-77- 善い人悪い人
出世できる人は善い人なのか? はたまた、悪い人なのか? を第三者になった気分で客観的に考えれば、ややこしい話になります。善い人(内心も善い人)、善い人(内心は悪い人)、悪い人(内心も悪い人)、悪い人(内心は善い人)と分けられるからです。内心までは分かりませんからね。^^
国会の予算委員会で、発覚した問題に関する集中審議が始まっている。
「大臣はそうおっしゃいますが、事実、こうしてここに領収書のコピーがある訳ですから、そんな答弁は怪しいでしょう!」
「熊爪財務大臣…」
鮭川予算委員長が、か細い声で小さく言う。
「コピーがあるのですから、そういった内容が行われていたのは事実でありましょう。私が申しておりますのは、その事実があったにせよ、法に抵触する行為であったのか? ということでございます。現在、司直によります捜査が行われている以上、行政府の立場としてこれ以上、審議を深めるのは如何なものか、と考えておるところでございます…」
「委員長っ!」
大臣が言い終わるか言い終わらないうちに、質問者の猟師委員がサッ! と手を上げる。
「猟師君…」
「みそこないましたよ、大臣っ! 参考人を招致すると決めましたよねっ! それじゃ、意味ないじゃないですかっ!!」
大臣が軽く片手を上げる。
「熊爪財務大臣…」
「飽くまでも今の段階では灰色としか申し上げようがありません。善悪は、当のご本人が一番よくご存じでしょうから…」
「猟師委員…」
「そりゃそうでしょうよ。善い人か悪い人かは自分が一番よく知ってますからね。それは大臣がおっしゃるとおりです。それは、そうとして、私達はこのまま手を拱いていていいのかっ!? って話ですよ、大臣…」
「質問時間が過ぎております。簡潔に答弁をお願い致します。熊爪大臣…」
「委員の意向は、よく理解を致しました。善処し、前向きに対処して参りたいと、かように考えるところでございます…」
「漁師君の質問は終わりました。三十分間、暫時、休憩を致します…」
こうして灰色議員が善い人か悪い人かの審議は続くことになった。
出世しても、良い人か? 悪い人か? と裁かれるような偉い人物にはなりたくないですよね。^^
完




