-66- 使命感
出世するのはいいとしても、問題はその後にその地位に就いた使命感が有りや無しや・・という話になります。^^
とある区役所で勤務する平坂は悩んでいた。ついに希望していた課長補佐へと昇格し、晴れて管理職の道を進めることになったが、自身にある種の疑問が湧いていたからである。
『同僚の伊野部や苗村は気楽でいいな…。奴には出世のしの字もないのか、毎日、楽しく勤めている。そこへいくと、この俺は、アアしろコウしろと上から突かれ、下にはアアして下さいコウして下さい、と頭を下げてるもんな…。まあ、管理職の使命だから仕方ないと言えば仕方ないが…。だが、使命感が本当に自分にはあるのか…』
平坂はそう深刻に考えなくてもいいのに考えた。^^
「平坂君、ちょっとちょっと…」
「何でしたでしょう、課長…」
課長に呼ばれたときは、いつの間にか恐怖を感じるようになっていた平坂だったから、不安げに課長席へ近づいた。
「ははは…どうだい、もう馴れたかい?」
「はあ、と、言われますと?」
「いやだな。管理職にだよ…」
「はあまあ、なんとか…」
「そうか、それはよかった…。実は私ね、財務部次長の内示があってね。この課を離れることになったんだ…。だから、新しい課長とは上手くやってくれ」
「はあ、頑張ります…」
「頑張らんでもいいが、この管財課の仕事への使命感だけは忘れずにな…」
「はい、分かりました…」
そう返した平坂だったが、口とは裏腹に、使命感が不明だったから表情は虚ろだった。
このお話のように、使命感が湧かない出世は、人生を送る上で、余りプラスとはならないようです。^^
完




