3.~ルード殿下視点
どういうことだ?キョウディッシュ王国の国王から正式に次期国王には現王太子がなること!という書簡が届いたらしい。
対して俺はというと、スザンナ嬢との婚約を表明して以来、何故か俺付きの使用人達の視線まで冷たい。
俺は何も間違ってことはしていない!愛するスザンナと一緒になって何が悪いんだ?
「ルード殿下、側妃様がルード殿下をお呼びです」
いつもなら笑顔で接するはずの執事のような仕事をしている男までが俺に冷たく接する。
「母上、ご健勝で何よりですっ!」
「そんなことはどうでもいいのです!フィオナと婚約破棄をしたと聞いたのですが?本当ですか?」
「はいっ!あのような、可愛げのない女ではなく、実に可愛らしいスザンナという女性と婚約を結び直しましたっ!」
「その、スザンナ様のご実家は?公爵家なの?侯爵家?まさか伯爵?」
「えーっと、最近まで市井で暮らしていたと聞いてます。実家の爵位は子爵だったかな?」
「あぁっ」
「あ、側妃様っ!」
倒れそうになる母上を、母上の侍女達が支える。なんかおかしいだろうか?
「お前は王族なのですよ?その伴侶を子爵家の娘から選ぶなんて、しかも最近まで市井で暮らしていた?王子妃として生活できるのかしら?」
「母上、彼女が本気になればそのくらい!」
「いつ本気になるのですか?卑しい血筋を王家に入れるなんて……。私は育て方を間違えたのでしょうか?ああ、陛下に言って、王族としての権利を全て剥奪してもらおうかしら?ああ、その時は母も共にしますよ?」
「会ってもみないで酷いです。爵位だけで人を判断するなんておかしいですよ!」
「爵位が高ければ確実に高度な教育を受けていますからね。淑女教育も。スザンナと言いましたか?彼女は淑女としてのマナーをキチンと出来るのでしょうね?母に恥をかかせないで下さい」
スザンナは口を開けて大きな声で笑う。―――マナー違反だ。魅力的ではあるが。彼女の魅力は貴族らしからぬ所だ。マナー教育を受けては彼女のいいところが潰れてしまう。
「私は彼女の魅力は貴族らしくないところだと感じています。そんな彼女にマナー教育を受けてもらっては彼女のいいところを潰してしまう。それは避けたいのです」
「そうなの……。同じことを陛下の御前でも言ってごらんなさい」
「陛下ならわかってくださる!」
「はぁ」というため息が至る所から聞こえたが、どういうことだろう?
「どこからそのような自信がくるのかわかりません。陛下なら、お前の婿入り先を上手く見つけてくれるでしょう。さもなくばそのスザンナという令嬢とどこかの塔に幽閉ですね。ゴメンなさい、無力な母で」
何故、母上がそのように謝罪までするのでしょうか?
そもそも、俺と婚約破棄をしてすぐにキョウディッシュ王国の王太子と婚約をしたフィオナが悪い。あいつが泣き縋って俺に側妃でいいから~とか言えば丸く収まったんだ。
とはいえ、あいつ(あいつの実家)の後ろ盾があったって国王になれるかどうかはわからない。兄上は健康だし、王太子妃の実家は公爵家だから後ろ盾も盤石。
兄上がいなければ俺が国王では?さすが俺だな。
兄上には護衛がたっぷりついているから暗殺は無理がある。―――毒殺か?
健康な兄上がいきなり倒れるのも無理があるが、犯行が俺に向かないようにしなければな。
単純ー。そんなだから、国王になれないんだよ~。と思うのですが?