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-82- 街道

 年を召された高齢者の方々ならお分かりのはずだが、昭和の頃、♪出世街道♪という曲があったように記憶する。私の子供の頃、流行(はや)っていた曲で、ヒラヒラヒラヒラと扇子片手に女性歌手の方が歌っておられたが、^^ どうも出世するには街道というルート[経路]を辿(たど)らねばならないようです。^^

 草野は、ただひたすら、出世街道を歩んでいた。だがこの街道には多くの難所が待ち構え、草野の行く手を(さえぎ)ろうと待ち構えていた。

 腹が満たされた昼過ぎ、草野はいつの間にか自分のデスクでウトウトしながら夢を見ていた。

━ ━ ━

『あのう…この先に係長という宿場はございますかな?』

『へえへえ、係長でございますか? 係長ならば、ここから一里ばかり先でごぜぇ~ますが…』

『さようで…』

『お代は、ここに…』

『へえ、有難うごぜぇ~やす。お気をおつけなされて…』

 奥から姿は見せない(あるじ)の声がした。草野は峠の茶屋で草団子代と茶代を床几に置くと、振り分け荷物を肩にかけ、立ち上がった。草野は思った。一里先といえば4kmだな…と。夢の中だから、そんな思いに駆られるのである。^^ こりゃ急がんと、日が暮れるぞ…と、また草野は思った。草野は早足で街道を歩み始めた。すると妙なもので、瞬く間に宿場が前方に見えてきた。夢の中だから、これも超特急で着く訳である。^^

『この宿場は係長でございますかな?』

━ ━ ━

「ああ、そうだよ…」

 どこかで聞きなれた声がした。薄っすら(まぶた)を開けると、目の前に係長が立っていた。草野は夢から目覚め、ハッ! とした。

「草野君、昼過ぎだから眠いのは分かるが、ウトウトされちゃ困るな…」

 係長の枕崎が笑顔で言った。草野は草枕は職場じゃ(まず)いな…と、夏目漱石の小説、草枕のように思った[草野と枕崎だから草枕です^^]。草野は確かに街道を歩んで係長に辿り着いてはいた。だが、出世とはいかなかった・・と話は、まあこうなる。^^

 出世街道は確かにあるようです。ただ、その街道は目には見えませんから、辿るのが難儀なんですね。^^


                   完

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