-85- 得失(とくしつ)
出世の得失を考えてから出世を目指すのは理に適っている。出世したとして、必ずしも出世前より得たものが多いとは限らず、失くしたものが多い場合もあるということです。^^
皺川は出世を目前にしてアレコレと出世した場合の得失をプロレスの試合のように考えていた。
『いや、課長を見ていたら結構、大変そうだからな…。昨日だってお得意先の接待で二日酔いだよって言ってたからな…』
こりゃ、出世しない方がいいぞ…という思いが増してきた。
『いやいや、出世すれば家族や周りの者に少し下から目線で見られるし、こちらからは地位や名誉があるから上から目線で話せるしな…』
やはり、出世した方が得るものの方が多いか…と、出世を目指そう…という考えが、出世しない方がいいという考えを押さえてきた。ジャッジがワン、ツーとリングで数える。そのとき、出世しない方がいい…という考えが出世を目指そう…という考えを危ういところで撥ね退けた。
『いやいやいや、最近は週に一度は接待ゴルフに疲れてマッサージだよって課長も言っていたからな…』
ふたたび、出世しない方がいい…という考えが必殺技のコブラツイストで出世を目指そう…という考えをギブ・アップさせようとした。
『とはいえ、出世は捨てがたい…』
その苦痛に耐え、出世を目指そう…という考えが出世しない方がいい…という考えをコブラツイストを撥ね退け、ブレーンバスターの逆技でノック・アウトしてゴングが鳴った。
人は、失くすものの方が得るものより多い場合でも出世したがるんですね。^^
完




