蛮行を――未然に防ぐしかあるまい!」
尊はそう結びながら、先ほどの狼狽をどこか帳消しにするかのごとく表情を引き締め、一同を見渡す。
応接間の空気が、ようやくひと息ぶんほど緩んだのを見て取ると、
役人は机の上にそっと手帳を開き、
「……あの、念のための確認となりますが、今後、政府として“対外的な報告”を行う必要がございますため、差し支えなければ――みなさまの――その――」
と遠慮がちな声音で確認を促した。
その言葉が、静かに場に溶け込んだところで、おせちの追懐は薄明かりのなかに輪郭を失い、
意識の焦点がゆるやかに遠のいていく。
*
……深夜のアシュリーは、3人が寝静まった部屋の闇に身を潜め、
ひとり、おとといのインタビュー映像を再生していた。
画面のなかの自分は、明るく、いつもの調子で、あらゆる問いに対し不敵に応じている――
だが、その終わり際、記者がふと口にしたひとことが、心の奥底に小さな影を落とした。
「ところで、あなた方の――」
……過去と現在の自分。そのどちらにも訪れる、一瞬の沈黙。
2日前の彼女は笑顔を保ったまま言葉を探し、結局は話題をそっとすり替えた。
画面がフェードアウトしていくなか、現在のアシュリーの胸の奥には、かすかなざらつきが残る。
世界が黒く沈み、また新たな光景へと切り替わる。
*
さなは、10月の涼風が吹き抜ける帰り道の路地で、近所の人に声をかけられていた。
「そういえば、さなちゃんたち、ニュースで見たよ!あの……なんていう――」
午後の光が差し、足元にはキンモクセイとギンナンの香りが淡く漂っていた。
さなは、その問いかけに澄んだ微笑みで応じながらも、返すべき言葉が喉元で絡まり、ついには胸の奥にとどまったままになる。
ただ風だけが、場の空気を満たすように緩やかに流れていった。
やがて、その戸惑いの余韻ごと場面は光に溶け、ひとつの共通項を軸にした回想は最後の情景へと移ろっていく。
*
それは、今朝――ついさきほどの、はちるの姿。
陽光まばゆい教室は、凱旋の熱気に包まれていた。
クラスメイトたちの歓声が飛び交い、祝福と興奮の渦が渾然と渦巻いている。
「結局さ――」
しかし、その何気ないひとことが、教室のざわめきの只中でふと立ち上がり、
はちるの耳元で、時の流れを止めるように残響した。
この鮮やかな光景すら、やがて背景のなかへと溶けていき、薄れながら静かに幕を下ろす。
*
こうして、人々からの無邪気な問いかけと、それにうまく応じきれなかったことによって積もった苦い感覚とを胸に抱きながら、吉濱家の姉妹たちは、それぞれの時間を過ごしていた。
その「名もなき戸惑い」が4人の少女と、この物語を、朝の屋上へと自然に導いたのである。
……校舎に満ちるざわめきのはるか上、
屋上のコンクリートには、4つの影が向かい合って立ち、かすかな頼りなさを孕んだ輪を描いていた。
おせちは、ゆっくりと背筋を正し、真正面を見定めて、口を開く。
「……チーム名を、今から決めよう」
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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