4.対ルード殿下
「特に何もないのに贈り物をするのはおかしくない?」
「そうだな…。しかも、アールディクス王国の王太子殿下にのみだしな。婚約祝いとかアールディクス王国から来ていないか?」
ウィルの側近が応える。
「多くの国から来ていますよ。まぁ、あれだけ多くの国の前での宣言でしたし。当然アールディクス王国からも」
「ふむ。いつもは礼状だけ書いて終わるのだが、アールディクス王国には銀食器セットとその理由まで書いて送ろう。聡い王太子殿下ならば使い方などわかるだろう」
礼状…いっぱい書かなきゃなんないなぁ。
それにしても、アールディクス王国の王太子殿下はルード殿下とご兄弟のはずなのに、全然違うのよね。頭の出来が。ルード殿下は甘やかしたわけじゃないだろうに、なんであんなに違うかな?
~@アールディクス王国、王太子殿下
キョウディッシュ王国から、礼状と共に銀食器セットが届いた。使い方は、『銀食器を普段使いとして使い、王太子殿下に毒を盛ろうとしている愚か者を炙り出してください』ということをだった。
私を毒殺して得をするのは―――ルード。
後ろ盾だったフィオナ嬢と婚約破棄をするなど確かに愚か者だな。笑いがこみ上げてくるがここは抑えよう、腐っても実の弟。
後ろ盾を自らの手で放棄し、王城でも冷たい視線の中で生活していることだろう。針の筵じゃないのか?
そんな自分を俯瞰して見た時に、私がいなければ継承権が繰り上がり、国王になることができると思ったんだろうなぁ。
暗殺は私には護衛がたくさんついているからとやめたんだろう。
それで、毒殺か……。なんとも直情型で安易。
毒殺はなぁ、結構足がつきやすいんだけどわかってるのかな?そのあかつきには処刑なんだけど?
それにだなぁ、あまり公にしていないのだが(陛下には伝えた)、王太子妃が妊娠しているんだよなぁ。その子がルードよりも王位継承権が上になる。
つまりだ。私の毒殺に成功したとしよう。王位継承権については王太子妃の腹にいる子の方が王位継承権が上なんだよなぁ。
さらには、毒殺の疑いがかかり、最悪処刑!
なるほど、キョウディッシュ王国が『愚か者』と表現する理由もわかる。弟だからとなんとかしてやりたかったんだがなぁ。
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「アールディクス王国の陛下も頭を悩ませる問題よね?」
「こういう時は、さっさとルード殿下を断罪して王太子殿下に玉座を渡すべきだなぁ」
「引退?」
「そう。自分の子が起こした問題だし」
その後本当に銀食器を普段使いにしたアールディクス王国の王太子殿下。
毒殺は免れたらしい。
最新の毒なら銀食器に反応しないものなどあるのに、レトロな毒を使用したものだと私もウィルも思った。
案の定ルード殿下は捕まって、今は地下牢に拘留されているらしい。
なんだか、私の悪口を言っていたりするよう。
「フィオナの悪口を?キョウディッシュ王国から暗部を出して、暗殺させようか?」
とかウィルが言う。物騒だからやめてもらった。
「どうせ処刑とかになるんでしょ?遅かれ早かれだよ」
男のシンボルをちょん切って、一生鉱山労役かもしれませんよ?
私は処刑は一瞬だから、生涯苦痛・屈辱を与えるような刑の方が極刑だと思います。