-96- 憂(う)さ
出世できないと心の憂さとなる。『大して仕事の出来じゃ変わらんと思うが、なぜヤツだけが…』といったような憂さで、自棄酒を飲みたくなる訳です。^^
橋場は自棄酒を飲んでいた。自分よりは数年後に入社した明地が支社長を命じられたからである。社長の遠い縁戚というだけで入社した明地だっただけに、社長のお抱え運転手から出世してきた橋場としては面白い訳がなかった。
とあるスナックで、橋場がカラオケで歌っている。曲は超有名な演歌の大御所の曲♪なみだ船♪だ。橋場は泣いて歌った。
「部長、何かあったのかな…」
「馬鹿野郎! 決まってるだろ、支社長の一件さ…」
「ああ、明地さんに決まったからなぁ~」
そこへ、もう一人の課長が話に割り込んだ。
「うちとすりゃ、初めて展開する支社だからな…」
「社長には覚えがめでたかった部長だけに、ご自分だと思われていたか…」
「だろうな…」
「俺達が慰めるしかないか…」
「ああ…」「ああ…」
橋場の部下である三人の課長は、思いを共有した。
別の者に先を越されて出世が出来ず、憂さとなっとき、自棄酒で晴らすしかないですよね。橋場さん、気落ちせず、出世は長いスパンで考えましょう。^^
完




