5.帰郷
「アールディクス王国へ行かせていただくことはできませんか?」
とりあえず、私はウィルに訊ねてみた。
「フィオナ~。俺達はとりあえず新婚!離れるのヤダ!」
駄々っ子?後ろから抱きつく…んじゃなくて、体重かけてきます。・・・重い。
「それではウィルも一緒にどうですか?ウィルは碌にうちの両親と顔合わせしていないでしょう?」
どうしたことか、突然ウィルが緊張し始めた。さっきまで重かったのに、今や床にセイザをしている。ウィルはキョウディッシュ王国の王太子なのよね?
「ウィル……緊張し始めたの?早くない?まだいつ行くかも決まってない段階で」
夜会で私を掻っ攫っていった人物と同一人物とは思えない緊張っぷり。
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数週間後、アールディクス王国への訪問が決まった。王族の国境を越えての移動なので、手続きが色々面倒だったみたい。―――私は関与してないけど。
目的は、獄中のルード殿下との面会。と私の実家訪問。
ウィルの中では実家訪問の比重が重いみたい。
馬車の中でもウィルは唱えていた。「私はお嬢さんと結婚いたしました、キョウディッシュ王国の王太子をしてますウィルフレッド=キョウディッシュと申します。先日の夜会において突然お嬢さんにプロポーズをした挙句、そのままキョウディッシュ王国に連れ去り、申し訳ありませんでした」と。
私は思う。長い!本番絶対噛む。ウィルの方がうちの親より立場上だし、そんなに緊張するかなぁ?まぁ、長旅に暇しなくていいけどね。
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久しぶりの我が家~!やっぱりなんか落ち着くわ~!!
「ただいま~♪」
「「「お嬢様が帰ってきたぞー!」」」
使用人の一人がスチャッとホラ貝を構えた。「ブフォフォフォフォ~~~」と鳴り響く音。戦でも始まるの?家の中なんですけど?
中から、お父様・お母様が現れた。
「突然いなくなって心配したぞ?無事だったんだな?」
「こちらのウィルフレッド殿下と婚約し、キョウディッシュ王国の王宮で平和に生活をしておりました」
「初めまして。ウィルフレッド=キョウディッシュと申しまちゅ。先日お嬢さんと婚約させていただきました。先日の夜会において突然お嬢さんにプロポーズをした挙句、そのままキョウディッシュ王国に連れ去り、申し訳ありませんでした」
やっぱり面白い感じで噛んだ。
「はははっ、まぁあのままあの場にフィオナがいたら晒しものになっただろうから、結果オーライというやつか?しかし、うちに挨拶に来るのが遅いんじゃないか?」
お父様から若干の殺気が?!
「それはですね…あのルード殿下にいろいろと復讐を試みていたら遅くなりこんなになってしまいました。申し訳ありません!」
ウィルが平謝り。ルード殿下への復讐を提案したりなんなりは私も一枚かんでるから私も頭を下げた。
「お父様、お母様、これからルード殿下に面会に行こうと思うの。復讐の仕上げかしら?」
「なんなの?楽しそうね?私もご一緒したいわ~」
面会人数って限られるでしょ?どんな罵詈雑言を言われるのか?
「復讐は内密にやってるからお母様にも秘密で~す。事後報告ならあとでするわよ、これまでしてきたこと全部」
頬を膨らませて抵抗している。いい年齢のはずだけど、まだまだ可愛らしいなぁ。
ほら貝はいいですよね。あの独特の音が。と、私の感想はともかく、フィオナちゃんの実家の騎士さんは常備してるの?けっこうかさばるんじゃない?