第14話:闇に舞う狩人
冒険者たちの動きを影の中からじっと観察する。彼らは洞窟の奥へと慎重に進んでいた。
「ここまで来る途中、魔物の気配はなかった。だが、何かがおかしい」
鎧をまとった戦士が周囲を警戒しながら低く呟く。
「気配がないのはむしろ異常だな……普通なら小型の魔物がうろついているはずだが」
レンジャーが弓を構えながら周囲を見回す。魔術師もまた、慎重に杖を握り締めている。
(俺の影潜りの力がどこまで通じるか……試してみるか)
俺は彼らの真後ろまで影を伸ばし、じりじりと忍び寄る。呼吸を殺し、音を立てずに気配を消す。完全な暗闇ならともかく、影がある限り俺の存在は察知されにくい。
(まずは、先制攻撃だ)
俺は影の刃を具現化し、素早くレンジャーの背後に迫る。そして、一気に振り下ろした――。
「うわっ!?」
レンジャーが咄嗟に身を捻り、寸前で回避した。しかし、彼の肩に浅い傷が刻まれる。
「敵襲! 気をつけろ、見えない何かがいる!」
「チッ、回避したか……だが、次はそうはいかない」
俺は影の中へと素早く潜り込む。視界から完全に消えた俺に、冒険者たちは混乱しながら警戒を強めた。
「この魔物……影の中に潜んでいるのか?」
「影を操る能力者か……厄介な相手だな」
魔術師が鋭い視線を周囲に向ける。そして、次の瞬間――
「《ライトフラッシュ》!」
閃光が洞窟内に炸裂した。強烈な光が影を薄れさせ、俺の隠れ場所を奪っていく。
(くっ、影が消えていく!?)
光の影響で一瞬、俺の姿が露わになる。そこを狙って戦士が大剣を振り下ろしてきた。
「もらった!」
だが、俺は素早く横へと跳び、刃を躱す。
(影の力を封じられると厳しいな……だが、俺にはまだ手がある)
俺は影の刃を両腕に纏い、形状を変化させる。右腕には鋭利な槍のような突き刺し攻撃用の影刃、左腕には鞭のようにしなる形状の影刃を作り出した。
「影の力を侮るなよ……!」
俺は影の鞭を素早くレンジャーに叩きつける。避ける間もなく、彼の足が捕らえられた。
「しまっ……ぐあっ!」
影の槍を突き出し、レンジャーの肩に突き刺す。致命傷には至らないが、十分なダメージを与えた。
「くそっ、こいつ……!」
魔術師が即座に反撃の魔法を詠唱する。
「《ファイアボルト》!」
炎の矢が俺に向かって飛んでくる。だが、俺は影潜りを使い、地面の影へと逃げ込む。
「無駄だ……影がある限り、俺はどこへでも潜むことができる!」
俺は一瞬で背後に回り込み、影の刃を振るう。魔術師は咄嗟に魔法障壁を張ったが、影の刃はその表面を裂き、微かな傷を与えた。
「バカな……!」
(影の刃は魔力を帯びた攻撃にも干渉できる……これは使える!)
俺はさらに攻撃を仕掛けようとしたが、戦士がすかさず間に割って入る。
「これ以上好きにはさせんぞ!」
戦士の一撃をまともに受ければ、さすがに危険だ。俺は影潜りで即座に離脱し、再び距離を取る。
(……まずいな。連携を崩さないと、俺の戦法が通じなくなる)
冒険者たちは既に俺の戦い方をある程度理解し始めている。次に仕掛けるなら、確実に仕留められる一撃が必要だ。
(なら……新たな力を試すか)
俺は影の刃を再び変化させ、さらなる攻撃を準備した。
次の一手が、この戦いの決着を左右する――!