第16話:暗闇の決着
影の刃を操りながら、俺は冒険者たちを翻弄していた。しかし、戦士、レンジャー、魔術師の三人は徐々に俺の戦法に順応し始めていた。影潜りを使っても即座に反撃を受けるようになり、優位に立ち続けるのが難しくなっていた。
(さすがに熟練の冒険者たちか……このままではジリ貧だ)
魔術師は俺の影潜りを封じるため、定期的に光魔法を放ってくる。レンジャーは動きを読むことで俺の奇襲を防ぎ、戦士は俺を捉えたら一撃で仕留めようと構えている。
(ならば、ここで一気に決めるしかない)
俺は新たに手に入れたスキル「影槍」を発動した。
《スキル「影槍」発動》
瞬間、俺の影が地面を這うように伸び、漆黒の槍となって形成される。この槍は単なる物理攻撃ではなく、対象の魔力をも蝕む特性を持っていた。
「来るぞ!」
戦士が警戒の声を上げるが、俺はすでに影潜りを利用して彼らの視界の外に移動していた。
「どこだ!? 姿が見えない……!」
「気をつけろ、影から出てくるぞ!」
その言葉を合図に、俺は影から飛び出し、影槍を魔術師に向かって投擲する。
「くっ!」
魔術師は間一髪で回避しようとするが、影槍の先端が彼のローブをかすめ、魔力が吸い取られていく。
「ぐっ……! 魔力が……!」
「おい、大丈夫か!」
レンジャーが慌てて魔術師に駆け寄る。しかし、それこそが俺の狙いだった。
(……隙だらけだ!)
俺は影の刃を両腕に形成し、音もなく接近する。そして、一瞬のうちにレンジャーの背後を取った。
「何っ――」
その言葉が終わる前に、俺は影の刃を彼の脇腹に突き立てた。
「ぐあっ……!」
レンジャーが苦悶の声を上げて地面に倒れ込む。これで戦力が一人減った。
「貴様ぁぁ!」
戦士が怒りに震えながら大剣を振り下ろしてくる。しかし、その動きは感情に任せた隙だらけのものだった。
俺は影潜りで即座に回避し、戦士の足元に影縛りを発動する。
《スキル「影縛り」発動》
「くそっ……動けん……!」
影の拘束が戦士の動きを封じる。その隙に、俺は再び影槍を生成し、一気に魔術師へと突き立てた。
「ぐっ……!」
魔術師は魔法障壁を張るが、影槍はその防御を貫通し、致命傷ではないが大きなダメージを与えた。
「これで……終わりだ」
俺は戦士に向かって最後の一撃を放とうとした。しかし、その時だった。
「ま、待ってくれ……!」
戦士が必死の形相で叫んだ。
「……なぜ助けを乞う?」
「俺たちは……お前を狩るために来たわけじゃない。ある依頼で、この洞窟を調査していたんだ……」
「……依頼?」
意外な言葉に俺は動きを止めた。
「詳しく聞かせてもらおうか」
俺は影の刃を戦士の喉元に突きつけたまま、彼の言葉を待った――。