表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/100

-92- 祈祷(きとう)

 合格祈願の祈祷(きとう)があるように、世知辛い昨今では出世したいばかりに出世祈願で祈祷する人が絶えない。その気持は分からないでもないが、神様や仏様とて、『はいはい、分かりました。では、そのように…』と外面(そとづら)でお受けなされても、内心では『¥5ではなぁ…』とお思いになられるかどうかは別として、そう容易(たやす)く願いのお叶えになるとは思われません。^^

 大企業に勤めるサラリーマンの豚尾(ぶたお)は、今度こそ係長補佐になるんだっ! と意気込んでいた。豚尾がいくら意気込んでも、出世だけは本人の気持で成るものではない。^^ そこで豚尾は、神社仏閣にお参りして、出世祈願の祈祷をしてもらうことにした。出世のため、それなりに出資するのは仕方がない…と、豚尾は祈祷料を(はず)んだ。神様や仏様[神社仏閣の関係者を含む]にとってはホクホクするようないい御祈祷である。^^

「豚尾君、ちょっと…」

 課長の牛皮(うしかわ)が豚尾を課長席から手招きで呼んだ。

「はい…」

 豚尾は祈祷ご利益が…と、瞬間、思った。

「君、四月から係長だ。頼みますよ…」

「ええ~~っ!!」

 豚尾は係長補佐かと思っていたから、もう一階級上の係長と言われ、驚いた。

「どうしたんだね? そんなに驚いて…」

 牛皮が笑顔で豚尾の顔を(うかが)った。

「いえ、別に…」

 二階級上ですよっ! と言おうとしたが、そうとも言えず、豚尾は心に留めた。

「まあ、そういうことだから…。以上です」

「はあ、どうも…」

 豚尾はデスクに戻りながら、夢ではないだろうな…と現実を疑った。この大企業では細かな職階制が敷かれていて、平社員→係長補佐→係長→副課長補佐→副課長→課長補佐→課長→副部長補佐→副部長→次長補佐→次長→部長補佐→部長と昇進する職階になっていた。^^

 まあ、とにかく出世できてよかったですね、豚尾さん。祈祷の甲斐がありました。^^ 


                   完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ