-81- 方法
出世する方法があれば、誰だって教えてもらいたいだろう。^^ 今風に言えばノウハウである。
とある地方の市役所に勤める本松は出世を目論んでいた。だが、そう簡単に出世が叶うものではない。そこで本松は考えなくてもいいのに考えた。^^ 何か出世する方法はないだろうか…と。二年後輩の竹川は、コレといって仕事が出来る訳でもないのに係長になり、今年の春には管理職の課長補佐にまで出世していた。本松とすれば、忌々(いまいま)しい限りだったが、こればかりは上層部が決めることだからどうしようもなかった。そこで本松は竹川にそれとなく訊ねてみることにした。
「何か昇進する方法とかあるんですか、竹川さん?」
後輩に敬語遣いで話すのも腹立たしかったが、そこはそれ、出世のためだ…とばかり、グッ! と我慢して、小声で訊ねてみた。
「そんなものはありませんよ、本松さん。あるとすれば、先読みですかね…」
「そうですか…」
本松は、いいことを聞いたぞ…とばかり、次の日から実践することにした。仕事の先読みなら本松にも出来そうに思えた。ところが、である。その先読みで本松は大失態をやらかしてしまったのである。始末書を書く破目となり、出世どころの話ではなくなった。そんな折り、ショボく落ち込む本松のデスクに近づき、竹松が小声で呟いた。
「本松さん、一つ、言い忘れました。先読みは大事なんですが、綿密な先読みでないと…」
言い終わると、竹川はスゥ~っと何も話さなかったように本松のデスク前から去った。
出世する方法は、綿密であることが求められるんですね。^^
完




