第8話:闇に溶ける者
俺は進化の選択肢をじっくりと見つめた。
(防御力を高めるか、捕食能力を強化するか、それとも……)
俺の目は、三つ目の選択肢に引き寄せられた。
《シャドウ・ミミック - 闇に溶け込む擬態能力を獲得》
敵から身を隠し、確実に狩るための能力。戦いを避けるだけでなく、逆にこちらから仕掛けることもできる。俺にとって最も理にかなった選択だった。
(決めた……!)
《シャドウ・ミミックへの進化を開始します》
その瞬間、俺の体が熱くなった。内部から沸き上がる力が全身を駆け巡り、肉体が変化していくのがわかる。表面が黒く滑らかに変質し、宝箱の木目が闇に染まる。感覚が鋭敏になり、周囲の気配をより正確に感じ取れるようになった。
《進化完了。新スキル「影潜り」を獲得しました》
(影潜り……?)
俺はスキルの詳細を確認する。
《影潜り:自身の体を影に同化させ、一定時間潜伏できる。移動も可能だが、連続使用には制限がある》
(これは……使い方次第で、かなり強力なスキルになる!)
俺はさっそく試してみることにした。洞窟の壁際にある影へと意識を集中すると――スッと体が沈み込み、影の中へと溶けていった。
(すげぇ……! 完全に壁と一体化してる!)
俺は慎重に影の中を移動する。感覚的には地面を這うようなものだが、障害物にぶつかることなく進むことができる。移動速度はそれほど速くないが、気づかれずに近づくには十分だった。
(これなら……待ち伏せの精度をさらに上げられるな)
俺は興奮を抑えながら、次の獲物を探すことにした。この新しい能力を試すには、絶好の機会だったからだ。
しばらく影の中を移動しながら獲物を探していると、遠くで何かの足音が聞こえた。冒険者か? それとも魔物か? 俺は慎重に距離を詰めながら、音の主を確認した。
(……あれは、ゴブリンか)
目の前には二体のゴブリンがいた。腰に短剣をぶら下げ、何やら会話をしているようだった。よく見ると、片方が手にしているのは食料だろうか? 何かの肉の塊をぶら下げている。
(こいつらを狩れば、一気に成長できるかもしれない)
俺は静かに影から這い出し、慎重に接近する。ゴブリンたちは俺の存在にまったく気づいていない。
(まずは、一匹を確実に仕留める!)
俺は「影潜り」から解除し、一瞬で飛び出した。そして――
「ガバッ!」
ゴブリンの一匹を丸呑みにした!
「グギャアアッ!?」
もう一匹が慌てて武器を構えるが、俺は影へと潜り込んで逃れる。完全に混乱しているゴブリン。俺はもう一度影から飛び出し、残ったゴブリンにも襲いかかった。
「グギャ……!」
短剣を振るわれるも、影に潜ることで簡単に避けることができた。攻撃の届かない場所から、俺は確実に獲物を狩る。
《ゴブリンを捕食。経験値を獲得》
《レベルが3になりました》
(よし……! これが、進化の力か)
俺は新たな力を手に入れ、さらなる狩りへと向かうことにした。この世界で生き延びるために、そして、俺自身がもっと強くなるために――!