-68- 決断
出世は、そのときどきで決断する優劣にかかっていると言っても過言ではないだろう。重要な事態に臨んで決断するのは本人だから、他人がとやかく言う筋合いではないからです。^^
ここは備中高松城を水攻めにしている羽柴筑前守秀吉様の陣所である。
「ぅぅぅ…」
「と、殿っ!! お気をお強う持たれいっ! これは天が与えたもうた好機っ! て、天下をお取りなされませっ!!」
都からの早馬の使者が齎した急変を告げる文を読み、思わず狼狽えられた秀吉様に叱咤激励しながら、軍師、黒田官兵衛が詰め寄る。秀吉様は突然、目の前に現れた出世の道を前にして、決断の時を迎えられていた。しばらくして、秀吉様は泣き乱れた声を静め、冷静かな声で語り始められた。
「毛利に通じる街道は全て遮断せよ。怪しき者はその場で切り捨て、一兵たりとも通すでないっ! 備中高松城主、清水宗治を自刃させれば、それでよい…」
「ははっ!!」
「清水宗治の自刃が済めば、あとは…」
一瞬、秀吉様の声が止まった。そして静かな声は決断の怒りの声へと急変した。
「ひ、ひたすら駆けに駆けて、御屋形様の仇を討つぅ~~~!!!」
「はは~~ぁ!!」
この決断により、秀吉様は天下取りへの出世街道をひた走っていかれるのである。
出世には決断する勇気が必要になるようです。^^
完




