-61- 素質
いくら本人が出世したくても、素質がなければ出世を諦める他はないのか? という素朴な疑問が湧きます。^^ しかし、本人に素質がなくても出世するケースが私達の暮らす社会では、案外、多いんですよ。^^
鹿島は同期の社員達が出世していく中、ポツンと一人取り残されたように平社員に甘んじていた。鹿島には出世する素質がなかったのである。仕事が出来ないという訳でもなく、鹿島は会社にそれなりの利益を齎していたのに、である。鹿島は考えなくてもいいのに、しみじみと考えた。^^
『何かが足りないんだな…』
その足らない何かが鹿島には分からなかった。
ある日、鹿島は出世した同期の香取に訊ねてみた。
「出世できない原因って、あるのか?」
「ははは…そりゃ、あるさる何かがないんだよ、お前には…」
「何が足りないんだろう」
「さあ…。素質かもな」
「素質か…。素質がなけりゃ仕方ねえか、ははは…」
鹿島は悪びれて自虐気味に哂った。その後、鹿島は出世を忘れることにした。自分に素質がないのであれば仕方がない…と思えたからである。すると鹿島は一皮むけたように気楽になった。すると妙なもので、しばらくすると昇進の辞令が出たのである。
『素質は関係なかったみたいだな…』
鹿島に素質がなかったのではなく、ただ単に意識し過ぎたためのように思えた。
素質の有る無しで出世出来ない訳ではなく、出世を意識するという素質以前の心の持ちようが影響しているようです。出世に素質は関係ないんですね。^^
完




