第13話:闇に潜む狩人
俺は影の中に潜みながら、冒険者たちの動向を探っていた。彼らは警戒しながらも着実に洞窟の奥へと進んでいる。
「影を操る魔物か……厄介な相手になりそうだ」
「そうだな。だが、情報さえ掴めば対策は立てられる。まずは注意深く周囲を調べるんだ」
レンジャーが地面に跪き、慎重に足跡や戦闘の痕跡を確認する。どうやら戦闘経験は豊富なようだ。戦士と魔術師も周囲に目を光らせ、隙を見せることなく警戒している。
(なるほど……不用意に飛び出せば逆に狩られるか)
俺は攻撃のタイミングを慎重に計りながら、影の中でじっと様子を伺う。
「……ん? これは……」
レンジャーがふと足元を見て目を細めた。どうやら、俺の影の刃が刻んだ痕跡に気づいたらしい。
「この切り傷……普通の剣ではないな。おそらく影の力を使った何かの攻撃……」
「影で攻撃する魔物なんて、聞いたことがないぞ」
魔術師が呟くと、戦士が剣を構えながら警戒を強める。
「だが、確実に何者かがいることは間違いない。このままのんびりしていたら、こちらが狩られるぞ」
戦士の言葉に、レンジャーと魔術師も頷いた。彼らは俺の存在を認識し、完全に警戒態勢に入っている。
(なるほど、なかなかの手練れか。ならば、こちらも慎重に動くとしよう)
俺は影を駆使して位置を変えながら、彼らの背後へと回り込んだ。影の刃を握りしめ、一撃で仕留める機会を狙う。
その時――
「……そこか!!」
突然、レンジャーが矢を放った。鋭い弓矢が俺の影を貫くように飛んでくる。
(見破られたか!?)
俺は即座に影潜りを使ってその場を離れる。しかし、レンジャーの狙いは正確で、俺が逃げた先にも矢が放たれていた。
「ちっ……やるな」
俺は地面を転がりながら、影を使って視界を遮る。だが、戦士がその隙を逃さずに突進してきた。
「そこだっ!!」
巨大な剣が俺の潜んでいた影を裂くように振り下ろされる。咄嗟に跳躍し回避するが、次の瞬間、魔術師が詠唱を完了させた。
「《ライトブラスト》!!」
閃光が洞窟内に広がり、俺の影の力を削ぎ取るように襲いかかる。
(くっ……これは、影に潜む俺にとっては最悪の魔法だ!)
光の魔法を浴び、俺の身体が鈍くなる。影の力が薄まり、一時的にスキルの発動が制限されてしまう。
「今だ! 仕留めるぞ!」
戦士が剣を振り上げ、俺に向かって突進してくる。
(このままでは……!)
だが、その時、俺の中で何かが目覚めた。
《新スキル「影分身」獲得》
意識するよりも先に、俺の影が分裂し、三体の分身を作り出した。
「なっ!? どれが本物だ!?」
冒険者たちは動揺し、一瞬の隙が生まれる。
(今だ!)
俺は分身を囮にし、影の刃を戦士の背後から振るう――。