-90- 目的 3
-11-、-39-と同タイトルのお話となりました。^^; あなたは何のために出世したいのですか? と問われたとき、コレコレの目的のためです・・と、すぐに答えられる人は少ないだろう。それはただ単に、自己顕示欲、名誉欲といった自分の欲だけで出世したい人が多いということを意味します。悲しい話ながら、人は、人の上に立ちたがったり、目立ちたがるんですねぇ~。^^
専務の虎山は、ついにライバルの常務、龍川を押さえ、役員会で社長への登竜門、副社長の椅子を確実にした。だが、この話には少し裏があった。 役員会が開かれる前夜、虎山は密かに龍川の邸宅を訪れていたのである。
「竜川さん! どうか、ここは一つ、私に膝を屈して戴けないだろうか…[土下座から立ち上がる]。私が社長になった暁には、あなたを次期、副社長へ必ず、必ず、推挙致しますから…」
虎山は土下座したあと立ち上がり、龍川の手を固く握りしめると涙声で頭を下げた。
「と、虎山さんっ!」
龍川は、虎山の涙の懇願に感極まった。虎山がそこまでして副社長に出世したかった目的はただ一つ、妻の権威を押さえつけるためだった。毎度毎度、「あなたは、どうせ社長になれなんでしょ、フフフ…」と小馬鹿にされていたのである。そんな妻を見返すには、副社長の椅子に何が何でも座らねばならなかった。その一つの目的を果たすために、虎山は態々(わざわざ)、龍川の邸宅を役員会の前夜、訪れたのだった。会社をドウするコウするという目的のためではなく…。^^
出世したい目的は、こんな小さな目的を果たすために必死になることもある訳です。^^
完




